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初めての馬車旅 17

【アースウォール】で土の壁を作ってはインベントリに収納する。 気を付けるのはどこの土を使って壁を作るのかを意識するだけの穴掘り作業は、思ったよりも簡単に進んだ。


 盗賊たちを埋めても獣などが掘り起こさないようにある程度の深さを持った穴をいくつか作り終えて、装備品などの剥ぎ取り作業に加わろうとすると、後ろから❝ポン❞と肩を叩かれる。


「お疲れさん! アリスはここまででいいぞ。 飯を作るのに、また夜中に起きているんだろう? 今のうちに休んでおけ」


 振り返ると「言うことを聞けよ?」とばかりに、満面の笑みを湛えたイザックが馬車を指さしていた。


「少しでも早く終わらせて出発した方が、いいんじゃないの? 人手は多いほうがいいでしょ?」


「ああ。 だからアリスはペーターと一緒に昼寝をしていてくれ。 そうしたらペーターのおふくろさんが剥ぎ取りに参加できるだろう? 1万メレ稼いでもらおうぜ。  …だめか?」


「あまり女性に勧めたい作業ではないから私がする」と言いかけて、ペーター君のお母さんが作業に参加できないことを残念そうにしていたことを思い出した。


 旅の途中の臨時収入を得る機会は貴重だとディエゴも言っていたし、本当に参加したがっているのなら、手伝ってもらおうかな?  


 イザックの提案に頷いて馬車の方に向かうと、声が聞こえていたらしいペーター君のお父さんが嬉しそうに頭を下げてくれた。 この作業に対する忌避感はないらしく、奥さんに手伝ってもらうことも本当に問題無いようだ。


 馬車に乗り込んでペーター君のお母さんに話をすると、お母さんはとても嬉しそうに笑ってお礼を言ってくれる。 


 ペーター君に「お姉さんの言うことをよく聞いて、大人しくしてるのよ!」と言い置いて出ていく後姿を見送りながら、少し遊んであげようかな~と思っていると、


(アリスは早く寝るにゃ!)

(はやくはやく~!)


 従魔たちに睡眠を促された。


(でも、ペーター君がまだ眠たくなさそうだし…)


 と言っても、


(大丈夫にゃ! アリスが寝たら一緒に寝るにゃ!)

(ぼくたちがみてるよ~。だいじょうぶ!)


 従魔たちは譲ってくれない。 仕方がないからペーター君をお昼寝に誘ってみると、ペーター君は嬉しそうに笑って私のお腹に抱きついてきた。  ……特に問題はないみたい。


 ペーター君をだっこしながら目を閉じると、いつものようにハクとライムが頬におやすみのキスを落としてくれてから、ライムはもそもそと私の枕になり、ハクはそのまま首の所で丸くなった。


 暖かいふわふわを首元に感じて、気分が穏やかになってくる。  先に眠ったペーター君の寝息を確認して、私も眠りについた。










 ハクに起こされて馬車の外に出てみると、気が付いたイザックが近寄って来た。


「眠れたか?」


「うん。ぐっすり! イザックは大丈夫なの?」


 昨夜起きていたのはイザックも同じなので少し心配なんだけど、「馬車が動き始めたら寝るから心配ない」と余裕の表情で笑っているのでそれ以上は聞かなかった。 


 戦利品は私が一旦預かることになったので、数か所にまとめられている装備品に【クリーン】を掛けて片っ端からインベントリに収納すると、鋭い舌打ちの音が聞こえた。……サルだ。 


 全部収納できるわけがないと高を括っていたらしいけど、しっかり全部回収したからサルの取り分は残っていない。 まるっきり分け前がないのも可哀そうだと思うけど、<冒険者>間のルールや常識がわからない私はイザックの判断に任せて、ここはスルーしておく。


「よし、こんなもんだろう。 お~い、終わったらアリスの前に並んでくれ!」


「こんなに汚れるまでありがとう! 【クリーン】」

「お疲れさん! お陰で早く済んだよ。受け取ってくれ」


 盗賊の死体を埋め終わった人から順番に【クリーン】を掛けて報酬の1万メレを渡すと、


「クリーンって凄いな! 血の汚れまで落ちてるぞ!」

「良い稼ぎになったよ。ありがとうな!」


 と笑顔で口々にお礼を言ってくれた。 Win-Winって気持ちがいいね!

 

 ……もしもサルが手伝っていたら、なんて言ったのかな?なんて考える私は意地悪なのかもしれない。









 襲撃場所から少し離れた所に繋がれていた馬3頭を回収し、今夜の野営予定地に着いたのはもう辺りが暗くなった後だった。


 遅れた時間を取り戻す為にほとんど休憩も取れなかったから、みんな疲れた顔をしている。 


 近くの木陰で身を潜めていたハウンドドッグをサクッと退治して「もう出てもいいよ」と声をかけると、馬車から降りてきたみんなの顔に安堵の色が広がった。


「今からは俺たちが護衛を引き受ける。 安心して休んでいてくれ」


 聞き方によってはサルたちに喧嘩を売っているように聞こえるけど、誰も気にした様子がないから大丈夫かな。 


 とりあえず敷物を敷いてゆっくりとくつろぐ。 この姿をみんなに見せることが護衛の仕事になるんだから面白い。 


 イザックには「これが当たり前じゃないからな?」と苦笑されたけどね。


 私たちの様子を見て、安心したようにくつろぎ始めたみんなを眺めながら今夜のメニューを考える。


 焚き火を準備しながらチラチラとこちらを見ているディエゴと目が合ったけど、特に何も言わないのでたまたまなのかな? …放っておこう。


「今夜のごはんは何を食べたい?」


(オーク!にゃ)

「コメ!」

(あいす!)


 インベントリのリストを眺めながらみんなのリクエストに沿うものを探してみる。  


 オークカツとご飯にスープ、デザートにカフェオレアイスってところかな? ああ、千切りキャベツの他に、カッテージチーズを使ったサラダもつけようか。


 辺りを見るとみんなはまだ焚き火の火でお湯を沸かしたりしているけど、アイス以外をテーブルにセットし終わった私たちは先に食事にさせてもらおう。


 ❝いただきます❞をすませてハクとライムの様子を見ると、いつも通りの旺盛な食欲を見せてくれる。 馬車旅でのダメージはなさそうだな。


 安心して私も食事を始めると、ゆっくりとディエゴが近づいてきた。


 ……食事中に、いったい何の用かなぁ?


ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] サルが露骨~(テンション上げ気味に) ここへ至るまでに色々暴露されたから、開き直っちゃったのかな?
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