護衛旅 ライムの進化? 1
「主さま!」
「主!」
「アリス~!」
どこか遠くで、私の可愛い従魔たちが泣いている…? そう思いながらゆっくりと目を開けてみると、ハクが悲愴感の漂う顔で私を見つめていた。
その表情を見て、ああ、アレは夢ではないのだと思い知る。
ライムの死を悲しんでいるのは私だけではない。ハクも同様なのだと思いながらも思わず呟くのは、もう2度と会うことができない従魔の名前。
「ライム………」
「は~い♪」
「……………」
……どうやら私はまだ夢の中にいるらしい。でも、ライムがいなくなってしまった現実の世界より、ライムが元気に生きている夢の世界の方がずっといい。
目じりに冷たい何かが流れた気がするけど気にすることもなく、ゆっくり目を閉じると、
「アリス! なかないで?」
ライムの困ったような声が聞こえる。舌足らずだけど可愛らしいライムの声だ。
夢でも幻聴でも構わないから、もう一度私の名前を呼んでくれないかなぁ? と思いながら流れる涙をそのまま放置していると、湿った暖かな感触が頬に触るのを感じた。
ゆっくりと目を開けると、目の端に映るのはふわふわな白い毛皮。そして感じるのは、一生懸命に私の涙を止めようと頬を何度も往復するハクの温かい舌の感触。それと同時に、
「主!」
「主さま!」
ほっとしたように私を呼ぶニールとスレイの声。
ああ、やっぱり私は現実の世界に戻って来てしまったらしい。ライムがいなくなってしまった世界に……。
実感すると同時に関を切ったように涙が溢れた。なのに、
「アリス~、もうなかないで? ぼくゲンキだよ!」
現実はどこまでも私に厳しく、そして優しい。
ライムの姿なんてどこにも見えないのに、私の耳には可愛らしいライムの声が聞こえてくるんだ。
感情の制御なんてできる訳もなく、ただただ涙を流している私の頬に、
「アリスはないちゃいやなの~!!」
何か小さくて弾力のあるものがぶつかった。それは一度だけではなく、何度も何度も私にぶつかり、
「ぼく、きちんとごめんなさいするから、おねがいアリス! もうなかないで?」
とても聞き覚えのある可愛らしい声で私の名前を呼んだ。
「………ライム?」
「はぁ~い!」
「……生きてるの?」
「うん、ぼくげんきだよ!」
ゆっくりと頬に手をやると、するりと手のひらの中に入って来る小さくて硬いけど弾力もある何か。それを優しく手のひらに包み、目の間でゆっくりと開くと……、
「ライム……。随分とちっちゃくなったね?」
いつも私の枕やクッションになってくれていた体を、私の手の親指の爪くらいの大きさにしたライムがいた。
「うん! ハクとアリスがくれた、ぼくのあたらしいからだだよ! かわいい!?」
「…ん、かわいい」
大きさと弾力は全然違うけど、その色は初めて会った時と同じ乳白色のスライム。
そして、何より。こんなに可愛らしい声で話すスライムなんてライム以外にいる訳がない!
何が何だかよくわからないけど、
「アリス!」
「主!」
「主さま!!」
ライムが生きている! そう理解した瞬間、体から全ての力が抜けて、すっと瞼が降りてしまった。
なんだかとっても幸せな気分なんだけど、どうしても力が入らないんだ。
だから、ごめん。少しだけ眠らせてね?
心配をしてくれている従魔たちには悪いけど、私は意識を手放すことにする。
次に起きた時には、きちんとたくさんお話をしようね?
とりあえず、今はもう何も考えられないんだ。なんだか体のあちらこちらがとっても痛くてね?
だから話はまた後で。
一方的にそう思いながら、私はハクとライムを胸の中に抱え込み、深い眠りに落ちていった。
体の両側が温かくなった気がしたから、きっとニールとスレイが私を挟んで横になってくれたんだろうな。
ふふっ、なんだかとっても幸せな気分。
おやすみなさい。また後でね!
ありがとうございました!




