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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第四章 冒険者学校 その2
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第36話 素直な気持ちを伝えて

 

「今日はウチに泊まっていくでしょ?」


 ミシアが俺達に聞く。俺とエマはもちろん泊まるが、ソフィアとカルマはどうだろうか。

 部屋数足りるかな?


「私とアレクは泊まるよ!」

「お、お世話になっても大丈夫でしょうか…」


 ソフィアは遠慮気味だが、カルマはどちらでも良いようだ。


「大丈夫よ!客室は1部屋しかないから…どうしましょうね」


 俺は1人でエマとソフィア2人でカルマが客室で良いだろう。そう言おうと口を開こうとしたが、


「エマ、あなたアレクの部屋で寝なさい」

「え!?ミシアさん!?」

「私は別にいいよー、王都の宿屋でもミアレスの部屋も同じだったし」

「エマ!?」

「なら決まりね!」


 おいおい、ミシアはなにを企んでるんだよ…。


「ソフィア!私の部屋自由に使っていいからね!」

「はい!お世話になります!」


 俺がなにかを言うまでもなく決まってしまった。俺の意思とは。すると、ミシアが近寄ってきた。


「アレク、いつまでも現状に甘えてはダメよ」

「え?どういう…」

「たまには男を見せなさい」

「でも、俺達はまだ11歳ですよ?」

「成人まであと4年よ?お付き合いを始めたってなにもおかしくない歳だわ。カルマくんは恋人がいるって聞いてるけど?」

「それは…」


 それを言われてはぐうの音も出ない。


「アレク、あなたとエマが冒険者を続けている限り、何が起こるかわからないわ。私達は娘と息子の幸せを願っているの」

「はい…」


 アリアにも、似たようなこと言われたな。俺は現状(いま)に甘えているのか。


「それにエマがいつまでもアレク一筋とは限らないわよ?」

「…それは…嫌ですね」


 嫌だな。エマは誰にも渡したくない。


「あと、そういうのは成人してからよ?子供を授かったらエマも冒険者じゃいられなくなるわ」

「は、はい」


 そういうのとはそーゆーやつだろう。さて、どうしたものか。


 ◇◇◇


 俺は湯浴みを済ませ一足先に自分の部屋に戻った。


「ふぅ…現状に甘えるな…か」


 俺はエマとどうなりたい?その答えはとっくの昔に決まっている。


「はぁ…どう話を切り出そうか…」

「なにブツブツ言ってるの?」

「エマ」


 湯浴みを済ませたエマが部屋に入ってきた。髪は少し濡れていて、少し伸びた髪を後ろに結んでいる。濡れた首筋が色気を引き立たせる。思わず息を飲む。


「どうしたの?」

「いや、なんでも」

「そう?」


 そう言うとエマはベッドに座る俺の隣に座ってきた。このシチュエーションは、なんかまずいな…


「懐かしいねぇ、ここを出てもう1年だよ」

「そうだな、まさかエマもついてくるとは思わなかったよ」

「アレクが王都に行ったら私のことも忘れちゃうんじゃないかって思って…」

「俺が忘却の魔剣士でも、エマのことはなにがあっても忘れないよ」

「うん、わかってる…でも…ほら、言葉だけじゃなくて…その…」


 エマが潤んだ瞳でこっちを見る。これは…このタイミングだ。


「ああ…わかってる…」

「アレク…」


 俺はエマの肩を掴み顔を寄せる。それに合わせてエマも瞳を閉じた。ミアレスでのそれは俺を助ける為だった。

 これは、正真正銘の初めて……。


 〔ガチャ〕

「アレク、明日のことで話が」


 俺はこの男と出会って初めて殴り飛ばしてやろうと思ったよ。カルマ。


「どうしたんだい?カルマ」

「カルマ…」

「なっ…どうして2人とも怒ってるんだ」


 カルマの話とは至極どうでもいいことだった。狙ってやってるのか?


「カルマって、なんか、あれだね」

「言ってやるな」

「ア、アレク…その…」


 エマがモジモジしている。続きを期待しているんだろう。でも、雰囲気は台無しだ。

 

「あー…また今度、な?」

「え?…あっ…うん…」


 エマが泣きそうな顔で顔を逸らしてしまった。また今度は…ダメだな。


「エマ」


 俺はエマの顔を振り向かせそのままキスをした。


「アレク…」

「また今度はダメだったよな。アリアにも怒られてしまう」


 エマは俺に抱きついてきた。


「アレク…大好き…」


 俺もエマを抱き返した。


「ああ、俺も大好きだよ。エマ」


 こうして、俺とエマは互いに気持ちを伝えあった。わかっていたことだが、しっかり口に出すとスッキリするもんだな。


 エマが潤んだ瞳でまたこっちを見る。俺は再度キスをしたが、これ以上はさすがにまずい…。


「えへへ…夢みたい」


 エマがうっとりした笑顔を向けてきた。なんでエマは俺の理性をぶっ飛ばそうとしてくるんだ…我慢できない…。


「きゃっ…」

「はぁ…はぁ…エマ…」


 俺はエマを押し倒してしまった。もう俺の理性はもたない…でも…。


「…いや、ごめん…なんでもないよ…寝ようか」

「アレク…」


 ダメだ、ミシアの言葉を裏切れない。エマには申し訳ない。恥じ掻かせちゃったかな。顔を見れず背中を向けて寝転がった。


 すると、エマが後ろから抱きついてきた。


「お母さんから言われたんでしょ」

「…」

「私も似たようなこと言われてたから、大丈夫だよ?」


 そうか、エマも釘を刺されていたのか。


 俺は振り返りエマの顔を見た。


「情けない顔」

「仕方ないだろ」


 エマは俺の顔を見てクスッと笑った。


「今はこれで我慢しよう」

「うん」


 俺はエマにキスをした。


 エマは俺の腕を枕にしてそのまま眠った。しばらくして、俺も眠った。


 ___


 アレクが湯浴みをしている時、エマはミシアに呼び止められていた。


「いい?それ以上は成人するまでダメよ。子供を授かったらエマは冒険者を続けられなくなるの」

「うん…」


 ミシアはエマの少し拗ねた顔を見てクスッと笑った。


「ふふっ、でもね、もしアレクが本当に我慢できそうになかったら、受け入れてあげなさい。我慢できたとしても、それはエマに魅力が無いとかじゃないわ。それだけアレクはエマのことを大切に想ってるってことよ。わかった?」


 エマはミシアの言葉を思い出しながら、幸せに満ちた心で眠るのだった。


 〜翌朝〜


 ミシアは2人を起こす為に部屋へ入った。


「アレク、エマ起きなさい…あら、どうやら上手くいったようね」


 ベッドにはアレクの腕で気持ちよさそうに寝るエマとエマの腰に手を回すアレクが寝ていた。


「アレク!エマ!起きなさい!今日は仕事でしょ!」

「ひゃっ!?お、お母さん!?」

「ミシアさん…おはようございます…」


 なんだろう。別にやましい事はしていないのに、同じベッドで一緒に寝ている所を見られると、なんとも言えない恥ずかしさがある。


「恥ずかしいから入ってこないでよ…」

「何言ってるの、早く準備しなさい。2人はもう起きてるわよ」


 どうやら寝すぎてしまったらしい。昨日のことがあり少々浮かれているようだ。


「エマ、いくぞ」

「うん!」


 エマは自分の部屋に着替えに行った。俺も早々に着替え、リビングに向かうとソフィアとカルマは朝食を済ませていた。


 そこにはもう1人。


「おや?アレク1人ですか?愛しのハニーは何処へ?」

「愛しのハニーって…」


 師匠であり、騎士団のお抱え魔術師であるミーヤが迎えに来ていた。


「2人揃って寝坊とは昨晩はお楽しみだったようですね」

「何言ってるんですか。何も無いですよ」

「面白くありませんね」


 俺達の会話を聞いていたソフィアの顔は赤くなり、カルマは欠伸をしていた。ラルトの顔には焦りが出ていた。


「ア、アレク、エマはどうした?」

「自分の部屋で準備しています」

「そうか…昨晩は、何も無かったんだな」

「はい、まぁ…その内報告します」


 その言葉を受け、ラルトの周りには明らかに悲壮感が溢れている。


「おまたせー!あ!師匠も来てたんだ!」

「はい、ローガンに礼儀として迎えを頼まれましてね」


 俺とエマは急いで朝食を済まし、出発の準備をした。


「アレク、エマ、それにカルマくんもソフィアちゃんも。どうか気をつけてね」


 ミシアの言葉にカルマとソフィアは会釈で返し、俺とエマは手を振った。


 レディアの街までは5km程だ。ゆっくり歩いていくらしい。


 なぜかさっきからミーヤに見つめられる。


「な、なんですか、ミーヤさんそんなに見つめて」

「はぁ…子供はどうしてこんなに成長が早いのでしょう…。アレクあなた1年でまた身長が伸びましたね」

「そうですか?」


 確かに、俺がレディアを出た頃は165cmくらいだったっけ。今は170cm前後くらいだ。

 ちなみに、カルマは俺と同じくらい。

 ソフィアは156cm、エマは153cmだ。

 ミーヤは150cmあるかないかくらいだろうか?


「それに…発育の暴力です…」


 ミーヤは自分の胸を抑え、楽しそうに喋っているエマとソフィアの胸と見比べた。


「ミ、ミーヤさんのそれも1つの魅力ですよ」

「苦しい慰めは、余計惨めになります」

「ごめんなさい」

「ん?なにか走ってきてますね」


 ミーヤが前から走ってくる人物に気付いた。騎士だ。


「あ!ミーヤさん!A級冒険者の方々!緊急事態です!急いで街へ!」

「どうしたんですか?」

「モンスターの氾濫です!!カオスフォレストから大量のモンスターが強襲を仕掛けてきました!!」

「なっ!?」


 なんだって…モンスターの氾濫?特異エリアで生まれたモンスターは基本的にそこから出ない、出ないと言うより出れない。環境が適してないからだ。

 それが氾濫…?あのアウルベアはそれの予兆だったのか?街はここから5km先だ。俺のサーチにも引っかからない…。


「数は!!」

「大まかに100は超えています!どれもC級以上です!」

「マジかよ…しかし、なんでいきなり…」

「ローガンさん曰く、モンスター達で統率が取れているそうです!」


 統率…知恵のあるモンスターが統率しているのか…?そうなればS級以上だ…。


「急ぎましょう!!」

「「「「了解!」」」」


 俺達は5人は全速力で現場へ向かった。


第37話ご閲覧いただきありがとうございます!


次話をお楽しみに!

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