冒険者ギルドで売られた喧嘩 3 “見張り”が付いた♪
“ダビは【鑑定スキル】を持っていない”
これが協力してくれた【鑑定士】達の一致した回答だ。
鑑定の前にポーションで腕を治療されていたダビは両手を天に突き上げ、得意げに自分の無実を周りに言い立てて私を責め、ギルドマスターは苦虫を噛み潰したような表情をしている。
私を信じてくれた冒険者たちは、ギルドとの関係にヒビを入れた私を睨みつけたり、溜息を吐いたり。
「【鑑定士】の皆さま、ご協力をいただきありがとうございます。皆さまは、あと2回の鑑定を行う魔力を残されていますか?」
周りの反応は目に入っていても、私の笑顔は崩れない。 鑑定士さんたちの返事が「全然大丈夫・余裕」だったこともあり、何の焦りも感じない。
「では、私が合図をするまで、そのまましばらくお待ちください。 合図をしましたら、あと2回だけ、あの男の鑑定をお願いします」
私のお願いに少しだけ訝しげだったが、ギルドの鑑定士のネレアさん以外の2人は快く了承してくれた。
「ありがとうございます。 では、【鑑定】…、【鑑定】…、【鑑定】…、【鑑定】…、【鑑定】……」
私はダビに対して【鑑定】を掛け続けた。
余裕だったダビが、【鑑定】を重ねるごとに少しずつ表情をこわばらせ、焦りを浮かべ、チラチラとドアへ視線を投げ始めたことに気が付いた冒険者たちが、ドアや窓の側に移動して逃げ道を塞いでくれた。
「【鑑定】…、【鑑定】…、【鑑定】……、お願いします! 【鑑定】!」
「「【鑑定】」」
商業ギルドの鑑定士さんと道具屋の店主さんは、すかさずダビに対して【鑑定】を行ってくれた。
「…ある? 【鑑定】! やっぱりある!」
「ああ、間違いない! この男は【鑑定】と【隠蔽】のスキルを所持している!」
2人の声を聞いて、ギルドの鑑定士のネレアさんも慌ててダビに鑑定を掛けた。
「…嘘!! ……そんな」
ネレアさんはダビの鑑定結果にショックを受けている。雇用時に“問題なし”とした判定が間違っていたのだから当然だ。それでもネレアさんはギルドマスターに正しい報告をした。
「ギルマス…。ダビは【鑑定】と【隠蔽】のスキルを所持しています。 見抜けなくて申し訳ありません…」
「間違いないのかっ!?」
「間違いありませんっ!」
泣き伏したネレアさんや、一転した鑑定結果にギルド内が騒然とした隙にダビが逃げ出そうとしたが、近くにいた冒険者たちに取り押さえられた。 あ、ついでに殴られてる…。見なかったことにしておこう。
「わ、わたしは嵌められたんだ! あの女が何か細工をしたんだ! あの女を捕まえてくれっ」
「どうやったら、3人の【鑑定士】の目を欺けるんだ!? これ以上の言い逃れをするな!」
ダビは懸命に自分の無実を主張しているが、誰もダビを信じない。
それでもダビは、さっきまで絶対の味方だったギルマスに殴られても、しぶとく自分の無実を訴え続けている。
…簡単に認められないほどの余罪があるってことかな?
「わかった! 裁判所に行って、『審判の水晶』で真偽を問おう!」
ダビが諦め悪く、
「あの女が【隠蔽】のスキルを持っているんだ! それで私のスキルを書き換えたんだ! 私は嵌められたんだ!!」
と叫んだら、ギルマスがギルド中に聞こえるような大声で宣言した。
「審判の水晶って…?」
何だろう? と首を傾げていると、女性職員さんが教えてくれた。
「真偽を判断する水晶よ。 水晶に手を置いて誓ったことが真実なら何も起こらないんだけど、虚偽だったら水晶が光って、取得していたスキルや、突出したステータスを全て奪われるの」
「へぇ。便利なものがあるんですね? だったら最初から使えばよかったのに」
思わず呟くと、女性職員さんが苦笑しながら教えてくれた。
「使用料が高いのよ。1回で300万メレもするの。軽々しくは使えないわ」
「たっか! 本当に高いですね!!」
私が水晶の使用料金の高さに驚いている間に、どんどん話は進んでいた。
「これより使者を立て、裁判所に申請手続きを行う! 何事もなければ12時の開廷を予定する。おまえもそれでいいな!?」
ギルドマスターは私に向かって、“異論は認めない”とばかりに凄むように聞いた。
「ダメよ。昼に予定が入っているの。 長引かないから、14時以降だと確実に時間が取れるわ」
金物屋さんとの約束があるので時間変更を願い出ると、
「ほら、見ろ! この女は逃げる気だ! 私が正しいんだ! この女は裁判で嘘がばれるのが怖くて逃げるんだ!」
ダビが、ここぞとばかりに責め立ててきた。
「……逃げるのか?」
ギルドマスターまでが不審そうに私を見る。 予定が入っているのが、そんなにいけないことか!?
「逃げないわよ!
冒険者の皆さん! 今ここにいる人の中で、自分以外で一番信頼できると思う人を指差してもらえますか?」
いきなりのお願いだったけど、それぞれが信頼できる人を指差してくれた。
大きく3人に集まっている。
「入り口を塞いでくださっている、バトルアックスを担いだ渋いおじさま!
先ほど道具屋の店主さんを呼びに行ってくださった、親切なおねえさま!
窓からの逃亡を警戒してくださっていた、銀の髪が美しいおにいさま!
この後の予定がなければで結構です。 私が逃げないように見張るために、一緒に来ていただけませんか? できたらその後の裁判にも同席していただきたいのですが…。 この町の行政がどこまで信じられるかわからないので…」
信頼が集まっていた3人を指名してお願いすると、3人とも快く頷いてくれた。
「ありがとうございます。とても心強いです!」
「ちょっと待ってくれ! そういうことなら俺も連れて行ってくれ!」
3人にお礼を伝えていると、もう1人、男の人が立候補してくれた。 3人ほどではないが、信頼を集めていた人だ。
「Bランクの…」
誰かの呟きで、冒険者ランクだけはわかったが、立候補してくれた理由がわからない。
「パーティーがこの町で受けた護衛依頼で、襲ってきた盗賊たちが俺達のスキルやステータスを知っていたふしがある。真実をこの目で確かめたい」
「確か、パーティーメンバーが…」
「ああ。後遺症が残って故郷に帰った奴がいる。 …死んじまった奴も、な。」
ダビに鑑定結果を漏らされたかもしれない、という事か。
「わかりました。では一緒にいらしてください。 私のことも見張ってくださいね?」
「感謝する! 逃げないように見張りもきっちりするから、安心しろや!」
前半は私に。後半はダビに向かって言った。 字面だけだとダビの味方のような言葉だが、表情が裏切っていた。
「ああ、俺たちもしっかり見張ってやるよ! 安心しなっ!」
渋いおじさまもダビに向かって言ったが、こちらも表情が裏切っている。
(4人とも強そうだし、安心にゃ~♪)
(ん?)
(しっかり守ってくれそうにゃ♪ アリスはまだ人間を殺したことがないから、ちょっと心配だったのにゃ!)
(………! ああ、そういうこと!?)
おじさまたちは、ダビの仲間の襲撃から、私を守ると言ってくれているらしい。
親切なおねえさまと銀の髪のおにいさまも、私に向かって力強く頷いてくれた。
「ありがとうございます! 心強いです! 本当に…」
私は改めて、4人の冒険者たちに頭を下げた。
ありがとうございました!




