陰陽座
カラオケで陰陽座。陰陽座で育った私には当たり前のことでした。
しかしこの時、同席していた9人は陰陽座を知りませんでした。隣の部屋にいた10人の中にもこの曲を知っている人はいませんでした。バジリスクで有名になった甲賀忍法帖を知っている子が1人いただけでした。
歌い始めから終わりまで、私はずっとアウェーでした。女性ボーカルの誰も知らない曲をスーパーハイテンションで歌う私はもはや妖怪の類。皆たい焼きを食べています。
この曲が終わると、その時流行っていた曲のイントロが流れました。その瞬間、たい焼きお通夜モードだった一同が立ち上がり、タンバリンを鳴らし始めました。
マイクを持っていない子もみんなで歌う一体感。なんでしょう。私はカラオケには向いていなかったのでしょうか。
次に私が歌ったのはラウドネスのクレイジーナイトでした。痛いヤツだなと思われていたかもしれません。でも好きな曲歌うのがカラオケでそ。接待じゃないんだから好きなの歌ってもいいでそ。
終盤、私はスマホをなくしました。
その頃スマホにロックをかけていなかったので、何も番号を入れなくても開いてしまう状態でした。
(ヤバい、勝手に開かれて○○とか×××とか見られたら、この場の全員を殺すしかなくなってしまう!!!)
パニックでした。
みんなが盛り上がっている中、必死にスマホを探す私。
我々20人のリーダー的存在だったジャイアンみたいな子に知らないかと聞いてみたところ、「知らん知らん」と返ってきました。
今考えるとこれは「せっかく盛り上がってるのになんやねん知らんわ、勝手に探しとけ」だと思うのですが、先述の通り焦りまくっていた私には「ふふ〜ん、七宝ちゃんのスマホなんて知らないね〜。知らないねぇ〜(ニヤニヤ)」という、すでに私のスマホを見つけていて、こっそり覗いた上でのからかいに感じてしまったのです(すごい被害妄想)。
それを聞いた私はジャイアンの顔を引き寄せ、「てめぇ殺すぞ」と脅しました。ジャイアンは「えっ」と言って固まってしまいましたが、すぐにみんなに私のスマホを探すように言ってくれました。
15秒後、私が座っていたソファとジャイアンのソファとの隙間に落ちているところをジャイアンによって発見されました。
私はみんなに、そしてジャイアンに深く深く謝罪しました。
これが私の人生唯一のやらかしでした。これ以外は一切やらかしていません。些細なミスも犯したことはございません。
この後みんなで焼肉に行ったのですが、パフォーマンスなのかジャイアンが生肉を食べまくり、翌日死にかけていました。無鉤条虫にでもやられたのでしょうか。
おそらく今読んでいるあなたたちは「お前ヤバすぎだろ」と思っていることと思いますが、想像してみてください。自分のスマホに鍵がかかっていないことを。
あんな動画やあんな画像がみんなに見られてしまうのです。その場の半分は女子だったので、それはもうパニックですよ。
「スマホにやましい画像は無い!」と言い放ったそこのあなた! じゃあパソコン! お前のパソコン生放送すっぞ! いいのか!
え⋯⋯いいの?
え? そのほうが興奮する⋯⋯?
なんだお前!!!




