第27話 アレク&エマVSベリウル
今回の話はグロ表現が含まれます。
注意してご覧ください。
禍々しい殺気を向けられる。ゾクリと寒気がした。
「さぁ、どこからでもどうぞ?」
ベリウルは両手を広げた。
「エマ!合わせるぞ!」
「うん!」
俺はベリウルに肉薄し剣を振り下ろす。
「ふむ、悪くない太刀筋ですね。ですが、まだ荒い」
「ぐっ…」
ベリウルは片手で剣を受け止め俺の腹に蹴りを入れた。少し後ろに下がるとエマの魔術が放たれる。
「『ホーリー・レイ』!!」
「はぁ、芸が無いですねぇ…」
エマが放った魔術をベリウルは躱した。しかし、
「なるほど、ホーミングですか」
ベリウルは光線を闇魔術で相殺した。
「それだけですか…ぐぁ…!?相殺したはずでは…」
ベリウルの背中に光線が直撃する。実際、エマの光線は相殺されていた。"1つだけ"は。
「これは、中々に器用ですね。」
「あと少し増やせるかな」
エマの周囲には10個ほどの光の玉が浮いている。そこから、同時に光線が放たれる。
「躱しても着いてくると…全てがホーミング。厄介ですね」
「俺も忘れないでくれよ」
俺はベリウルに肉薄し、聖属性を纏わせた剣で攻撃する。
「我流『昇り龍』」
「くっ…」
俺の斬撃はベリウルの片腕を切り落とした。
「我流『龍牙一閃』」
「ぐあっ…なんだこの剣術は…」
横薙ぎの一閃はベリウルの腹を捉え深い傷を負わす。ベリウルは一旦距離を置くために、後方へ下がる。しかし、
〔ドカンッ!!〕
「な…に…!」
「爆裂魔術『マイン』」
設置型の魔術を予め、後方に設置していたのだ。どうやら上手くいったようだ。
「一気に畳み掛けるぞ!!」
「うん!」
俺は、跪くベリウルに肉薄し剣を振り下ろす。
「調子に乗るなぁ!!!!」
ベリウルは叫び、広範囲の闇魔術を展開した。
「ぐぅっ…!!」
「アレク!!」
俺は後方に吹き飛ばされるがエマが風魔術で受け止めてくれた。
「クックック、小癪な真似をしてくださる。少々イラついてしまいますね。ですが、そのような物は攻撃の内に入りませんよ。攻撃とはこう言う物です」
ベリウルは両手を前に出しとてつもない量の魔力を凝縮した。
「超越級闇魔術『ラグナロク』」
凝縮された球状の闇魔術が迫る。俺はニヤリと笑った。
『リフレクト』
「なに…!?」
俺は剣を突き出し、光の壁を生成した。光の壁に当たった闇魔術は跳ね返り少し威力が増してベリウルに直撃する。
「ぐあぁぁ!!……それは…聖剣技…?」
「聖剣技なんて大層な代物じゃないさ。先生の技の見様見真似で作ったみた劣化版模倣技だ」
劣化版でも効果は絶大のようだ。
イグナスのリフレクトは物理、魔術関係なく攻撃を倍以上にして返す技。
それに対して俺のリフレクトは、魔術のみの攻撃を1.5倍ほどの威力で返すだけだ。
イグナスにどんな技があるか聞いとってよかった。
「エマ!超級だ!」
「りょーかい!」
「『ホーリー・オーバーレイ』!!」
エマは超級聖魔術を放った。
「超級程度で…?どこに…」
エマは俺に向かって放ったのだ。裏切りじゃない。そういう作戦だ。
『リフレクト』
「くそっ…ぐあっ!!」
俺が反射した超級聖魔術はベリウルにギリギリで躱されたが、脇腹を掠めた。
「聖魔術の攻撃は治りが遅いですね。」
ベリウルはそう呟くを俺に肉薄し、漆黒の鉤爪で攻撃してきた。
「ククッ、ここまで詰めよれば魔術師も迂闊に攻撃できないでしょう」
「おまえ、エマを甘く見すぎだ」
ベリウルの重い攻撃を捌きながら言った。
「ぐあっ!!私だけを…正確に…」
俺と肉薄していたベリウルだが、エマの攻撃はベリウルのみを撃ち抜く。
圧倒的センス。エマの魔力操作は誰よりもすごい。
「おらぁ!!」
「ぐっ…」
俺はベリウルの腹を蹴り、遠ざけた。
「中々に…効きますね」
「まだ終わってねぇよ」
「これは…無数の…光の破片…?」
ベリウルの周囲には俺が展開した、リフレクトの欠片がばらまいてある。
「エマ!!!」
「うん!」
エマは散らばった破片目掛けて無数の光線を放った。
光線はリフレクトの破片に反射し、威力が上がってランダムにベリウルに降り注ぐ。
「そういう事…ですか…!ぐおぉぉおお!!!」
(魔術剣術共に優れた男…それに、針の糸を通すような精密な魔力操作をする女……これは…)
エマの光線が撃ち終わり、俺のリフレクトの効果も切れた。
「どうだ…!はぁ…ちょっとは効いてくれ。」
「はぁ…はぁ…煙で見えない…」
煙に目を凝らす。すると、
「クククククッ…アッハッハッハッハッ!!!なるほど!なるほど!なるほど!全て合点がいきました!!」
「効いて…ないのか…?」
煙の中から高らかに笑うベリウルの姿が見える。
「いいえ!効きましたよ!まぁ傷は治りましたがね!!」
「うそ…」
「いやはや!!なぜあの組織があなた達2人を狙うのかよくわかりました!!!アッハッハッハッハッ!!なるほどですよ!!!!」
「あの組織だと…?なにを笑ってる」
不気味に笑い続けるベリウルに俺は顔を顰めた。
「いやぁ、素晴らしくて思わずね!!魔剣士に魔術師!!あなた達に敬意を評し!!全力でお相手をしましょう!!!はあぁ!!!!」
ベリウルの体からとてつもない量の魔力が解き放たれる。そして、それは再びベリウルの体へと集約していき。
その姿が変化した。2mほどあった体格は1.6mほどに小さく細くなった。
しかし、禍々しい魔力は以前とは比べるまでもなく高くなっていた。
「行きますよ!!!」
目にも止まらぬ速さでベリウルが俺に肉薄してきた。
「がはっ…」
「まだまだぁ!!」
「があぁ…!!」
ベリウルの拳は俺の鳩尾に炸裂し、強烈な蹴りを食らった。俺は後方へ突き飛ばされ、壁に激突した。
「アレク!!」
「自分の心配もしなさい」
「がぁっ…!」
強烈な拳がエマの鳩尾を襲う。エマはそのまま倒れ伏した。
「ふむ、やはり、貴方は辛うじて防御できた様ですね」
「痛えぇ…強すぎる…」
ベリウルの足音は段々近寄ってくる。
「くっ…我流『龍牙一閃』!!…くそ…!」
「中々の剣速ですが、今の私には通用しませんよ」
「ぐあっ!!」
俺の剣をベリウルは素手で掴んだ。再びベリウルの拳が俺の鳩尾に炸裂する。
「ほら!ほらほら!!まだですよ!」
「ぐ……」
殴り、蹴り、叩きつけ、蹴る。俺は声すら出なくなった。
「やめ…て…」
エマは光線を放つ。しかし、それはベリウルの頬を掠めただけ。
「はぁ…鬱陶しいですね。あなたはそこでじっとしていてください」
『カオス・バインド』
「くっ…動けない…!」
地面から発生した無数の闇の鎖がエマを縛った。
「あなたの大切な人が壊れていく様を見なさい」
「ぐぁぁぁああぁあ!!」
ベリウルは不敵な笑みを浮かべて、俺を何度も殴り、壁に叩きつけ、地面に押さえつけた。
「やめて…!」
「やめません。しかし、殴るのも蹴るのも飽きましたね」
そう言ってベリウルは俺を押さえ付けたまま、俺の左腕を持った。俺はなにも抵抗できず、意識が朦朧とする。
「な、なにをするの…」
「引きちぎります。」
「や、やめて…お願い…やめて…!」
「やめません。」
〔ブチッ〕
「があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
俺は腕を引きちぎられた。俺の悲痛な叫びが地下に響く。
「あぁ…お願い…もうやめて…」
「ほら!しっかり見て下さい!!次は殺します!!」
「もうやめて!!」
「やめません。」
ベリウルの爪がゆっくり俺の胸に刺さっていく。笑みを浮かべ、楽しむように、じっくりと。
しかし、その爪を光線が弾いた。
「ア…リア……」
アリアの魔術だった。アリアは口から血を流しながら、ベリウルに向かって手を向けた。
「超越級聖魔術『女神の怒り』」
「ぐあっ!!」
ベリウルは吹き飛ばされ、俺の上から退いた。
「ゲホッゲホッ…うぅ…エマ…アレクを後ろに…治癒魔術をかけて」
アリアはエマの拘束を消滅させた。エマは俺を抱え治癒魔術をかけた。
「傷は塞がったけど…欠損した腕は超越級じゃないと…」
「じゅう…ぶんだ…エマ」
血を失いすぎてフラフラするが、まだ立てる。
「アリア…!ありがとう、もういい。下がってくれ」
「ダメ。2人じゃ勝てない」
「お前は魔力を使っちゃダメだろ!!」
「アリア!私達はまだ戦えるよ…!」
俺達はアリアに下がるように懇願する。これ以上魔力を使ってしまったら寿命が縮む。
「『ホーリー・チェイン』」
「アリア!!なんで!」
「アリア!?」
アリアは俺達を拘束した。
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