護衛旅 集落 20 依頼 1
「「…………」」
「…………」
<キラービーの蜂蜜>を持っているだろう?と言われた瞬間に戦闘モードに入ったハクとライム。
ギルドマスターは2匹の反応で私が蜂蜜を持っていると確信を深めたと同時に、2匹の強い拒絶の意思を感じて困っている。
そして、睨み合い(?)を続けている2匹と1人を前に困ってしまった私……。
私としては「<キラービーの蜂蜜>は(余分に)持っていない」と答えて終わるハズだったんだけど、ハクとライムの反応でそれもできなくなってしまった。
もちろん、ハクとライムは悪くない! 自分たちの大好物をいきなり譲れと言われたら苛立つのは当然だ。依頼人夫妻の手前【複製】して食べ放題、ができないからね。【複製】スキルがバレないように、彼らといる間は、彼らの目の前で巣から採取した量だけしか食べられないのだから。
だから、
「何人かの冒険者たちが採取に行くって言ってなかった? 彼らの成果を待たないの?」
昨日販売したポーションを手に再チャレンジに燃えていた冒険者たちを持ち出してみる。ギルドマスターもその場にいたよね? だから、この話はこれでお終い!
と、遠回しに断ったつもりだったんだけど、
「…………言いたくないが、今のアイツらでは無理だ」
ギルドマスターの悔しそうな声が、話を終わらせてくれなかった。
<キラービー>はとにかく数が多い。今町にいる冒険者でもCランク冒険者やDランクでも実力がある冒険者なら、単体のキラービーなら難なく倒せるだろうが、巣にいる全てのキラービーを倒すのは難しい。
冒険者たちが手を組んで人海戦術を取れば何とでもなるのだが、そんなことをすれば、依頼報酬の割が合わなくなってしまう。
キラービーの討伐を目的とする騎士団などならともかく、彼らは報酬を得て生活をする<冒険者>。そんな手段は当然使わない。
「巣ごとキラービーを壊滅させるのなら、問題なくこなしてくれるのだがな……」
蜂蜜の採取となると、話が違ってくるようだ。
まあ、ね。巣に直接攻撃魔法を仕掛けたら、蜂蜜まで台無しになっちゃうからね。蜜の味が雑になるのに目を瞑るなら何とかなるかもしれないけど……、依頼主は一応貴族。クレームの可能性が怖いかな?
でも、だからといって、私の可愛いハクとライムに悲しい思いをさせる理由にはならない。
朝早くから外で待っていたギルドマスターには申し訳ないけど、お断りさせてもらう。
……つもりだったんだけど、
(では、採取に行きませんか?)
そこに❝待った❞を掛けたのは、それまで黙って話を聞いていたスレイだった。
(わたくし達なら、採取場所まで行って戻るのにそれほどの時間を要しませんわ。主さまの能力があればキラービーの巣を発見するのも難しくありませんし、殲滅も簡単でございましょう?
これからの旅の間、ハク兄さまとライム兄さまが依頼主の目を気にすることなく蜂蜜を召し上がる為にも、もう少し採取しておいてはいかがでしょうか?)
困っているギルドの為、ではなく、キラービーの蜂蜜が大好物になったお兄ちゃんたちの為に、というのがスレイらしい。
スレイの気持ちを聞いたハクとライムも途端に戦闘モードを解除して、嬉しそうにスレイとニールにじゃれだした。
「……もしかして、譲ってくれる気になったのか?」
さっきまでの2匹の様子から、「え、本当に?」とでも言いそうな表情でギルドマスターが恐る恐る口を開く。でも、
「ううん。譲れない」
もしかしたら、時間内に蜂蜜がある巣を見つけられない可能性もあるからね。ここはきっぱりとお断り。
さ~て、気を引き締めて、ギルドマスターとの交渉開始だよ!
ありがとうございました!




