護衛旅 集落 10 でも野営2
今夜のメニューを考えながら竃でお湯を沸かし、キャベツの千切りを始める。
これが今日の食材という訳ではない。ただ単に、考え事をしながらできる作業が野菜の千切りなだけだ。
最近は体力温存の為にインベントリからごはんを出すことが多かったので、今夜は何か新しいものを作りたい。かと言って、何か新しい食材や調味料があるわけでもないし……。
とりあえず手を動かして、大鍋の中にキャベツの千切りを量産しながらインベントリのリストを眺める。
そういえば熊の肉がそのまま入っていたな。
右手は討伐証明に使うから当然除外として………。う~ん……。なんか、梟の頭部分とリアルな手足って、なかなかに見た目のインパクトが強くて食欲を奪われる気がする。
無理に食べる必要はないのだから、この部位は省くとして……。とりあえず、キャベツの千切りは置いておいて、熊肉の解体をしなくちゃね。
マルゴさんがくれた教本もあるし、毛皮はアルフォンソさん&オデッタ夫妻がきっちりと剥いでくれたから、解体そのものは大した手間じゃない。内臓も胆以外は特に高く売れないらしいので、処理する必要もないしね。
地球では、熊は内臓、頭蓋骨、血液などの至る部分が薬用になっていたらしいけど、オウルベアの頭はそのまま梟だし、ここでは血液や胆以外の内臓に使い道はないらしいからライムに処理をお任せしてしまう(やっぱり魔物と動物の違いなのかな?)。
手間なのはいわゆる❝臭み抜き❞だ。どんな料理に使うにしても、下処理しておかないと獣臭くて食べられないと聞いた覚えがある。
とりあえず熊と言えば……、<熊汁>かな? 豆腐やゴボウ、こんにゃくなどの食材がないのが残念だけど、幸いきのこなどはたっぷりあるし。味噌もないけど醤油はあるからなんちゃって熊汁くらいは作れると思うんだ。
メニューが決まったので、さっそく熊汁用の下処理を始めることにする。
お湯を沸かしている鍋をインベントリに収納し、新たに取り出した大鍋をセット。かまどに火が入っているからとりあえず鍋に水を入れ、大急ぎで食べやすい大きさに切った熊肉を鍋の半分くらいまで入れてからたっぷりと水を追加する。
後は水が沸き始めるまでしばらく放置しながら、野菜やきのこの準備なんだけど。
もともと野菜などは時間がある時に色々な料理を想定してカットしていたし、今回アルフォンソさん夫妻のアルバイトとしてたくさんの野菜をカットしてもらっているから、それらをそのまま使えばいい。
というわけで、水が温まるまでの時間が半端に余ってしまった。
……熊肉がまだまだたくさんあるから、もう1品くらい作ろうかな?
同じ料理は楽しくないし何にしようかと考えたけど、もともと熊肉のレシピなんてたくさん知っている訳ではないので、考えるまでもなかった。
<赤ワイン煮込み>一択だ。
でも、この<赤ワイン煮込み>もいきなりワインで煮込めるわけではない。しっかりと下準備が必要なんだよね。
まず、熊肉をブロックに切り分ける。それから赤ワインに玉ねぎとニンジン、それからセロリを始めとする香草を合わせたつけ汁に24時間ほど付け込む必要があるんだ。
と、いうわけで! ワインベースのつけ汁に熊肉をつけ込んだらまたまた半端に暇になってしまった。
まあ、どっちにしても、今日は熊肉料理を食べられないことだけは確定してるから、何か別のごはんを考えないといけないんだよね。
何にするかと考えているうちに、熊肉を茹でている鍋に灰汁が浮き上がり始めた。
……なかなか強烈な臭いとともに、どんどんと凄い量の灰汁が出てくる。灰汁が出なくなるまで取り続けたら、私の食欲もすっかりなくなってしまった。
ハクとライムはどうしているかと思ったら、しっかりと風上をキープして2匹でじゃれ合っているんだから、ちゃっかりしてるよね!
2匹のじゃれ合っている可愛らしい姿でヤル気をチャージしてから、下処理を再開する。
火傷をしない程度に温くしたお湯を入れた鍋の中に下茹でした熊肉を移してから、手でごしごしと熊肉を洗う。
とっても丁寧に灰汁を取ったというのに、びっくりするくらいに灰汁がこびりついていてゲンナリ気分になりながら、お湯を何度も何度も代えながらひたすら熊肉を綺麗に洗う。
ここまでで、一応の下処理は終了。と言ってもまだまだ調理できるわけではない。だって今までの工程はただの臭み抜きの為の作業だったからね。
今度は肉を柔らかくするために新しい鍋に水を張り、熊肉を入れてから3時間ほど煮込む必要がありそうだ。3時間で足りるかは、オウルベアの肉質次第かな?
強い視線を感じて振り向くと、ハクとライムが❝お腹空いた!❞と視線で訴えている。
しまった! まだ今日のごはんを何にするか決まってないよ!!
どうしようかな……?
ありがとうございました!




