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三浦按針

 木村征伐が事実上徳川家の敗北に終わったことで、家康は家中の再編と改革に迫られていた。


 木村家の虎の子である水軍。

 あれを野放しにしていては、何をしようにも木村水軍が家康の領地を攻撃してくるため、戦どころではなくなってしまう。


 木村水軍の攻略をしないことには、木村家の攻略はありえない。


 家康はそう確信していた。


 だが、木村家の船は南蛮人の使っていたものと同じで、日本の職人では造ることは難しい。


 旧来の安宅船とは違い、南蛮船は根本的に構造の違う船らしい。


 日本には南蛮船を造れる技術者もおらず、居たとしても木村が領内に囲い込んでいる。


 木村も南蛮船が切り札であることはわかっているため、万に一つも技術を漏らしはしないだろう。


(いや、まてよ……?)


 家康の中に、引っかかるものがあった。


 あれはたしか、半年近く前のことだった。


 豊後に漂着した異国の船を拿捕し、秀頼の承諾を得て、領内に匿っていた。


 彼らであれば、吉清の持っている船と同じものを造れるかもしれない。


 さっそく、乗組員たちに指揮をさせ造船所を建設すると、その出来栄えに感心した。


「おお……これほど大きな造船所であれば、木村と同じ船を造れるやもしれん」


 褒美を取らせるべく責任者を呼ぶと、家康は自ら労いの言葉をかけた。


「大儀であった」


 建設を主導した男が、うやうやしく膝をつく。


「ううむ……お主の元の名では、ちと呼びにくいな……」


 そこまで言って、家康は彼に与える最初の褒美を決めた。


「そうじゃ、儂が名付けてやろう……。姓はお主の領地がある“三浦”、名はお主のかつての職である水先案内人の意をとって、“按針”」


 新たな姓名を口の中でつぶやき、やがてしっくり来た様子で、家康がニヤリと笑った。


「これより、お主の名は“三浦按針(みうらあんじん)”じゃ」


 この日、イングランド人船員ウィリアム・アダムスは、日本名、三浦按針に名を改めたのだった。


「イエス、ボス!」

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― 新着の感想 ―
[一言] そもそも船の問題じゃないんだけどな 貿易や植民地といったこの時代のヨーロッパ諸国が持っていた価値感を有していない時点で閉じこもることしかできない
[気になる点] 三浦按針は少年時代は船大工の下で働いていましたが、若いうちに海軍に入って運用側でキャリアを積んだ人物です。一人前の船大工としての経験はありません。 ある程度の知識はあるでしょうが、日…
[一言] こんばんわ、今頃木村家は蒸気機関を開発真っ最中なんだろうな。
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