依頼人夫妻のアルバイト 2
「ウヒヒッ! 見ろよ~。こぉんな上玉と特上玉のセットなんて滅多にお目にかかれねぇぜ?」
「ああ。こいつらを売れば3年は遊んで暮らせるぞ! それにこの馬! スレイプニルに金のかかっていそうな馬車とくれば、10年はイケる!」
「ぼろっちい方の馬車と男はどうする?」
「あ~……。面倒だから、男は殺していいだろ。馬車の方は積み荷次第だが…、期待できそうにねぇな?」
「な、なあ、味見は? せっかくの女なんだ。ちっとくらい味見してもいいよな!? なっ!」
「あ~? 特上の方はダメだ。値が下がる。だが上玉の方なら構わんぞ。ただし壊すなよ? 壊したらおまえのち〇こぶった切っちまうからな?」
「そりゃあ、無理だ! こいつち〇こだけはでっかいからな! ってことで、最初は俺からな!」
「ば~か! 最初はアニキに決まってんだろう? おまえはそっちの馬にでも突っ込んでろよ」
「そりゃいいや!」
「「「「ギャハハハハハハッ」」」」
………黙って聞いていればなんとも下品な会話が続き、げんなりしてしまう。
こうなる前に、さっさと倒してしまいたかったんだけどね? でも、
「はっ! おまえらちゃんとわかってるじゃねぇか。 味見してやるからとっとと女の服をひんむいて股開かせろ!」
この臆病なくせに偉そうに振舞う男が近寄って来るのを待っていたんだから仕方がない。
まあ、待っていた男が無事に近寄って来てくれたんだから? これ以上耳の穢れになるような会話を大人しく聞いてやる必要もないよね。
ハクに目配せしてから、
(【アイスニードル・クインティプル(5かい)】!)
無詠唱で魔法を放つ。
いつもなら使い勝手のいい【ウインドカッター】なんだけど、今回は蜘蛛を相手に練習した【アイスニードル】を使用した。
「ギャアアアアッッ!」
アイスニードルの5発同時発射は初めてだったせいか、4発は無事に盗賊たちの頭を貫きヤツらに悲鳴を上げさせることもなく倒すことができたけど、最後の1発は盗賊の肩に刺さり、耳障りな悲鳴と血しぶきを上げさせてしまった。
依頼人夫妻がショックを受けていないかと心配したんだけど、
(まかせるのにゃ~♪)
❝アニキ❞と呼ばれる男がのこのことここまでやって来て、私が我慢を止めたことを察したハクが張ってくれた結界に守られていて無事だった。初めてみる色付きの結界のお陰で、依頼人夫妻には何も見えていないし聞こえていないはず。
突然倒された仲間たちの姿に狼狽していた残りの盗賊たちには【ウインドカッター・クインティプル(5かい)】をお見舞いする。
盗賊という荒くれ仕事で生きてきた男たちはさすがに異変に気が付いてこちらを攻撃しようとしたヤツもいたけど、油断しきっていた上に至近距離での無詠唱攻撃を受けてはひとたまりもなかった。
自信満々で私たちを獲物&戦利品扱いしていた男たちはもう息をしていない。残っているのは最後に現れた❝アニキ❞と呼ばれた男だけ。
自分だけしか生きていないことを確認して、何とか逃げ道を探しているだろう❝アニキ❞に向かって、私は無邪気に見えるように内心では気合と根性を入れた微笑みを浮かべて見せた。
「さて。そろそろアジトに招待してくれないかな?」
せっかく襲ってくれたんだから、盗賊たちが貯め込んだお宝も貰っておきたいじゃない?
その為にこいつが来るのを待っていたんだから、もう、我慢なんてしてあげないよ?




