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ハムスターのハッピー

作者: 岩井みつき

掌編小説書きました!

カラカラ……。

またこの夢を見ていた。

ペットのハムスターを亡くしてから十五年以上が経過しても、私の記憶の中ではそのハムスターは今も元気に回し車を回し続けている。

背骨に沿うように濃いグレーの模様が浮かび上がっており、腹部は白い、ジャンガリアンハムスターというネズミの一種。

ハッピーを引き取ったのは私がまだ小学生に上がったばかりの六歳か七歳のころ。同じ小学校に通う友人が飼っていたハムスターが出産したといい、私は母と共にその友人の家を訪れた。私は、小さな子ハムたちがゲージの中で忙しなく動き回っているのを見ていた。あまり大きさは変わらないけど、その中で一番小さいであろう一匹を選んだ。それがハッピーとの出会いだった。

幼かった私にとっては初めてのペットで、その小さい命を手のひらに乗せた感触は今でも鮮明に記憶されている。くすぐったいし、じっとしてくれないから、落とさないように手でコントロールするのが大変だったけど、ゲームみたいで楽しかった。

この夢を三ヶ月に一度は見ていた。特に休みの日の前日、予定がないからと二度寝、三度寝と繰り返すうちに眠りが浅くなっていたとき、ハッピーとは夢の中でしばし再会を果たす。ゲージにも柵にも囲まれてない開けた場所で、ただ一つ、回し車だけが置いており、その回し車を小さい体の小さい手足で一生懸命走っている。もはや走るのが早すぎて白とグレーの塊が浮いているようにも見える。

カラカラ……。

こういうとき、大抵目が覚めると涙を流していることが多い。

きゅうりやキャベツを美味しそうにむしゃむしゃと食べて、砂場で砂を舞い上がらせながら背中を擦っている姿や、大きな段ボールの中を辺に沿って走り回っているハッピーを今でも思い返しては、私はやれるだけのことをやっていた、と記憶を上書きして、嫌なことには見て見ぬふりをしていた。

カラカラと音が鳴っているのはひまわりの種の殻が回し車の上でハッピーと一緒に回っているからである。早くとってあげたい。あと、給水機が壊れかけていたことを知っていても直さずにそのままにしていてたことも謝りたい。あと、可愛い姿を撮りたくてフラッシュをたいてカメラを向けてしまったことも謝りたい。そのせいで年をとったハッピーの目の中が白くなってしまったと思っている。テレビの近くにゲージを置いていたから、きっとうるさかったかな。もっともっと、ハッピーにとって快適なハムスター生を送れるようにしてあげればよかったと、ごめんね、と心の中で罪の意識がこだまする。

カラカラ……。

ハッピーと言葉を交わすことはできないけど、元気に回し車を回しているところを見ると、少しでも幸せに逝くことができたのかなと思う。必死に走っているけど、距離にしたら一センチも移動していないから、なんか、哀れに思って笑えてくる。ハッピーはいつも家族のアイドルで、こうやってみんなを笑わせてくれたな。ありがとう、私に生き物を飼うことの責任と経験と愛情を学ばせてくれて。それから私の家でペットを飼うことはなかったけど、次飼うとしたらジャンガリアンハムスターを一匹、迎え入れて、うんと甘やかしてあげるんだ。

目が覚めると、いつもと同じ寝室で、私の目には涙が溜まっていて、シーツが染みて濡れていた。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

小説家目指してます!どなたかご教授願います!よろしくお願いします!

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ハッピーが安らかに眠ってくれていることをお祈りします。ありがとうございました!
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