第1話 記憶喪失
どうもみなさん、こんにちは。紅咲です。
今回初めて小説を書いてみました。
物語はあらすじの通り、記憶を失くした少年が自分の記憶を取り戻す為に奮闘する物語です。
言葉のチョイス、文の構成、拙いところもあると思いますが、楽しんで頂けたら幸いです。
「どうして!!!」
男は叫ぶ。そこは大きな魔法陣の上。若い男が抱えているのは首から血を流す若い女。
「大丈夫……これで、条件は満たしたから……。」
魔法陣が光を放つ。魔法陣を起動する為に女は命を捧げたのだ。
「どうしてっ…!命が必要なら俺が死ねばよかった!!俺が…!」
涙を流し、後悔する男に女は言う。
「この魔法陣の副作用は、計り知れないものよ。命を捧げてもリスクは受ける。でも、あなたならできると信じてるわ……。」
女は真っ直ぐ男の瞳を見つめ、静かに微笑む。
「また…私を見つけてね?アレクサンダー…」
男は歯を噛み締め深く頷く。生気がなくなりつつある、女の身体を強く抱き締る。
瞬間、魔法陣の光が辺りを包み込んだ。
◆◆◆◆◆◆
とある森の中、1人の少年が目を覚ました。ボサボサの髪は黒色、瞳は黄色。
外見はまだ幼い。
「ここは……?...痛っ!」
何故か身体中が痛い、頭も痛い、とてつもない吐き気に襲われ盛大に嘔吐する。
「うぅ…なんなんだ一体、ここはどこなんだ…?」
周りを見回すが、辺り一帯は森だ。月明かりで辛うじて見える。どこに行くのが正解かもわからない。身体を動かそうとするも激痛であまり動けない。
ブカブカの服が動きずらい、何故ブカブカなのか、気にしている余裕は無かった。
ひたすら前に進む。
「くそっ…誰かいないか…」
◇◇◇
どれだけ歩いただろうか。真っ暗だった辺りが徐々に明るくなってくる。
体力は限界だった。少年はその場に倒れてしまう。激痛だった身体中もいつの間にかなにも感じなくなっていた。
「ここまでか…。」
諦めかけたその時。少年の目には1軒の民家が見えた。あと少し、だが、もう身体は動かなかった。
「誰かいませんかぁ!!誰かぁ!!!!ぐっ!?ゴホッゴホッ…!!」
必死に叫ぶが、声が出ない、喉がカラカラだ。呼吸も曖昧になってきた。
「だれ…か…。」
薄れゆく意識の中、少女が民家から慌てて出てくるのが見えた。
「声が!……っ!?大変だ……。お母さあん!!外で男の子が倒れてる!!!早く来て!!」
声は届いた。少女とその母親が駆けつけてきてくれた。
「酷い状態…早く医者を呼びましょ!」
(助かった…。)
少年は安堵し、意識を失った。
◇◇◇
「助かったか…。」
ベッドで寝ている俺は、見知らぬ天井を見上げながらポツリと呟いた。
すると、部屋のドアが開く。手ぬぐいと桶を持って入ってきた少女と目が合う。
「ぁ……。」
少女は数秒見つめ合ったあと、慌てて部屋を飛び出していった。親を呼びに行ったのだろう。
しばらくして、少女の両親であろう男性と女性が入ってきた。
「調子はどうだい?だいぶ落ち着いたかな?」
気さくに話しかけてきた男性は20代前半だろうか、少し若く見える。真ん中分けで栗色の髪に、緑色の瞳。なかなかに男前だ。
「顔色が良くなっているわね、よかった…。」
そう言い胸を撫で下ろす女性も若く見える、ヘタしたら10代では無いかと思ったが、恐らく違うだろう。腰元まで伸びた灰色の髪に水色の瞳。そして、尖った長めの耳。エルフだ。
「私の名前は、ミシア。こっちは夫のラルト。そして、ドアの影から覗き込んでるのは娘のエマよ、よろしくね」
肩口に揃えた灰色の髪に緑色の瞳、父と母のいい所のみを取ったような美しくもあり、可愛らしくもあるそんな顔立ちだ、耳は尖っているがミシアほどではない。ハーフエルフってやつか。顔半分しか見えないが。
優しくミシアは微笑み、ラルトは手を振る、エマはドアの影から様子を伺っている。
「ごめんなさいね、エマは人見知りなの、しばらくしたら慣れると思うわ。」
そう言いミシアはクスクスと笑った。
綺麗な人だ、エルフは皆美形なのだろうか。エマもまだ幼いが将来有望な顔立ちをしている。
「助けていただき、ありがとうごさいます。この恩は忘れません。」
そう言い俺は頭を下げる。
「あら!まだ幼いのにしっかりしてるわねぇ。エマにも見習って欲しいわ。恩だなんて思わなくていいわ、私は当然のことをしたまでよ。」
そう言いベッドの横の椅子に腰掛ける。
根っからの善人なんだろう。その"当然のこと"ができる人はどれだけいるだろうか。
そう思っていると、ミシアが聞いてきた。
「あなたのお名前は?」
俺は口を開こうとした、だが、ある重大なことに気づいた。
「…あれ?………僕の名前は…なん…ですか…?」
自分の名前を聞いているのに、自分の名前を聞き返す。そんな理解不能な言動に、ミシアとラルトは俯く。
「記憶が、ないのね…。」
ミシアがポツリと呟いた。
空いた口が塞がらない。何も思い出せない。名前すら。覚えているのは言語や礼儀など、基本的なことのみ。
あの森で倒れていた経緯、それまでなにをしていたのか、誰が親なのか、それすらもわからない。
おそらく俺の言動は子供らしからぬものだろう。実際、なぜか俺は精神のみ熟達している。
前世の記憶でもあるのだろうか、ミシアがエルフという種族であることもパッと頭に浮かんだのだ。
知識はあるのに、自分のことはわからない。おかしな話だ。
「ごめんなさい…」
俺が謝るとミシアとラルトは顔を上げ首を横に振った。
「謝ることじゃない、記憶が無くなると言うのは稀にあることだよ。なにかがキッカケで戻るなんてこともあるみたいだけど」
そう言うとラルトはボロボロの服を持ってきた。大人サイズの服だ。
「これは、この家にたどり着く前に君が着ていた服だよ。なぜか大人サイズだけど、これを見てなにか思い出すかい?」
そう言い白いワイシャツと紺色のコート、黒い長ズボンを見せた。あちこちが破けてもう使えないだろうその衣服を俺が身につけていた。
わからない。
「ごめんなさい…なにも…」
「いや、いいんだ。気長に待とう、なにがキッカケになるかわからないしな!」
そう言いラルトはニコッと笑った。清々しい笑顔だ。
「あぁ、そうだ。君の持ち物も僕たちが預かってるよ。ただ、子供に似つかわしく無いものもあるが…」
ラルトは俺の所持品を持ってきた。白い布の袋にボロボロの篭手だ。
「この袋にはなにか入っていたんですか?」
小さな袋だ、この中に入るものなどたかが知れてるが…
「いや、この袋の中は君にしか確認できないよ。」
「え?」
「この袋は魔導袋と言ってね、中の物は持ち主しか出し入れできないんだ、容量は持ち主登録した時の魔力総量で決まるらしい…」
「らしい?ラルトさんは持ってないのですか?」
「魔導袋に使われる材料が特殊でね、お金持ちや名を馳せた冒険者なんかが持っていたりするんだ。僕は田舎の猟師だからね。買うことも作ることもできないんだ。君の年で持っているとなると、ご両親がお金持ちか、冒険者から譲り受けたのかもね。とりあえず、後で中身を確認してみると良いさ。」
なるほど、魔導袋か。そんなこともわからないとなると本格的に記憶喪失なようだ。
白い布の袋はなかなかの貴重品らしいが、この篭手はどうだろうか。
「この篭手は…甲の中心に溝がありますね。なにか嵌めるのでしょうか?」
貴重品なら売ってお金にしようと思っていたが、
「いや…この篭手については全くわからないなぁ。初めて見る物だ。拳闘士が付けるにしては少し重い。甲冑の一部だとしてもこれじゃ軽すぎる。」
わからない、か。わからないものを売っても金にはならないな。大事なものかもしれないしまっておこう。
「僕の持ち物はこれだけですか?」
そう聞くと、ラルトは俺の横を指さした。そこには1本の剣が立て掛けられていた。
黒色の鞘に収まった、やや細めの剣。柄も黒く、鍔の中央には紅い宝石が嵌められていた。
「これは…。」
「君は気を失っても、この剣を離そうとしなかった。危険だからなんとか取り上げるとこはできたが。それだけ君にとって大切な物なのだろう…。持ってみるかい?」
「はい」
ラルトは剣を俺の膝の上に置いた。
見た目の割になかなか重い。これを持って俺はあの森をさ迷っていたのか。
剣の柄を握る、なんとも言えない心に染みるような感覚だ。記憶は無くとも、体が覚えてるのか。だが俺はまだ幼い、なぜそんな感覚になるのかもわからない。俺の両親は幼い俺に体が覚えるほど剣を教えていたのか?
そう思いつつ鞘から抜く。
漆黒の刀身、刃の部分は薄ら赤みがかっている。
瞬間、俺の頭の中にとある光景が浮かんだ。
『また…私を見つけてね?アレクサンダー…』
そう語りかける、女性の姿。顔はモヤがかかったようで思い出せない。
だが、思い出したことが1つだけある。
「大丈夫…?」
剣を握り固まってしたまった俺を見て、ミシアが心配そうに覗き込んできた。
「ひとつだけ、思い出しました。
僕の名前は、アレクサンダー。アレクと呼んでください…」
名を思い出しただけ、なのになぜか涙が溢れてきた。
この涙の意味はまだわからない。いつか記憶が戻ったら涙の意味もわかるだろう。
名を思い出し、涙を流す俺にミシアとラルトは寄り添ってくれた。泣き止むまで。
その間もエマはずっと扉の影に隠れていた。 エマの人見知りは重症なようだ。
ご覧頂きありがとうございます!
忘却の魔剣士第1話いかがでしたか?
小説を書くのは難しいですね(--;)
異世界物語はたくさんの作品があり、私も大好きなので
( ˙▽˙ ).。oO(どっかで聞いたことあるよな)
なんて展開になりそうで怖いですね!
続きが気になる!気に入った!と思って下されば幸いです!
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次回をお楽しみに!




