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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第四章 冒険者学校 その2
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第35話 師弟会合

 

 夕方、俺達は騎士団駐屯所に向かっている。カオスフォレストの調査について話すためだ。あとはローガンとミーヤに会いに。


「まさか、剣鬼と会えるとは…それに爆炎の魔術師にも…」

「あはは…そう言えばそんな2つ名付いてたね…」


 エマが苦笑いしている。近くに居るとそんな凄い人には見えないんだがな。

 あの2人は元S級だ。今回の調査ではこれ以上にないくらい頼もしい。


「ここだ、相変わらずだな。スーッ…ごめんく…!?」

 〔ドカーン!!!!!〕


 屋敷の右にある小屋が大爆発した。


「ミーヤ!!!またやったなお前!爆裂魔術を屋内で使うなとあれほど!」

「いやぁ、失敬失敬威力を調整すれば上手くやれると思ったんですけどね、てへへ」


 なんだこのデジャブ…

 そこには1年前と変わらない2人の姿があった。


「師匠!!」

「ん?エマ!!よく来てくれました!」


 エマは走ってミーヤに抱きついた。


「師匠ちっちゃくなった?」

「あなたが大きくなったんです!」


 俺はローガンの元へ行った。


「ローガン騎士隊長。今回はカオスフォレストの調査についてお話に来ました」

「ああ、A級下位冒険者アレクサンダー君。話は領主様から聞いている。応接室へ案内しよう」


 ドライに感じるだろうが、今はあくまで1冒険者リーダー、そして1騎士隊長だ。礼儀はしっかりしておかないとな。

 ローガンも同じ考えだったらしい。師弟、考え方は似るもんだな。

 そのまま俺達は応接室へ案内される。


「アレク、もっと喜んでいいんじゃない?」

「うれしいさ、ローガンさんもミーヤさんも元気そうで。でも、今俺はパーティーのリーダーだ。その事をローガンさんも理解しているから。どうしてもこうなるんだよ」

「私もそうした方がよかった…?」

「いや、こうするのはリーダーだけで十分、エマはそのままでいいよ」

「でも…」

「カルマとソフィア見てみな、あれは完全にただのファンだ」


 2人に目を向けると2人とも目を輝かせていた。


「カ、カルマさん…!剣鬼様でしたよ!威風堂々としていらっしゃいます!」

「ああ、あとで剣を指導してもらおう…!爆炎の魔術師は小さかったな…!」


「あ…そうだね、いつも通りでいいや」

「ああ、話が終わればいつも通りに俺も戻るよ」


 俺達は応接室へ入った。


「資料を持って来るので、少々お待ちいただこう」


 そう言ってローガンとミーヤは出ていった。


「ローガンさん!もうちょっと喜んでいいんじゃないですか?」

「今は公務中だ。アレクもパーティーのリーダーとして来ている。それをちゃんと理解しているようだ。それに…」

「それに?」

「ははっ!柄にもなく少し緊張してしまった。アレクの纏う空気、あれは強者そのものだ。アレクだけじゃない…エマも、カルマという少年も、ソフィア王女も、あのパーティーはすでにA級の域を超えている。この1年で中々の修羅場を潜ってきたようだ」

「確かに、アレクとエマの魔力の質が高くなっていました。ミアレスの英雄。噂は本当のようですね」


 そんな話をしながら、ローガンとミーヤは資料を取りに行った。


 しばらくして、ローガンとミーヤが戻ってきた。


 ◇◇◇


 ローガンの話によると

 表層にいたGからEのモンスターはほとんど消え、表層にはCからAのモンスターが蔓延っているらしい。

 中層から深層に至ってはSも時々見かけるらしい。


「と、言う訳だが。なにか質問はあるか?」


 ローガンが聞いてきた。


「そうですね。深層のモンスターはSだけですか?」

「ああ、Aもいたが大体がSだ。それがどうした?」

「なぜ、高ランクのモンスターが表層に来たのか…逃げてきたんじゃないですかね。例えばSS級か、天滅級か…」


 そうなった場合、討伐は必須だ。この異常の中、低級冒険者が表層に入れば大変なことになるだろう。


「君達はSS級と戦闘はしたことはあるか?」

「このパーティーでは幼体キメラと1度戦ったことがあります」

「「キメラと…!?」」


 話を聞いていた騎士達がザワザワしている。みんな顔見知りだ。俺に良くしてくれた人達ばかりだ。


「しかし、あれはS級程度でしょう。あとは…俺とエマだけですが、上位デーモンと…」

「上位デーモン…!噂に聞くミアレスでの戦闘か!」

「知っているんですね」


 そりゃそうか、騎士隊長であるローガンが各国の戦闘を知らない訳ないか。


「命を懸けた、滅級を俺とエマの2発でなんとか消滅しました」

「命を懸けた滅級…!?アレク、エマあなた達まさか…!」


 俺とエマは気まずそうな顔で顔を逸らした。


「ミーヤ!その話は後だ。そのSS級がカオスフォレストに居るかもということか?」

「はい。そう考えるなら深層から中層または表層に来た理由になります」

「そうだな。それが1番濃厚だ。SS級が居ると仮定して、明日から調査を開始しよう。今日はここまでだ」


 話し合いは終わりだ。ミーヤの顔が怖い。俺達を睨んでいる。


「アレク!!エマ!!こっちに来なさい!!」

「「は、はい」」

「あなた達、限界突破を使いましたね?」

「「はい…」」


 限界突破はとてつもない代償を伴うほぼ禁術に近い魔術だ。過去俺が使ったことでミーヤは怒り、その使用を禁じた。


「がっかりです…。私との約束は簡単に破れるものなのですか…?」

「ち、ちがうよ!あの時は…だって…」


 エマの目には涙が浮かぶ。

 親友の死を目の前に、そして仇はその死を笑った。許されざる行為だ。


「はぁ…ごめんなさい。言い過ぎました。あなた達がどんな思いでその技を使ったのか。話は色々聞いています。ミアレスの英雄、忘却の魔剣士、灰色の魔術師…。その技を使わなくて良くなるくらい強くなりなさい…アレク、エマ」


 ミーヤは俺とエマを抱きしめた。そうだ、俺達が強くなればいいんだ。


「アレクよ、上位デーモンに剣術は効かなかったか?」


 ローガンが聞いてきた。


「いえ、十分有効でしたよ。斬った傍から再生されますが、再生にも体力を使うみたいです。俺は属性付与をして戦ってましたから、再生は遅らせましたけど」

「そうか。有効か。ならよかった!よく生きて帰ってきた!アレク!よくやったな!」


 そう言いローガンは握手してきた。


「よし!アレク!模擬戦をしよう!!」


 なんでやねん。


 ◇◇◇


「よーし、まずは4流派からだ。等級は?」

「全て超級まで」

「ほほう、俺と同じ域まで。上出来だ!!さぁ!かかってこい!」


 訓練場での模擬戦が始まる。

 カルマとソフィアが羨ましそうな目で見てやがる。


「ローガンさん、俺よりもカルマとかソフィアと戦ってみては…?」

「ん?もちろん、カルマとソフィアとも戦うぞ!今はおまえだ!!」


 あー、カルマとソフィアの目が輝いてる。逃げ場は無さそうだ。


「はぁ、では、いきます!」

「こい!」


 模擬戦が始まった。


「鷹剣流『旋風』!」

「おぉ!良い太刀筋だ!初手は速い鷹剣流!セオリー通りだ!」

「くっ…」


 軽く受け止められる


「だが!セオリー通りということは動きを読まれるという事だ!」

「蛇剣流『神蛇(しんじゃ)(うねり)』」

「ぐぅ…」


 カウンターを決められ俺の肩に一撃が入る。

 一旦距離を置き、立て直す。


「ふぅ…」

(空気が変わった…?)

「虎剣流『六ツ三日月』」

「うぉっ…!!」


 六つに別れた三日月型の斬撃がローガンを襲う。


「なんのぉ!!…いない?」

「鷹剣流『疾風迅雷』!」

「ぐぉっ!」


 横薙ぎの斬撃がローガンに一撃を入れる。


「しっかり成長しているな…!だが!」

「虎剣流『猛虎』!!」

「くっ…」

「蛇剣流『明鏡止水』」


 受け流し…きれない…


「ぐぁ!!」


 俺の左肩に一撃が入る。その一撃は重く腕が折れた。


「くぅ…痛ってぇ…」


 同じ超級なはず、だが、レベルが違う。熟練度が違う。ここまで差があるのか…。


「ちょっとローガンさん!やり過ぎだよ!折る必要ないでしょ!」

「上級治癒魔術『エクストラ・ヒール』」

「くぅ…ありがとう…エマ…」


 エマが治癒魔術で治してくれた。折れた腕も元通りだ。


「いやぁ!本気でやらんと俺がやられてたな!まだまだ伸びるな!アレク!」

「ありがとう…ございます…」


 さて、俺は休憩しようかな。


「カルマ!おまえの番だぞ!」

「い、いいのか!?」

「カルマと言ったな!かかって来なさい!」

「は、はい!」


 ローガンとカルマが対峙する。


「ほう…超級でも、限りなく超越級に近い…11歳でこれは、凄まじいな」

「いきます」

「鷹剣流『疾風』」

(速い!)


 カルマの斬撃がローガンの首を狙う。


「亀剣流『甲真核』」

「…硬い…!」

「虎剣流『岩斬』!」

「ぐっ…重い…」

「ほう…受け止めるか」


 カルマとローガンの鍔迫り合いとなる。


「蛇剣流『明鏡止水』」


 ローガンのカウンターがカルマを襲う。


「!?躱したか…速いな!」

「鷹剣流『疾風迅雷』!!」

「うぉっ…!」


 カルマの剣がローガンの腹部を捕らえた。


「強いな。おまえもまだ伸びるな」

「虎剣流『虎頭断頭』!!」

「ぐぁ!!」


 ローガンの木剣がカルマの額を捕らえた。


「がっはっはっ!!次はソフィア王女!!」

「今は王女ではありません!!」


 ソフィアも惨敗した。


「うぅ…痛いです…」

「ローガンさん!やり過ぎですって」

「さぁ…アレク次はおまえの本気で来い」

「聞いてるの!?」


 本気で来い…か。


「分かりました。我流を使います」

「今はどんくらい持つ?」

「そうですね。15分ほどですかね。無理をすれば30分はいけます」

「よし、15分でいこう」


 最後に我流で戦った時は太刀打ちできなかったな。さて、全力でいこう。


「ソフィア…」

「はい…アレクさんの纏う空気がまた1段階変わり、更に強くなりました…あれは超越級と言ってもいいでしょう」


 カルマとソフィアは固唾を飲んで見守る。


「来い」

「いきます」


 俺は一瞬でローガンに肉薄した。


「我流『昇り龍』」

 〔ガンッ!!!〕


 下段からすくい上げた斬撃はローガンに受け止められた。


「くぅ、重くなってるなぁ…」

「重いだけじゃ、ないですよ」

「…!?消えた…?」


 俺は一瞬でローガンの後ろに回り込んだ。


「我流『龍牙一閃』」

 〔ガンッ!!!〕

「おっと…!速いな…」


 この速さにも対応するのか…なんなんだこのおっさん。


「チッ…まだだ」

「我流『龍剣降斬』」

「蛇剣流「神蛇ノ畝」」

(ぬっ…?受けきれない…)


 俺の剣がローガンに一撃を入れる。


「ぐぅ…効くなぁ…だが、まだまだぁ!!」

「鷹剣流『疾風迅雷』!!」


 ローガンが一瞬で俺に肉薄してくる。だが、


「我流居合『無明ノ龍』」


 俺は居合で対抗した。


「ど、どっちが勝ったの…?」


 〔バキバキッ〕

 俺の木剣とローガンの木剣が砕け散った。


「引き分けだな…」

「すごい戦いでした…」


 引き分けか…圧倒できるぐらい強くならないとな。


「がっはっはっ!!まだまだ伸びるなアレク!!期待しているぞ!!」

「はぁ…もうヘトヘトだ…」


 久々に全力でやったな、ベリウル以来か。それでもローガンには敵わないか。


 俺達はそのまま、エマの実家に帰った。


 ◇◇◇


「ローガンさん!アレク成長してまし…って!その腕!どうしたんですか!?」

「ははっ、引き分けたと思ったんだがな…どうやらアレクの方が一枚上手だったようだ…」

「今、治癒魔術かけますね」


 ローガンは再度鍛え直すことを決意した。



第35話ご閲覧いただきありがとうございます!


次話をお楽しみに!


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