第131話 結婚報告回りinスアレ
レディアでのプロポーズから1週間後、俺とエマはスアレに戻ってきた。
プロポーズし、結婚を決めたことをミシアとラルトに報告すると涙を流して喜んでくれた。ローガンとミーヤにも報告しておいた。
「はい!婚姻届承りました!ご結婚おめでとうございます!」
「「ありがとうございます」」
俺とエマはスアレの王城に隣接する国民館へ婚姻届を提出した。
国民館とは国民であるアレコレを発行するとこだ、他国へ渡る証明書とか、離婚届を出すのもここだ。出来れば離婚届できたくは無いな。
「さて、忙しくなるぞ。結婚の報告回りだ」
「どこから行くの?」
「まぁ、まずは国王陛下とソフィアの所だな。成人もしたし、俺には陛下から賜ったドラゴニアの家名があるからな」
「そっか!それじゃ私は、"エマ・ドラゴニア"になるんだね!」
エマは嬉しそうにしている。なんか家名があるって変な感じがするなぁ。その内慣れるか。
◇◇◇
~イグナシア王城:応接室~
「そうか!入籍したか!おめでとう!末永くお幸せにね!」
「おめでとうございます!エマさん!アレクさん!」
「はい、ありがとうございます陛下、ありがとうソフィア」
「ありがとうございます!」
ヨハネス国王はにこにこしている。俺達の入籍を心待ちにしていた人の1人だろう。ソフィアは少しソワソワしているか?まぁこの間成人したばかりだから、新鮮なんだろう。
「御祝儀を渡さないとね!」
「え!?い、いや大丈夫ですよ!陛下からは十分頂いてますから!」
「そういう訳にもいかないよ。もう用意してるから受け取ってね!」
強引だなぁ…。このお金はヨハネス国王の財布から出てるんだろう。ありがたく受け取っておこう。
「君達は顔が広いから、挨拶回りが大変だね」
「はい、スアレで一通り挨拶を終えたらミアレスに向かおうと思ってます」
「いいね!すぐに報告したい人がいるんだろ?」
「「はい!」」
俺達の親友で、命の恩人。そして、俺の想い人…。アリアにはしっかり報告しとかないとな。
ヨハネス国王と少し談笑して、王城を後にした。もう少し話をしたそうだったが、忙しい身だからと快く送り出してくれた。さすがみんなに好かれる人格者だ。
◇◇◇
さて、次はカルマとファナだな。
確か、いつもの宿にいるはずだ。結構な大金手に入れたはずだが、家とかは建てるんだろうか。いつまでも宿暮らしじゃなにかと不便だろうし。
「おっと、これはこれは"ベネクトル夫妻"ではございませんか。ご機嫌麗しゅう」
「からかうなよアレク。そういうお前らも"ドラゴニア夫妻"だろ?」
宿の待合スペースにはカルマとファナが座っていた。
「結婚おめでとう、アレク、エマ、幸せにな」
「ありがとう、カルマとファナもな」
俺とカルマは握手を交わす。
「これからどうするんだ?いつまでも宿暮らしじゃ不便だろ」
「ああ、どこか空き家を買う予定だ。100万Gも貰ったところだしな」
俺は土地を持ってるから建物代だけでいいが、一軒家を土地からとなると相当な額が必要になる。ついこの間まで金欠だと項垂れていたカルマには空き家を買うのがベストだろう。
「アレク達の家は進んでるか?」
「順調だ。来月には完成するんじゃないか?」
「楽しみ!」
そう、俺は既にマイホームの建築を依頼している。この挨拶回りが終わる頃には入居できるだろう。来客が多いことから少し大きめの家を建てた。
「ファナは鍛冶を続けるのか?」
「うん!カルマもやりたい事やっていいって言ってくれてるし、私が納得する刀を打つまでは鍛冶を続けるつもりだよ」
そう言って俺の夜桜を凝視する。ファナの納得する刀ってのは夜桜並の刀なんだろうな。
「エマは普通に冒険者続けるんでしょ?」
「うん、結婚しても日常はあまり変わらないかな」
エマはそう言い苦笑いをするが、どこか幸せそうだ。!
「アレク、ちょっといいか」
「どうしたカルマ」
さっきまで楽しそうに喋っていたのに、今はなんだが表情が暗い。
「お前がリヴァイアサンと戦ってる時、俺がタカハシ村に帰ってたのは知ってるよな」
「ああ」
「実は、俺の父親が帰ってきてたんだ」
カルマの父親?居たのか。てっきり色々事情があるのかと思って突っ込まなかったがそうでもないのか?父親が帰ってきてすぐに会いに行くなんて随分仲がいいようだ。
「家族をあのクズから守れるのは俺しかいないからな…」
そうでもなかったみたいだ。
「酷い言い様だな」
「あいつは卑怯な手でじいさんを半殺しにした挙句、子供と妻を放ったらかしにしてどっかに行きやがったんだ」
モル爺を半殺しに…?卑怯な手と言えどそんな事が可能なのか…?
「そんな奴が帰ってきたんだ。俺は殺すつもりでタカハシ村に帰った。だが、なぜか普通に家でくつろいでいたんだ…!さも当たり前の様に…!そしてその状況を母さんも!じいさんも!何事も無かったように受け入れていたんだ…!!」
カルマは凄まじい殺気を放ち怒りを露わにする。
「カルマ、落ち着け。ファナは耐えられない」
カルマの殺気に当てられ、ファナは首を抑え膝を着いた。
「ご、ごめんファナ。大丈夫か…?」
「うん、大丈夫…。ちょっと向こうで休むね」
「エマ、一緒に居てやってくれ」
「うん」
エマとファナは隣の部屋に入っていった。
「話を続けるが、なぜかじいさんと母さんは当然のように受け入れていた。俺はそれが許せなくて親父に決闘を申し込んだんだ」
「決闘を?また思い切ったな」
「まあな。俺が勝ったらタカハシ村に二度と戻らないという条件でな」
「親父さんが勝ったら?」
カルマは少し顔を伏せた。
「アレクに会わせる」
ん?そこで俺?
「なんで俺なんだよ」
「わからない。ただ、親父はアレクと話がしたいと言っていた」
まてよ、この話を俺にしてくるってことは。
「まさか、カルマ負けたのか?」
「…ああ」
まじかよ。カルマも相当腕を上げたはずだ、いずれ神域にも辿り着くと俺は確信している。そんなカルマが負けた…?
「お前の親父さんって何者なんだ?」
「現鷹剣流滅級剣士"鷹神"カルディア」
「マジかよ…」
まさかの滅級剣士。"鷹神"カルディアっていえば円卓に居た赤髪のおっさんか。どこかカルマと似ていると思っていたがまさかの親子だったのか。
「なるほどな、カルマが滅級に固執している理由がなんとなくわかったよ」
「恥ずかしい話だ」
だが、カルディアが卑怯な手でモル爺を半殺しにした挙句、子供と妻を放っておく人間だとは思えない。何か理由がある気がする。
根拠はある。なぜなら、守護者の石版に"邪悪な心"がある人間は映し出されないからだ。
まぁ、それをカルマに言っても理解はしてくれないだろうから、自力で真実を知って欲しいな。
「話はわかった。挨拶回りが終わったらタカハシ村に行こう」
「迷惑をかける」
「いいってことよ」
これは、のんびり新婚生活とはいきそうにないな。
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