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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第四章 冒険者学校 その2
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第30話 混血のパーティー

 

 ホグマンに呼ばれ俺たち4人は冒険者協会に向かっている。


 ソフィア曰く俺とエマが帰ってきたらランクアップするって話らしい。それだけとは思えないが。


「イグナス先生、アレクの腕の治療はどうなるんだ?」


 カルマが不意にイグナスに聞いた。


「おー、最優先で治すように言ってるぞーたぶん明日だなー。冒険者学校の医務室にきてくれー」

「明日?ずいぶん早いな」


 あまりの速さに驚いた。超越級治癒魔術はどこからも引っ張りだこだ。せめて、1ヶ月は待つと思ったんだがな。


「それはですね!イグナス先生がお父様に必死にお願いしてたからですよ!」

「お、おい、ソフィア…やめてくれ…」

「へー先生そんなに俺の事を思ってくれてたのか」

「馬鹿言ってんじゃねーよ、お前はミアレスでは英雄のようなものだ。早く治さねーとミアレスのお偉いさんがうるせーんだよ」

「えー?」

「そんな目で見んじゃねぇ!」


 どうやらツンデレイグナスが必死に掛け合ってくれたようだ。可愛いヤツめ。


「よーし、じゃミアレスであったアレクサンダーが瘴気に当てられた時の話をしよう!」

「やめろばか!!!」

「そんな目で見ないでくれぇー嫌わないでくれぇー」

「やめろ!!!」


 俺の黒歴史だ…やめてくれ…俺が悪かった。


「へっ、これからはしっかり先生を敬うことだな」

「大人気ねぇな」

「弱ったアレクさん…可愛い…見てみたいです…!」

「やめてくれソフィア…」

「おー、そう言えばあの時エマがアレクサンダーに情熱的なキッスをしてたな」

「先生!?」

「キキキキキッス…!?エマさん…大人です…!」


 エマがベリウルに向けた以上の殺気でイグナスを睨んでいる。イグナスがカルマの後ろに隠れた。

 この人ほんとに大人かよ。


 そんなこんなで冒険者協会に着いた。


 〜冒険者協会〜


「ホグマン会長ー、連れてきたぜー」


 イグナスが遠慮なしに会長室の扉を開けた。


「おお、アレクサンダー君エマ君。話は聞いているよ。カルマ君もソフィア君もよく来た。こっちに座ってくれ」


 俺達は応接用のソファに座った。


「まず、お疲れ様だ。2人とも、心身共に疲弊しただろう。ゆっくり癒してくれ。」

「はい、ありがとうございます」

「辛い経験があった直ぐで申し訳ないが。上位デーモンとの戦闘を詳しく教えてくれないか」

「構いませんよ」


 俺は上位デーモンとの戦闘を詳しく話した。


「なるほど、その腕はそうやって。君ほどの実力の者が簡単にそんな重症を負うとは考えられなかった。やはり、デーモンは残虐か」

「あとは、俺の戦闘方法を見て初代勇者がどうこうとか」

「初代勇者か…500年前魔神を倒したと言うのは文献には残っているが、詳しい戦闘方法とかはわかっていない。500年以上生きるデーモンがそう言うなら、初代勇者も魔剣士だったのかもしれないな」


 初代勇者か、500年前なら知る術は限られそうだ。


「あとは、俺とエマの力を見て大笑いしながら、あの組織に狙われるのも合点がいったと。組織とはおそらくパンドラのことでしょうが」

「君たちの力を見てか、デーモンからしたらなにか気付くことがあったのだろうか。なんにせよ、君たちがパンドラに狙われていることに変わりはないな」

「他は、特にありません」

「そうか、報告ありがとう」


 ベリウルは俺とエマの力について、なにに気付いたのだろうか。俺が半魔族ってことに関わってくるのか?


 半魔族…カルマとソフィアにも言わないとな。


「さて、次は君たち4人の冒険者ランクについてだ。もう既にソフィア君から聞いているだろうが、現在カルマ君とソフィア君のランクアップは保留されている。」

「はい、聞きました」

「それで今回のアレクサンダー君とエマ君のミアレスでの功績を冒険者としての評価とし、君たち4人をB級とする。」


 やっぱりな、冒険者学校に入学してから僅か8ヶ月程でB級とはな。破格だ。

 だが、どうも嫌な予感がする。


「B級上がったということで、君たちは指名クエストを受諾することができるようになる」

「だと思いました…」

「ははっ!まぁ、そう言うな、アレクサンダー君」

「ゆっくり癒してくれって言ったばかりですが」

「それでは指名クエストについてだが」


 聞いちゃいねーなこのおっさん。


「クエストの依頼者は私だ。依頼する内容は【魔龍連山:中層の調査】だ」

「中層の調査、ですか」

「ああ、聞いたと思うが君たちがミアレスに行ったあとに1度緊急クエストがあった。ワータイガーの討伐。あれも魔龍連山なのだ。いくら特異エリアでも異常だ」


 どの特異エリアでも、高ランクのモンスターが深層に生息するってのはお決まりのルールだ。

 ワイバーンにワータイガーは中層から深層くらいのモンスターだ。それが表層で大量発生している。確かに異常だ。


「表層の調査はしたんですか?」

「ああ、ワイバーン大量発生の後にな、あれはキメラが中層に出現したことでワイバーンが逃げ出したということになっている」

「なるほど、中層の調査に他に行った人は?」

「A級を3パーティーほど送ったが特に異常はなかった。だが、とある目撃情報があってな」

「目撃情報?」

「パンドラの構成員だ」


 パンドラの構成員か。ベリウル曰くまだ俺とエマを狙っているとか。


「それは危険じゃないですか?お2人は死地から生還してきたばかりです。会長も言われました通り心身共に疲弊しています。それをまた狙われにいけと?容認できません」

「俺も同じ意見だ。アレクは片腕を失って帰ってきた。それを目の当たりにして、すぐ死地に向かうなど」


 ソフィアとカルマが怒っている。俺達の状態がショックだったのだろう。


「なにも今すぐにではない。現在もS級パーティーに調査を依頼している。クエストを始める時はそっちのタイミングで構わない。十分休息を取ってくれ」

「それなら。アレクさんエマさん、よろしいですか?」

「ああ、問題ない」

「うん!私も大丈夫!」

「では、そういうことでよろしく頼む。アレクサンダー君の腕についてはイグナスから聞いているね?」

「はい」


 ホグマンとの話は一通り終わった。

 俺達はまた俺の部屋に戻った。


 〜アレクの部屋〜


「では、明日からは普通に授業に出席を?」

「ああ、しばらくぶりだ」

「午後からはどうするんだ?」

「適当にB級クエストやるよ」

「久々のクエストだ!」


 まぁ、いいリハビリになるかもな。


 あとは、俺の血筋のことか…


「2人に聞いて欲しいことがあるんだ…」


 暗い顔をする俺にエマが手を握ってくれた。


「大丈夫だよ。この2人なら」

「そうだな」


 カルマとソフィアは首を傾げている。


「俺の血筋についてわかったことがあるんだ」

「血筋?アレクの家系に繋がることか」

「すごい進展です!」


 ふぅと一息吐く。


「俺は、人間と魔族のハーフだ。」


 チラッと2人の顔を見た、驚いている。ポカンと口を開けているが、どういう感情なのだろうか。


「アレクもか、偶然だな」

「「え?」」


 カルマの衝撃発言が飛び出した。


「アレクもかって…?」

「ああ、俺の母親が魔族だ。見た目はほとんど人間だがな、そういえばこの黄色の瞳は特に魔族に多いらしいぞ?」

「そ、そうなんだ…」


 俺の瞳を見てカルマはなにも思わなかったのかな。天然野郎が。


「すごいです!じゃ、このパーティーは"みんな"混血なんですね!」

「「「え?」」」


 ちょっとまて…みんな…?それじゃ。


「はい!私も獣人族のハーフですよ!」

「「「獣人族!?」」」


 まてまてまて…獣人族のハーフ…?理解が追いつかない。


「はい、実はお父様は実の父親ではないのです。お父様の妹の子供が私です」

「養子に行ったってことか?でも、陛下には3人の子供がいらっしゃる。養子を貰うほどでは」


 デリケートな所にカルマが突っ込んでいく。ハラハラする。


「私の両親は私が幼い頃、事故で亡くなりました。父は獣人族の戦士でした。母は王族を辞め父の元に嫁ぎました。事故で両親がいなくなってしまった私をお父様が引き取って下さったんです。お姉様もお兄様も本当の兄弟のように可愛がってくれています」


 ソフィアにそんな過去があったのか。とても獣人族のハーフには見えないが。


「でも、ソフィアには耳も尻尾もついてないね?」


 俺と同じことをエマも思っていたらしい。


「はい!外見は特に人間に寄ったみたいです!獣人族の特徴と言えば犬歯ぐらいでしょうか」


 そう言うとソフィアは尖った犬歯を見せてくれた。


「ソフィアに獣人族の耳と尻尾……いける」

「アレク?」

「いや、なんでもない」


 エマがジト目で見てきた。


「驚いたことに俺達はみんな他種族のハーフだったみたいだ。偶然か、それとも惹かれ合う何かがあったのか」

「なんでアレクは血筋を言うのにあんな緊張してたんだ?」


 カルマが痛いところを突いてきた。


「いや、気にしないでくれ」


 エマがこっちを見てニヤリとする。


「それはねー、ミアレスでアレクが瘴気に当てられた時の話になるんだけどー!」

「エマ!?」

「あの時、魔族は嫌われ者だから、自分も嫌われるかもぉって!」

「やめろ!!やめてくれ…」

「それで負の感情が膨らん…んぐ!?」


 俺はエマの口を抑えた。もごもご言っているがしばらく抑えておこう。


「へー、それでか。イグナス先生の話と繋がったな」

「アレクさん…可愛い…」


 カルマとソフィアがニヤニヤしながら見てくる。


「やめてくれ…」


 でも、俺は人に恵まれている。半魔族と聞いても嫌な顔しない。俺は俺だと言ってくれる。ありがたいことだ。


 明日からは普通に登校だ。



第30話ご閲覧いただきありがとうございます!


次話をお楽しみに!

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