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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第四章 冒険者学校 その2
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第39話 ご報告

 

 パンドラを逃がしてしまったあと、カースリッチの完全な消滅を確認して、その場に座り込んだ。


「あ゛ー…魔力枯渇ってこんなにしんどかったっけ…」


 重い体を引きずりならが、エマの元へ向かった。周りでは拍手喝采だ。


「アレク!お疲れ様、毒は大丈夫?」

「ああ、毒は問題ないよ…おっと」


 フラつく体をエマが支えてくれた。


「早く家帰って休みたい…」

「そうだね」


 エマはクスッと笑いながら、騎士達が集まる所まで連れていってくれた。

 そこにはぐったりしているカルマとソフィアがいた。2人も頑張ったようだな。


「ローガンさん、余力がある人達でモンスターの残党がいないか確認しましょう。見つけ次第、討伐するように…」

「おう!そうだな!部下に言っておく!よく頑張ったな!お前達!」


 そう言い残すとローガンは騎士達の元へ向かった。


「アレク…あなたの成長には驚かされます。あれは聖剣技ですか?」


 ミーヤが聞いてきた。まだ魔力に余裕があるようだ。


「聖剣技の模倣ですよ。威力も範囲も本物の半分以下の劣化版です」

「模倣をできるだけでも、凄いことです。あなたは凄まじい才能をまだ秘めているようです。期待していますよ?」


 ミーヤが優しい笑顔を向けてきた。こういう時はただの可愛い美少女なのにな。

 ミーヤはそのままローガンの元へ向かった。


「はぁ…疲れた…。カルマ、ソフィア、起きてるか?」

「ああ…」

「は、はい…なんとか…」

「S級単独撃破、さすがだ。俺達はまだまだ強くなれるな」


 2人を激励した。半年前はS級相手に4人で満身創痍だったのに、凄まじい成長だ。


「3人が頑張ってたのに…私なにもできてないや…」


 エマが悲観していた。


「それは違う。俺達が目の前の敵に集中できたのは、エマが避難民を守っているって安心があったからだ。俺達が最大限の力を出せたのはエマのおかげだ、ありがとう」

「そうですよ、エマさん、ありがとう」

「アレクの言う通りだ、ありがとう」

「うん!」


 幸い、レディアの街の被害は最小限で済んだ。俺が聖滅を放った場所も既に崩壊していた建物を目標にしていた。


 しばらくして、ローガンが戻ってきた。


「アレク!部下達から報告だ。残党は全て討伐したと、ミーヤのサーチで確認したところ、街にモンスターはいないそうだ」


 ローガンが報告に来た。

 終わったか、街にモンスターが強襲。1歩遅れてしまっていたがなんとかなったようだ。


「そう…ですか…」

「アレク!?」


 緊張の糸が切れて俺はバタリと倒れてしまった。意識はある。魔力枯渇による疲労感だ。


「もう…体動かん…」

「はぁ…仕方ないな!俺がアレクを家まで運ぼう。カルマとソフィアは自分で動けるか?」

「はい、だいぶ回復しました」

「私も問題ありません」


 カルマとソフィアは立ち上がった。


「よし、今日の任務はこれまでだ。カオスフォレストの調査は明日の昼過ぎにする。封鎖し、監視を付けておく。ゆっくり休んでくれ」

「「「はい!」」」


 ローガンは指示を出し、俺をおんぶした。


「よっこらせ!…全く…重くなりやがって…」

「6歳の時以来ですね…」


 俺達は家へ戻った。


 ◇◇◇


「お疲れ様!街の話は聞いているわ…」


 ミシアが出迎えてくれた。


「ローガンもありがとう。アレクを部屋で寝かせてあげて」

「ラルトは?」

「仕事に行ってるわ、あの人が仕事に行った後に話が来てね」


 そうかとローガンは言い、俺の部屋のベッドに俺を寝かせた。


「ゆっくり休め、アレク。S級の中でも強力な個体をお前は単独で撃破したんだ。胸を張れ」

「はい…ありがとうございます」

「俺は帰るぞ、明日またよろしく頼む」

「はい、ローガンさんもお疲れ様でした」


 ローガンは手を振り、部屋から出ていった。


 なんか、リビングが騒がしいな…


「街がモンスターに襲われたって!!みんな大丈夫だったかい!?」


 どうやら、ラルトが話を聞いて帰ってきたようだ。ドタドタと足音がこっちに向かってきている。


「アレク!大丈夫かい!?」

「はい、魔力が枯渇しているだけなので、寝ていれば治ります」

「そ、そうか…さっきローガンが褒めていたよ。俺も心から誇りに思うよ、レディアを救ってくれてありがとう」

「いえ、その言葉、みんなにも伝えてあげてください」

「ああ!もちろんさ!ゆっくり休んで!」


 ラルトは部屋から出ていった。俺は目を閉じ、少し眠った。しばらくするといい匂いがしてきた。


「はら…へったな」


 起き上がろうとするがまだ力は入らないようだ。


「魔力枯渇って思ったよりも大変だよな…今度から気をつけよう」


 すると、俺の部屋がノックされた。


「アレク?ご飯持ってきたよー」


 エマだった。ナイスタイミングだ


「おー、腹減ったよ」


 エマは部屋に入ってきて、ベッドの横の椅子に腰をかけた。


「これ、お母さんが。鉄分豊富らしいから無くなった血もすぐ戻るって」

「さすがミシアさんだな、気が利く」


 エマが持ってきたのは野菜スープとパンだ。エマは体の自由が効かない俺を起こしてくれた。辛うじて手は動くな。


「はい、あーんして」

「じ、自分で食べれるよ」

「もう!たまには甘えてもいいんだよ!」

「あ、あーん…」


 野菜スープを飲むと体が芯から温まる。もちろん、絶品だ。


「2人はどうしてる?」

「カルマとソフィアなら、疲れはあるけど、動くのには問題ないらしいよ」

「そうか」


 S級を相手にしてその程度で済んでるってことは、やっぱりカルマとソフィアのレベルも格段に上がってるな。


 俺は食事を済ませて、またベッドに寝転がった。


「ふぅ…腹も膨れたな」


 エマは食器を机に置き、俺の布団に潜り込んできた。


「添い寝してあげる」

「おい…」


 エマは悪戯な笑顔で見てきた。


「エマが俺と一緒に寝たいだけだろ」

「ち、ちがうよ!」

「ほんとに?」

「うっ…だって…あの時、後で好きなだけイチャイチャしてやるって言ったじゃん」


 なるほどな、覚えてたのか。


「だから、添い寝するの!」

「はいはい、よろしくお願いします」

「なんか腹立つ」


 そう言い俺の額にデコピンした。


 しばらく添い寝をしていたら、エマがモジモジしだした。


「ね、ねぇアレク…」

「ん?」

「体…全然動かないの…?」

「え?ああ、少し手が動くぐらいだな」

「そう…」


 そう言うとエマが俺の上に馬乗りになった。何をする気だ…。


 すると、エマは俺のシャツをめくり始めた。


「エマ!?」

「はぁ…はぁ…今は、アレクを自由に…」

「お、おい!」


 シャツを首元までめくると俺の身体をぺたぺたと触っている。


「ちょ、エマ…くすぐったい」

「はぁ…はぁ…アレクの体…」


 ダメだ、完全に我を失っている。次は俺の首元に顔を置き、匂いを嗅ぎ始めた。


「おい!俺湯浴みしてないから!」

「スゥーッ…アレクの匂い…」

「おい…」


 そのまま上に乗り抱きつく形でキープしている。しばらく匂いを嗅いだあと、再度起き上がり、馬乗りの状態になった。エマの表情は、恍惚なものになっていた。


「はぁ…はぁ…アレク…」

「エマ…」


 エマの手は俺のズボンを掴んでいた。当然、俺の息子もやる気MAXになっている。

 それを見たエマがハッとした。


「な、なーんてね!」

「…」

「拗ねてるの?」

「…」


 人の心を弄びやがって…。


「俺、エマのこと嫌いになるかも」

「え!?ごめんなさい!そんなつもりじゃ」

「冗談だよ」

「冗談でもそんな事言わないでよ…」

「ごめんな、でも悪いのはエマだろ?」


 バツが悪そうな顔で顔を逸らした。


「ごめんね。無防備なアレクを見てたら、変な気持ちになっちゃって…。あのまま、色々しちゃったら…私も我慢できなくなっちゃうから…」

「エマも色々我慢しているんだな」


 俺がニヤニヤしながらエマを見る。


「年頃の女の子ですから!」


 そう言うと立ち上がり、ベッドから降りた。


「添い寝、してくれるんだろ?」

「もう…」


 エマは再び布団に潜り込み俺の隣に来た。俺は体をエマの方に向かせ、向かい合う。


「ゆっくり休んでね」

「ああ、おやすみ」


 エマは俺に抱きつき、体を密着させた。


「アレク…その…元気だね…」

「誰のせいだと思ってる」

「うっ…」


 俺の元気な息子がエマに当たってしまい。エマは顔を赤くしていた。


 そのまま俺は眠った。


 ◇◇◇


 アレクとエマがイチャイチャしている頃、リビングにはカルマとソフィア、ミシアとラルトがいた。


「エマったら、ご飯持って行ったっきり帰ってこないわね」

「ま、まぁいいんじゃないか?ゆっくりさせよう」


 ミシアの言葉にラルトは汗をかきながら答えた。


「しかし、カルマくんもソフィアちゃんもすごいな。S級相手に完勝するなんて、アレクでさえあんなに寝込んでいるのに」


 ラルトが2人に感心していた。


「俺達が戦ったのはSランクでも妥当な相手でした。でも、アレクが戦ったのは、Sランクでも限りなく上位で強力な個体でした。アレクの戦いと一緒にはできません」

「そうですね。なのにアレクさんは単独で撃破しました。それに、被害は魔力枯渇だけです」

「そ、そうなのか…。やっぱり2人から見てもアレクはすごいのかい?」


 ラルトは幼少の頃からアレクの成長を見てきた。魔術剣術の才を持ち、日々成長していく姿を。

 そして、その隣にいたエマでさえ、アレクと同等以上の魔術の才を持っていた。感覚が麻痺してくるのもおかしくない。


「すごい…なんてものじゃないですね。正直、こんな人間がいるのかと疑うぐらいです」

「そこまでなのか…」

「はい、アレクさんは魔術剣術共に高レベルであり、独自の戦闘スタイルを確立しています。常に私達の前を歩む人物です」


 ミシアとラルトはその言葉を聞き、鼻が高くなる。しかし、その分心配もあった。


「ただ、心配な所もあります」

「心配…」


 カルマの言葉にラルトが呟いた。

 ラルトもおそらく同じ心配をしているのだろう。


「アレクの強さは、才能だけじゃない…血の滲むような努力があります。アレクの訓練の様子を見たことがあります。厳しい剣術の訓練をした後、厳しい魔術の訓練、そしてさらに厳しい魔剣士の訓練。それをほぼ毎日やっています。」

「私達は…アレクさんがいつか壊れてしまうんじゃないかって、心配なんです」


 ミシアとラルトもそれを知っている。

 血の滲むような努力。訓練でボロボロになって帰ってくるアレクを何回も2人は見てきた。


「あの子は、自分の記憶を取り戻すため、エマを生涯守り抜くため強くなっている。俺達も不安だ。あの子がどこかで壊れてしまうんじゃないかって…」


 ラルトは沈痛な面持ちで語っていた。


「心配ですが。大丈夫ですよ。俺達はアレクを遥か前方を歩ませる気はありません。アレクと共に肩を並べ、その負担を分担していきます。その為に俺達も強くなりますから」

「はい、カルマさんの言う通りです」


 ミシアとラルトは薄ら涙を浮かべた。


「ああ…どうかよろしく頼むよ」

「あの子達は良い友人を持ったのね」


 そんな、暖かい会話をしている今頃、アレクはエマに襲われていた。


 ◇◇◇


「うぅん…」


 目が覚めた。寝たのが確か昼過ぎだったよな。外は暗い、もう夕食の時間帯だ。

 まだ、体はダルいが十分動く。


「あれ…」


 俺はあることに気付く。


「なんで上裸なんだ…」


 原因はすぐにわかった。

 俺のシャツを顔付近で抱きしめ気持ち良さそうに眠っているエマの姿だ。


「いつの間に脱がしたんだよ…」


 エマは俺の匂いが好きなようだ。

 確か、相性が良い異性同士は互いの匂いを気に入るって聞いたことあるな。


「どれどれ…スゥーッ…」

「んっ…」


 俺はエマの首筋に鼻を近づけ匂った。エマは甘い声をあげた。


「これは…まずいな…」


 石鹸の匂いだろうか、形容し難いすごくいい匂いがし、色々と元気になってしまった。

 匂いだけでこの威力か、相性が良いなんてもんじゃないな。


 シャツを着ようと思ったが、ものすごい力でエマが抵抗している。起きているのか?

 仕方がないから、魔導袋から服を出そうと思ったが、魔導袋はリビングに置いている。

 もちろん、この部屋にクローゼットなんかない。


「はぁ…仕方ないな、このまま行くか」


 エマのほっぺにキスをして下へ向かった。


「あら、いい体」


 上裸の俺にミシアが言った。


「ア、アレク…上着とエマはどうしたんだ?」

「上着はいつの間にか無くなってました。エマは寝ていますよ。消耗してたので、疲労が溜まっていたんでしょう」

「そうか…」


 ラルトはあらぬ疑いをかけているようだが、そんなことはない、ただイチャイチャしただけだ。


「ご飯はどうする?もう食べる?」

「はい、湯浴みしてきますね」


 俺は魔導袋から上着を取り出し湯浴みに行った。


 俺が湯浴みから戻ると、リビングには寝ぼけ気味のエマが座っていた。俺の上着を握りしめて。

 ミシアは晩御飯の準備をしているがもうすぐ終わりそうだ。


 エマの隣に座るとコテンと俺の肩に頭を乗せてきた。ラルトの額に汗が出ている。気になるのだろう。


「アレク、言ってもいいんじゃない?もうみんな分かってるだろうし」

「それもそうか」


 ミシアが料理を机に並べ終わったところで、口を開いた。


「今更ですが、俺とエマ、正式にお付き合いすることになりました」

「今更だな」

「今更ですね」

「今更ね」

「今更だよ…」


 ラルトだけ悲壮感に溢れているがそれは置いておこう。みんな辛辣だなぁ。

 まぁ人目もはばからずベタベタしてたから、そう言う感想にはなるか。


「お付き合いしても大丈夫ですか?ミシアさんラルトさん」

「許可なんて取らなくていいわよ。初めからわかってたことだから」

「そ、そうだぞ。ただ、結婚する時の報告はちゃんとするように」

「お父さん気が早いよ…」


 俺達の報告はあっさり終わり、食事を始めた。


第39話ご閲覧いただきありがとうございます!


次話をお楽しみに!

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