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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第四章 冒険者学校 その2
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第41話 王都帰還

 

「アレクー、起きてー」


 エマが俺を起こそうとしている。なんで、こんな早くに起きなきゃいけないんだ。


 昨日は4人で報酬の話をしたあと各部屋に戻り眠った。


「はやくー、今日はレディアを出る日でしょ」


 俺は渋々起きた。今日はレディアを発つ、ミシアとラルトともしばらくお別れだ。エマとリビングに向かった。


「今日でもう王都へ向かうのよね?」

「はい、騎士団に挨拶して、ハネス様に挨拶しないといけません」

「そうね、ほら!朝ご飯用意してるから、いっぱい食べて行きなさい!街門でお見送りはするから!」

「お母さんとの手料理ともお別れかぁ…」


 確かにミシアの料理をしばらく食べれないのは辛いな。


「バカ言ってないで食べなさい。カルマくんとソフィアちゃんはもう食べてるわよ」


「なんとか、ミシアさんを宮廷料理人に…」

「…」


 チラッと見ると、朝食を必死にかき込んでいる。

 ソフィアはなにかブツブツ言ってるし、

 カルマは無言で食べ続けてる、目には薄ら涙が見えるな。


 俺達は朝ご飯を済まして、騎士団駐屯所へ向かった。


「師匠達ともしばらくお別れだね」

「まぁ、また戻ってくるだろ」


 騎士団駐屯所に到着し、ローガンとミーヤに会った。


「そうですか、もう帰りますか」

「はい、あ、そう言えばミーヤさんも半魔族なんですね」

「え?も、ですか?」

「はい、俺も半魔族です」

「え!?」


 俺はローガンを見る。


「ローガンさん、また帰ってきます」

「おう!王都で大活躍してこいよ!」

「ちょ、アレク!?半魔族って!」

「では、お元気で」

「おう!またな!」

「アレク!?」


 なにやら騒がしいミーヤをほっといて、そのまま騎士団駐屯所を出た。


「なんか師匠に冷たくない?」


 エマが苦笑いしながら言ってきた。


「ミーヤさんはからかいがいがあるんだよ」

「そ、そう」


 あとは、ハネスの所か。ハネスの屋敷に着いて、いつも通り案内された。

 ハネスに専属騎士にならないかと言われたが、もちろん断った。


「アレクサンダー君!せめてウチのエイダを!」


 まだ諦めてなかったのか…仕方ない。俺はエマを抱き寄せ手を握り、その手をハネスに見せた。


「私はエマを愛しているので、すみません」


 思わぬ行動にエマは煙が出そうな程顔を赤くしていた。


「そうだろうとは思っていたよ!エイダは友として、良い付き合いをしてくれ」

「もちろんです」


 そう言って屋敷を後にした。


「アレク!急にやめてよ!」

「なんでだ?俺は愛してると伝えただけだ」

「うえ!?まぁ…嫌な訳じゃ…」

「じゃ、いいな」

「ダメ!恥ずかしいから…」


 エマはハネスにした行動に照れているようだな。可愛いヤツめ。


「目の前でイチャイチャされるとむず痒いですね」

「そうか?」

「カルマさんも恋人がいらっしゃるのでしたね」

「ソフィアはいいのか?アレクのこと」

「え?アレクさんのこと?なにがですか?」

「いや、なんでもない」


 そろそろ街門に着く。次帰って来れるのはいつになるだろうか。街門には既に馬車が停まっている。


「アレク、エマ。体には気をつけてね」

「うん!いってきます!」

「アレク、エマを頼むぞ。成人するまでは…わかってるな?」

「え?あ、はい」


 ミシアとラルトから言葉を貰った。


「ソフィアちゃんとカルマくんも2人のことお願いね」

「はい!またお会いしましょう!」

「任せてください」


 カルマとソフィアは2人に軽く頭を下げた。


「それじゃ、いってきます」

「「いってらっしゃい」」


 俺達は馬車に乗り込んだ。

 すると、街門が騒がしくなっていた。


「勇者のお兄ちゃん!!!!」


 街門に来ていた少年が進みゆく馬車に叫んだ。


「え?俺のこと?」

「街を助けてくれてありがとう!!!」

「「「ありがとう!!!」」」


 街門から大勢の人達が見送りに来ていた。みんな口々に感謝を言っている。

 俺達は手を振りながら王都へと馬車を進めた。


 ◇◇◇


「いっちゃったわね…やっぱり寂しいわ」

「そうだね…次帰ってくる頃にはアレクとエマは結婚かな?」

「あの…あなた、話があるの…」

「どうした?」


 ミシアはふぅと一息つき、言った。


「に、妊娠したの…」

「え!?」


 ラルトは驚きたじろいだ。家族が増えることをアレクとエマは知る由もなかった。


 ◇◇◇


「王都に戻ったらどうする?」


 エマが唐突に聞いてきた。


「俺はアルカナム武具店に行くよ、さっそく篭手をオーダーメイドしてくる」

「なら、私もついて行くー」

「私は、お父様に帰還の報告をしてきます」

「…」


 王都に戻ってからやることは様々だ。カルマは乗り物酔いでダウン中。

 しばらく落ち着きたいなぁ。レディアに居たのは4日ほどか、往復の日数を合わせれば12日間か。


「眠いから寝るね」


 エマは当たり前のように俺の膝に頭を乗せてきた。


「おやすみ」


 そのまま俺達は帰路についた。


 ◇◇◇


 4日後…


「くぅー!!!ついたー!!」


 エマは馬車から降りて伸びをした。王都はなにも変わってないな。モンスターの侵攻なんて言われたらたまったもんじゃ無かったが杞憂だったようだ。


「じゃ、また明日」


 俺達はそれぞれの予定に向かった。


「アレク、相談があるんだけど」

「改まってどうした?」


 エマが神妙な面持ちで話しかけてきた。


「アレクが作る篭手ってさ、ステッキみたいに魔術のサポートができるんだよね?」

「ああ、付与した時や発動した時に威力が上がる、それに動きやすいしな。だけど、中遠距離になったときに命中率は下がるな」


 命中率も威力も上げるなら大杖だが、それじゃ機動力が下がる。


「篭手使ってみたらダメかな?」

「エマも?」

「ダメかな…?」


 エマの強みは正確無比な魔力操作だ。命中率が下がることは明らかなデメリットになる。だが、エマの強みはそれだけじゃない。格闘魔術だ。

 普段から俺を殴り飛ばしてるから熟練度は相当だ。正確な魔力操作で、強化する部分を瞬時に最大限強化できる。


「エマはどうしたい?」

「え?」

「俺の考えじゃなくて、エマはどうしたいか」

「…篭手使ってみたい」

「よし、なら一緒に注文しよう」

「うん!」


 〜アルカナム武具店〜


「相変わらず豪華だな」


 店に入ると変わらず煌びやかな武器たちが並んでいる。俺は真っ直ぐ店員のところに向かった。


「すみません、オーダーメイドを2つお願いしたいんですが」

「え?2つですか…?あの、当店オーダーメイドは非常に高価になっておりますが、大丈夫でしょうか」

「はい、問題ありません。念の為見積もり出せますか?」

「は、はい…担当の者を連れてまいります。少々お待ちください」


 オーダーメイドは高価って前来た時にソフィアから聞いたな。こんな子供がって思っているんだろうな。


「お待たせしました。テナ・アルカナムです」


 出てきたのは、青髪の若い女性。アルカナムという事はテオの家族かな。


「お揃いの黒のマントに、灰色の髪の美少女と黒髪の美少年…もしや、アレクサンダーさんとエマさんでは?」

「あ、はい。そうです」

「やっぱり!同じ特別クラスのテオの姉です。よろしくお願いしますね」


 美しい笑みを向けられた、綺麗な人だ。テオとは違って社交的な人なのかな?


「痛てっ…なんだよ」

「鼻の下伸ばさない」


 エマに後ろからつつかれた。鼻の下伸ばしてたかな、綺麗な人だって思ったぐらいだが。


「では、見積もりをしましょうか」

「お願いします」


 俺は魔導袋からボロボロの篭手を出し、これと似たような物で材料はミスリル、中央には魔力石を付けて欲しいと要望を言った。


「現在、ミスリルの相場が上がっていますが…」

「あぁ、それなら2人で2kgありますが、それで足りますか?」

「え!?あ、はい、十分です。それと、魔力石はご自分で選んで貰う必要がありますので斜め前の宝石店でお選びください」

「わかりました」


 少しして見積もりが出た。


「篭手1組で6万Gになります。ミスリルの加工にはそれなりの技術が必要になりますので相場より少し高くなります」

「問題ありません。俺とエマの分2組お願いします」

「…12万Gをあっさり…やっぱり凄い方なのですね。テオが良く言ってます。あなた達は別次元だと。是非、お得意様になってくださいね」


 なるほど、この笑顔にやられた人達がここのお得意様になっているのか。納得だ。


「痛っ…なんだよ」

「なんとなく」


 エマは心を読む魔術でも覚えたのか?


 手のサイズを測り、宝石店で魔力石を選んできた。出来上がりは明日になるそうだ。


「楽しみだなぁ」

「そうだな、またお揃いが増えたな」


 そう言うとエマは嬉しそうに笑った。


「じゃ、寮に戻るか」

「うん!」


 俺達は寮に戻った。


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