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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第四章 冒険者学校 その2
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第40話 報酬と復興祭

 

 俺達は食事を終え、就寝するために部屋に戻る。もちろん、俺とエマは同じ部屋だ。


「おやすみ、エマ」

「うん、おやすみ」


 今日はお互い疲れが溜まっているためすぐに寝てしまった。なんだか残念な気分だ。

 まぁ、なにしてもお預けくらうんだから関係ないか。


 〜翌朝〜


「アレクー、起きてー」

「……やだ」

「やだじゃないー」


 基本的にエマの方が早起きだ。俺はまだ寝たいのに。エマに無理矢理起こされ、リビングに向かうと昨日と同じようにカルマとソフィアが既に起きていた。

 昨日と違うのは、今日はローガンが来ている。


「おー!アレクにエマ!話は聞いたぞ!ていうか付き合ってなかったことにビックリだったぞ!」


 ローガンの元気な声が脳に響く、朝はキツイな。


「今日はローガンさんがお迎えですか?」

「いや!別の用事だ!」

「別の用事…?」

「ハネス・レディア伯爵がお前達4人を呼んでいるぞ!早く準備しろよ!」


 ハネスが…まぁ、大体予想はつくけど。めんどくさいが呼ばれたのなら仕方ないな。


 俺達は早々に準備を済ませ、出発した。


「お礼貰えるのかな!?」

「エマ、少しは遠慮してくれ」

「確かに、なにかしらの見返りがあるでしょうね」

「なんだろうな」


 念の為、サーチは常に張り巡らせている。魔力はほぼ完全に回復した。


 他愛もない会話をしていると、ハネス・レディア伯爵の屋敷についた。門には衛兵がいるな。

 さて、再教育のほどは。


「いらっしゃいませ。A級冒険者の方々。身分はわかっていますが、規則ですので、冒険者カードの提示をお願いしてもよろしいですか?」

「はい」

「はい、確かに確認しました。玄関にいる者がハネス様の元まで案内してくれます。ごゆっくり」


 おぉ…完璧だ。ディアナさんは相当に優秀な人のようだ。玄関で待っていたメイドが案内してくれた。

 前回来た部屋だ。


「ハネス様がお待ちです。どうぞ」

「ありがとうございます」


 中に入ると、机の前にハネスが座っていた。


「いらっしゃい、4人とも!」

「失礼します」

「よく来てくれたね!座ってくれ!」


 俺達はソファに腰をかけた。相変わらず陽気な人だ。


「まずは。この度は我が領地レディアを救ってくれたこと、心から感謝申し上げる。君達が居なければ被害は甚大なものになっていただろ。町民を代表して、ありがとう」

「いえ、騎士団の協力があって、避難もスムーズに行われました。賞賛は私達だけでなく、救助に赴いた全ての者に与えられるべきでしょう」

「ははっ!全くその通りだ!騎士団には後日謝辞を送るよ!だが、功労者は君達なことに代わりはないよ」

「はい、ありがとうございます」


 騎士団の連携は素晴らしかった。素早く民を見つけ、すぐに避難させていた。

 ローガンの指導あってこそか。いや、騎士達のレディアを守るという想いだろう。


「そこで、君達には私、いや、町民達からの礼として、これらを受け取って欲しい」


 まず、渡されたのは金貨がギッシリつまった麻袋だ。


「1人10万Gを贈らせてもらうよ!」


 まじか…俺が6歳の時に命懸けで稼いだ額だな。まさか、また貰える日が来るとはエマの目がキラキラ輝いている。


「君達は高ランク冒険者だ、お金はこれから先たくさん入ってくるだろう。そこで、これを贈らせてもらう」


 ハネスがメイドに持ってこさせたのは、淡い緑色に輝くインゴットだった。これは…


「ミスリルインゴット…」

「おお!一目でわかったか!さすがだね!」

「ミスリルってなに?」

「エマ…後で説明するよ」


 ミスリル

 一般的な鉱石よりも上質かつ、頑丈な鉱石。主に武器に用いられその性能は一般的な武器を遥かに凌駕する、軽量かつ頑丈、冒険者の憧れの鉱石の1つだ。1kg約10万Gほどだと聞く。


「ミスリル…すごいな」

「私の剣はプラチナです…」

「貰ってよろしいのですか?」


 非常に高価な物だ、一応再確認しておこう。


「ああ!構わないよ!インゴット10本!締めて10kgだ!」

「「「10kg!?」」」


 10kg…大体100万G…?さすが伯爵家、太っ腹だ。


「君達なら有効に使ってくれるだろう。これからの活躍、期待しているよ」

「はい、ありがとうございます!」


 俺達の装備も強化できそうだな。しかし、ミスリルか。何に使おうか…。

 俺は黒剣から変えるつもりはないしなぁ。まぁ、使い時がくるだろう。


「そうだ、今日は夜に復興祭を行なうから、是非参加してくれ!」


 夜は祭りか、楽しみだな。


 ハネスに挨拶して、屋敷を出た。


 ◇◇◇


 次は騎士団駐屯所に向かっている。カオスフォレストの調査のためだ。

 昨日の強襲はカオスフォレストのモンスターだと言っていたな。特異エリアの異常はあのカースリッチに寄る可能性は高い。


「しかし、ミスリル10kgは驚きましたね…」

「ああ、100万相当だ」

「そんな貴重な鉱石なんだねー、私はお金が嬉しいな」

「まぁ、エマはステッキしか持たないからな」


 そんな話をしていると、駐屯所から数名の騎士が出てきた。


「お!アレクサンダー!ナイスタイミングだ!ローガンさんが呼んでるぜ!」


 顔馴染みの騎士が伝えてきた。


「わかりました!」


 俺達はローガンの元へ向かった。


「失礼します」

「おお、来たか!ちょっとこれを見てくれ」


 そこにはローガンとミーヤがいた。そこに置かれていたのは、拳くらいの紫色の石


「これは…魔力石ですか?」

「ああ、カースリッチが消滅したところに落ちてやがった」

「闇属性強化の魔力石みたいですね」

「私と同じ意見ですね」

「おそらく、特異エリアの異常はこれが原因だろう」


 なるほど、魔力石か。闇属性強化ということはカースリッチの他モンスターを統率する力も強化されたということか。

 表層をCからAランクが跋扈(ばっこ)していたのは、レディアを襲う予兆ということか。


「昨日の戦いで、おそらく強力なモンスター達は討伐されている。またモンスターが湧く前に最深部を調査する。いいな?」

「はい」


 なんでカースリッチが魔力石を持っていたか考えるまでもない、パンドラの仕業だろう。

 一体なにがしたいんだ。


 俺達はカオスフォレストに入り最深部の調査を始めた。


 途中、Sランクが1体だけ出てきたが、エマの希望で、エマ1人で戦った。

 結果は圧勝。傷は負ったが重症ではない。この結果には俺も含めて誰もが唖然としていた。

 モンスターのレベルはカルマやソフィアが戦ったやつとほぼ同じ強さだった。俺達のパーティーで1番成長してるのはエマかもしれない。


 そんなこんなで最深部に着いた。


「ここが最深部…魔力の濃度が濃いですね」

「まぁ、本来であればSランクがうじゃうじゃしている場所だからな」


 俺の言葉にローガンが答える。Sランクがうじゃうじゃ…考えたくないな、


「これが…特異エリアの、特異点」

「この大きな玉が発する濃密な魔力が森全体を包み、モンスターが発生するようになりました。特異点は滅級でも消滅させることはできなかったらしいです」

「特異エリアを無くすことはできないってことですね」


 ミーヤが丁寧に説明してくれた。特異点から放たれる濃い魔力に顔を顰めながら調査をした。

 見つかったのは、少し新しい人の足跡。


「ここ最近で最深部に入った人っていますか?」

「いや、最深部に入れるのはS級中位以上だ。そんなやつはこの街にはいない」

「なるほど…やはり、一連の犯人はパンドラですね。他も同様でしょう」

「だな!よし!モンスターが湧く前に帰るぞ!」


 俺達はカオスフォレストを後にした。


 ◇◇◇


 夜は祭りだ。カオスフォレストから帰ると、もう既に街は屋台で賑わっていた。


「アレク!お母さん達も呼ぼうよ!」

「ああ、そうだな」


 俺とエマは2人を呼びに1度家に戻り、2人を連れてきた。


「わぁ…お祭りなんていつぶりかしら!」

「今日は奮発して色々食べようか!」


 2人は街に着くと2人で手を繋いでどっか行ってしまった。いつまでも仲がよろしいことで。


「2人で…って言いたいけど、せっかくだしカルマとソフィアとも一緒にね!」

「ああ!」


 俺達4人は復興祭を楽しんだ。


 ◇◇◇


 俺達は復興祭を楽しんだ後、家に戻ってきた。

 今は、4人で俺の部屋にいる。


「ここがアレクさんのお部屋ですか、何もありませんね」

「まぁ、基本魔導袋に入れてるし」

「俺の部屋も似たような感じだ」

「ベッドはもっと大きいのがいいかなぁ」

「「「え?」」」


 エマの無意識衝撃発言が飛び出した。


「あ、ち、ちがうよ!?そういう意味じゃなくて!」

「エマさんが大人になっていきます…」

「アレク、大きいの買ってやれ」

「は、ははっ…」


 エマが焦っているのは置いといて、本題だ。俺は魔導袋から10kgのミスリルを取りだした。


「本題は、これだ」

「ミスリルですか?」

「ああ、単純計算でいけば1人2.5kgだろうが、俺はそんなに要らない。黒剣から変える予定もないしな。1kgで十分だ。」


 それ以上持っていても宝の持ち腐れだからな。貰ったものを売るのは忍びない。


「私はどうだろ…アレクはどう思う?」

「エマは未知数だが…そうだな、1kgで十分だと思うぞ」

「じゃ、1kgでー」


 エマはなんでもかんでも俺任せだな。これは、治さないといけないな。


「残りは2人で1.5kgずつ足してくれ」

「いいんですか…?」

「ああ、ミスリルの使い道は俺達より2人の方が多い。剣や装備を新調するといいさ」

「ありがとうございます!」


 ソフィアは素直に受け入れてくれたな。カルマは自分の剣をじっと見ている。

 確か、恋人ファナの祖父が打った最高傑作だっけ。


「この剣は、プラチナで出来ている。ミスリルになればやはり、武器の性能も上がり、動きやすくなるだろうな…だが…」


 手放すのが心惜しいのだろうな。


「カルマの言いたいことはわかる。単純な話だ、そのミスリルで新しい剣を作ってもらえよ。その俺と同じ『刀』ってのはその人しか作れないんだから」

「なるほど…さすがアレクだ!」


 さすがって言われてもなぁなぜかエマがドヤ顔している。


「カルマの実家がある村になにかクエストないか会長に聞いてみよう」

「おう!」


 さて、報酬の分配も終わったな。


「ところで、アレクさんはミスリルを何に使うんですか?」

「あー、それはこれだよ」


 魔導袋からボロボロの篭手を取り出した。


「これは…篭手?」

「ああ、真ん中の溝におそらく魔力石を入れて魔術をサポートするアイテムだと思う。エマのステッキみたいな」

「なるほど、まさにアレクのための篭手だな。よくそんな発想が」

「いや、これも黒剣同様、記憶を失くす前から持ってたものなんだ」


 これを作れれば、色々楽になる。


「さて、もう寝るか」


 俺達は眠りについた。


第40話ご閲覧いただきありがとうございます!


次話をお楽しみに!

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