表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/19

日常が過ぎていきました

 その日からアイラーゼが付きまとうようになった。


 約束だからと渋々空き地に行くと、いつも以上にテンションの高い彼女を発見。


「き、今日もよろしく頼むわ!」

「あ、はい」


 なぜか初日は緊張した様子を見せていたけど。

 しかし次第にその緊張も溶けていった。


 最初こそバトルパートに入っていたが、三日ほど経って方針を変えた。

 だって疲れるもの。

 もちろん三日とも僕が勝ったけど。


 ちなみに勝った、と言っても実はそれは魔術ありの話。

 正直魔術を使わずに戦闘すれば勝てる自信はない。

 それだけアイラーゼの武術の力量は子供ながらに高い。

 僕も子供だけれど。


「ねえ、レイ。次は何をするの?」


 彼女が首を傾げてそう聞いてくる。

 肩程度まで伸びた髪が垂れる。

 普通にしとけば可愛いのに。そう思わずにはいられない。


「アイラーゼは何がしたいんですか?」

「……むぅ。アイラって呼びなさいよ」


 名前を呼ぶと不機嫌そうな顔。

 どうやら彼女は僕に愛称で呼んで欲しいらしい。

 彼女は僕をレイと呼ぶ。

 そして僕にはアイラと呼ぶことを強要してくる。

 もっとも、一度も愛称で呼んだことはないけど。


 それはともかく。

 僕達は現在、空き地にてのんびりしている。

 最近は戦うのではなく、稽古に付き合ってもらったり魔術を見せたりしている時間が多い。


 例えば僕がウォータボールを三つほど出して宙でクルクル回していると、アイラーゼはキラキラした目で僕を見てくる。


「すごいじゃない! それ、どうやるの!?」

「ウォータボールの魔方陣に数量指定の線を加えただけですよ」

「……意味がわかんない」


 まあ、簡単に言えばウォータボールの魔方陣に二本線を加えた形で魔紙に刻んだってだけ。

 でも魔術師でない彼女にそれを言っても通じはしない。

 そして意味がわからなければ、彼女は不機嫌になる。

 それを見て違う種類の魔術を見せて興味を惹かせる。


 もちろん飽きる時が来る。

 その時は武術について教えてもらう。

 武術の腕は正直彼女の方が上だ。

 だからゴーラルム式体術に関して、コツのようなものを教えてもらおうとした。


「アイラーゼの『速撃』って僕のよりも早いですよね。何かコツのようなものを教えてください」

「コツ? そんなのグゥっと溜めてドンッて放つだけでしょ」


 ごめん。

 全くわからない。

 彼女はどうやら感覚派と呼ばれる種族のようだ。


 そして一通りして疲れたら魔術に走る。

 その繰り返しだ。


 ちなみに彼女の修めてる武術は二つ。

 ゴーラルム式体術、五級体士。

 ヴェルムズ式銃術、五級銃士。

 それらを彼女は二年程度で習得したらしい。

 これは一般から見れば優秀な方だ。

 しかも六歳児だということを考慮すれば、天才だと言える。


 さらには武装魔術を使っている様子も見せている。

 どうやって覚えたのかと聞けば、昔にある人から教えてもらったとのこと。

 そのある人というのはいったい何者なのだろうか、と多少興味が出てきてしまう。

 なにせここまでハイスペックな六歳の少女を育てたのだ。


「ふふん。またいつでも教えてあげるわよ」


 得意げな胸で、幼いぺったんこの胸を張る。未来には期待してもいいのだろうか。


 そんなこんなで、一日が平和に終わっていく。




 日常は緩やかに過ぎていった。


 僕は毎日空き地に向かう。

 アイラーゼとの約束だから。

 それに、最初こそ面倒だったが、会うたびに彼女と会うことへの抵抗感も薄まってきている。

 最近ではそこまで嫌でもない。

 心の余裕が大きくなったってことかな。


 その日もまた夕食を取り、本で知識を蓄えては寝ることにした。





 その次の日。

 シルーグ都市にて無残な少年の死体が発見される。

 それにより謎の惨殺事件の噂がシルーグ都市中に広まることとなった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

他作品

ただの欠陥魔術師ですが、なにか?

よろしければ評価 して頂けると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ