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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第九章 冒険者学校最終年
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第101話 魔剣の正体

 

 〜ソフィアside〜


 カルマさんはモル爺様との特訓をしているようですが、中々に実りがありそうです。

 私はイグナス先生に魔剣について教えて頂けるようですが、聖剣と魔剣でも扱い方は同じなのでしょうか?


「イグナス先生、特訓とはなにをするのですか?」


 魔剣の扱いを教えて下さるのでしょうか…。しかし、私はまだ魔剣と意思疎通ができていませんが…。


「そうだな。最優先は魔剣と意思疎通を図ることだな」

「そうですか…。聖剣も魔剣と同じように会話するのですか?」


 どんな風に話すのでしょう。聖剣は500年前からあるものですし、少し違うかもしれませんね。


「聖剣も魔剣だ。選ばれて契約するまでの流れは一緒だ。俺は14歳の時に虎剣流の超越級になった。その時に聖剣とも意思疎通ができたな」

「という事は超越級になる事が鍵なのでしょうか?」

「いや、一概にそうとは限らん。中には剣術を学んでないのに選ばれ、意思疎通ができた奴もいる」


 必ずしも力が必要という訳ではないと。


「俺の場合は敵と戦ってる時に急に話しかけてきたぞ。なんか「いい感じだから契約しようぜ」って言ってきたな」

「す、すごいノリみたいに契約するんですね…」

「ブレイドは500年前から俺を含め14人と契約してきた。資格さえあれば契約するのはいつでもいいんだろ」


 契約のタイミングは完全に魔剣次第のようですね。まだ、何も音沙汰がない…。この魔剣は何を考えているのでしょうか。


「魔剣は所持者の声はしっかり聞こえているらしいぞ。たまに声でもかけてみたらどうだ?」

「それはまだ試したことなかったですね…」

「魔剣と契約出来るまでは基礎的なトレーニングと実践だ。魔剣を扱えるようになったことを想定しての立ち回りも教えてやる」

「先生は元虎剣流剣士ですものね。よろしくお願いします!」

「あんま期待するなよー」


 その日は魔剣の知識について色々教えて頂きました。

 魔剣については謎が多いそうですが、魔剣の器と言われる"未完の魔剣"という物があるそうです。

 世界に魔剣は10本存在しますが、その内の半分がまだ未完の魔剣だそうです。

 アレクさんとロレンスの古城の地下に行った時に未完の魔剣であったこの純白のロングソードは真の魔剣として覚醒したのでしょうか…。


 イグナスとの特訓を終え、ソフィアは自室で就寝の準備をしていた。


「はぁ…あなたはなぜ答えてくれないのでしょう…」


 純白のロングソード…。シャルさんとアレクさんから頂いた大切な大切な宝物。


「アレクさん…エマさん……会いたいです…」


 2人の顔を思い出す度にあの時の事が悔やまれます。私にもっと力があれば、状況を打破出来るほどの技術があれば…。


「あの時は思わずあなたの力を求めてしまいました…。あなたに頼りきりの私ではあなたは答えてくれないのでしょうか…」


 あなたはいったいどんな人でしょうか…。人?魔剣?どう呼べばいいのでしょう。


「私は強くならなければいけません。大切な人を失わないように…。カルマさんも同じ気持ちでしょう」


 もうあんな思いはしたくありません。


「強くて、優しくて、ちょっとエッチなアレクさん…。私の大好きな人…。

 いつも笑顔で、アレクさんが大好きで、少し天然なエマさん…。私の1番の親友…。

 私はもっと強くなってみせます。帰ってきたら褒めてくださいね…」


 魔剣に語りかけていたつもりが、いつの間にか2人への思いを吐露してしまっていました…。


 夜も更け、ソフィアはいつの間にか眠っていた。


 ◇◇◇


 〜???〜


 気が付くと私は真っ白な空間に立っていました。

 以前アレクさんも蘇生する前にそこに立っていたと言っていましたっけ。確かここは、


『あなたの精神世界だよ』


 背後から声がして、ソフィアは慌てて振り向いた。


「初めましてソフィア、私の名前は…」

「アリア・ミアレスさんですね」


 そこにいた女性はセミロングの桜色の髪に桜色の瞳。身長は私とそう変わらない。アレクさんやエマさんから聞いた特徴と一致します。


「なんだ!知ってたんだ!アレクやエマから聞いたの?」

「はい、いつも嬉しそうに話していましたよ」

「ふふっ…そっかぁ、懐かしいなぁ…」


 懐かしそうに微笑むアリアさん。なんだか、胸が苦しいです…。


「それより、なぜ私はこんな所に?」

「ん?魔剣の力を使いたいんでしょ?やっと意思疎通が取れるパイプができたからね。ちょっとお話しようと思って」

「え?なぜ魔剣の力でアリアさんなのですか?」


 私も首を傾げますが、アリアさんも首を傾げています。どういうことでしょうか…。


「なぜって…。私が魔剣の意思だからだよ?」

「………え!?」


 アリアさんが魔剣…?でも、彼女は元は人間で…。え?


「あー、そっか。魔剣についてはあまり語られていないんだっけ。覚醒した魔剣はまだ5本だもんね、私含めて」

「という事は、魔剣ったいうのは…」


 まさか…。


「そう!魔剣の正体は死んだ人間の魔力が宿った剣なんだ!!」

「死んだ人間の魔力…ですか」

「まぁ、魂とも言い換えれるよね」


 魂…。しかし、偶然とは思えません…。


「なぜ、私を選んだのですか?」

「そんなの決まってるじゃん!アレクとエマの事が大好きだからだよ?さっきも私の前で「大好きな人…」ってセンチメンタルに言ってたじゃん」

「わー!わー!やめてください!恥ずかしい…」


 魔剣は声を聞いていると言うのは本当の様ですね…。


「アリアさんはたまたま魔剣になったのですか?」

「ううん。魔剣になるには2つ条件があるの。まず一定以上の潜在的魔力量、そして、滅級魔術師であること」

「滅級…強制的に魔剣になるのでしょうか?」

「なるかどうかの選択権は私達にあるから、自分の意思で決められるよ」


 なるほど。魔力量が多く、滅級魔術師なら魔剣になる選択肢もあるという事ですね。


「なぜ魔剣になろうと?…あっ…質問ばかりですみません」

「いいよ、気にしないで!魔剣になった理由かぁ」


 大体予想はつきますが…。


「アレクとエマを守りたい、アレクとエマが守ろうとしている人も守りたい。からかな」

「でも、もしかしたら純白のロングソードは他の人の手に渡っていたかもしれませんよ?」


 実際初めは見ず知らずの冒険者がロレンスの古城から拾っていましたし、その後はシャルさんが。もし、私達がモルディオに行ってなければ私が貰い受けることは無かったでしょうし。


「そこは、私の特権。予言の出番だよ!アレクの蘇生について話は聞いているでしょ?その時にアレクが純白のロングソードを手に入れる未来を予言してね、で、その剣はなんと未完の魔剣!これしかないって思ったよねぇ」

「そんな方法が…」


 確かに予言なら確実な未来がわかります。しかし、100%の的中率を誇る予言を覆すとは、やはりアリアさんは凄い魔術師だったようですね。


「アレクとエマを守りたい。それはソフィアも同じ気持ちでしょ?」

「もちろんです。なぜ今まで意思疎通が出来なかったのですか?」

「それはね、私の想いとソフィアの想いが同じになった時に意思が通じるように設定したからた」

「同じ想いですか?」

「うん!アレクが好きで好きでたまらないってね!」

「うぇ!?ま、まぁ…好き…ですけど…」


 そんな事で意思疎通が取れるようになるだなんて。


「ねぇ、ソフィア。なんであなたは自分の気持ちに蓋をするの?」

「え?蓋ですか?」

「なんでアレクと恋人になりたいって正直に伝えないの?」

「わ、私は…今の関係で十分です…。それにエマさんの邪魔をするつもりは…」


 その話はエマさんと戦った時に決めたことですし…。


「嘘だね。隣にいたい、女性として見て欲しい、恋人になりたい、そんな想いが魔剣を通して流れてきたよ」

「そんな…私は…」


 私は今の関係で十分…。ずっとそう思って…。


「わかってると思うけど、アレクはソフィアの事も愛してくれるよ、自信もって」

「自信とかそういう問題では…」

「なーんて、どうするかはソフィア次第だよ。死人に口なしってこの事だね!」

「はい…では、契約をするのですか?」


 契約が出来れば魔剣の力も解放できますし…。


「んー、まだいいや!時間もあるみたいだし」

「そうですね。アレクさんとエマさんについてはまだ何も…」


 でも、アリアさんはどこまで予言しているのでしょう…もしかしたら…。


「ア、アリアさんは2人がいつ帰ってくるのかわかりますか!?」

「私にもわからないよ。スアレの強襲で2人で飛ばされるってのは予言になかったの」

「そうですか…どこまで予言できるのですか?」

「その人が死ぬまでだよ」


 すごい。予言の力は特性(ユニーク)の中でも特に強力ですね。


「アレクさんは1度死んでいます。予言の的中率も下がるのでしょうか」

「そうだよ。ついでに言えばアレクが蘇生した時点で、エマ、ソフィア、カルマ君は予言が不安定になったの。エマはアレクが死んだ後直ぐに死ぬ予定だったからね、それに、ソフィアとカルマ君はスアレが強襲された時に死ぬ予定だったみたい」

「アレクさんが蘇生したことで、未来が根底から変わったのですか…?」

「そうだね、アレクはただでさえ特別な力を持った人間だから、これから関わる沢山の人の未来を変えていくことになる」



 ん…?でも、平行世界のアレクさんは私とカルマさんを知らなかった。既に死んでいたという事ですね?つまり、スアレの強襲で死んでいた…。

 時間列がおかしい…。平行世界のアレクさんは強襲されると言ってましたが詳しい時間を教えてくれませんでした…。いや、今思えば詳しい時間は知らなかった?


「ソフィア?」

「あ、すみません。少し考え事を」

「平行世界のアレクについて考えてたでしょ」

「な、なんでもわかるんですね…」


 これが意思疎通と言うものでしょうか…。


「んー、平行世界のアレクについては私は何も語れないよ」

「正体を知っているのですか!?」

「って言うよりアレクが失った記憶も全部知ってるよ、アレクが何者なのかもね」

「で、ではそれをアレクさんに伝えてあげれば!」

「それはダメだよ」

「なぜ…?」

「色々複雑なの、平行世界のアレクについても深く考えなくていいよ。アレクが自力で全部思い出さなきゃ意味がないの」

「そ、そうですか…」


 色々複雑…。アリアさんの言う通り深く考えるのはやめておきましょう。


「それで、なぜ契約しないのでしょうか」

「契約しちゃうと魔剣の意思が消えるのは知ってるよね?まだ、ソフィアと沢山お話したいから!」

「そうですか…。お2人に何か伝言はありますか?」

「いや、何も無いよ。私が魔剣の意思ってことも話さないで。どうせ消えちゃうんだから、また悲しい思いさせたくない」

「わかりました…」


 でも、何も知らないっていうのもなんだか辛いです…。


「大丈夫、魔剣の奥義『魔剣解放』をする時に私の名前を呼ぶことになる。その時に気付くはずだから」

「なるほど、わかりました!契約までよろしくお願いします!」

「うん!よろしくね!」


 アリアさんは本当にアレクさんとエマさんが大好きなのですね。2人の話をしている時、すごく幸せそうな優しい顔をしています。


 2人を守りたい、その一心で魔剣になったアリアさんを心の底から尊敬します…。


「ちなみにだけど、ソフィアのライバルはもう1人いるんだー」

「ライバルですか?」

「そ!恋のライバル」

「エマさんではなくて?」


 エマさんはライバルと言うより共に同じ人を愛する共有者という感じですが。


「実はね、私の予言の力を継いだ子がいるの。その子が産まれる前に少しお話する機会があってねぇ」

「しかし、今から産まれてくる子だったら、正直アレクさんの範囲外だと思うのですが」

「ふふっ、その予言の力を持った子はねぇ…」


 アリアはイタズラな笑顔を浮かべ言い放った。


「エマの妹なの!!!」

「え!?」


 衝撃的な発言を聞き固まるソフィア。


「も、もしかしたら3人娶る可能性も…」

「それはないね、アレクにもキャパってあるからね。さすがに3人はキャパオーバーだと思うよ?そもそもエマしか愛してこなかったんだから」

「そ、そうですか…」


 アリアの意思を継ぎ、魔剣の力を得たソフィア。新たな恋のライバル相手にどうするのか。


 そして、物語は2年後から始まる。


第101話ご閲覧いただきありがとうございます!


次回をお楽しみに!

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