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第93話 対イスカリオン会議

「じゃが、わしの娘とお前の息子が協力して、戦っておる」


「それもむかつく」


 考古学者の父と、その父をかつて国外追放した皇帝が再会した。

 ふさしぶりの再会だが、やはりそりが合わない。


「お前の息子がわしの娘を連れ回しとるんじゃろうが!

 むかつくのはこっちの方だ!」


 遺恨を水に流そうとしていた皇帝イサキオスだったが、結局怒り出してしまった。

 しかし、連れ回すなんて人聞きが悪い。


 にらみ合う二人。

 仲裁しようにも、皇帝相手に意見をできる人間はそういない。

 と、思っていたが……、


「オレのせいでケンカしてるのか?」


 悲しい表情で皇帝を見上げていたのはウガガウだった。


「い、いや、お前のせいではないぞ……」


 つぶらな瞳で見つめられた途端に、あたふたし出す皇帝イサキオス。

「征服王」も愛娘には敵わないようだ。


「ケンカは……、してない」


 僕の父、レイナードも目をそらす。

 さすがに大人げないと気付き、クールダウンする。

 これはウガガウの大手柄だ。


「じゃあ皆さん、会議を始めましょうか!」


 僕はすかさず話を進める事にした。


「うむ、神官長も来ておる。

 さあ、こちらへ」


 王様の言葉でみんな城内へ。


 豪華な場内の移動中、僕はエレインさんやルナテラスさんと再会した。


「元気そうだな、リンクス」


 長い金髪の筋肉質な男性、若き勇者エレインさん。

 仲間と共に、魔王ティフォンを倒した。


「一時はどうなる事かと思ったよ」


 その隣には栗色の髪の皮鎧の女性。

 レンジャーのルナテラスさんだ。


 エレインさんとルナテラスさん、一時期は別れていたが相思相愛の仲だ。

 魔王ティフォンを倒した後、結ばれた。


「もっと早くあなたに連絡できたらよかったのにって後悔してた」


「いえ、あんなに早いタイミングで手紙をくれただけで、すごいですよ」


 ルナテラスさんがレンジャーの特技で鳥に手紙を結び付け、飛ばしてくれた。

 グラムに捕らえられた後ではあったが、魔王出現の直後と考えると驚異的な速さだ。


「これはマリスの読んだ未来のおかげなの」


「前日に、赤い稲妻を纏った何者かの襲撃を予感したので、あの日は調査を中止したのです」


 緑色のローブを纏った、白い長髪と切れ長の目の男性が近づいて来る。

 勇者一行の魔法使い、マリスさんだ。

「神算鬼謀」のユニークスキルを持つマリスさん。

 百手先を読む能力で未来を見通す。


 その能力で堕天の魔王の出現の場に鉢合わせずに済んだようだ。


「正体が堕天の魔王である事は分かりませんでした。

 しかし、その存在があなたと対峙するイメージが見えたので、ルナテラスに連絡をお願いしたのです」


「ナノマシン兵器の事も知っているんですか?」


「はい、国際連邦センターで設計図を見つけました」


 設計図……!

 その設計図と、僕から奪ったリソグラフィの魔法によって、ナノマシン兵器は作り出されるのだ。


「ですがわたしはその設計図を燃やしたのです」


 あれ?

 じゃあもうナノマシン兵器は作れないんじゃ?


「それでも見える未来は変わらなかった。

 まだ脅威は去っていないと思っています」


「そうですか……」


 設計図は他にもあるのかも知れない。

 マリスさんの神算鬼謀が危険を告げている以上、ナノマシン兵器の危険は残っていると見るべきだ。


「難しい話は知らんが、戦いは俺に任せろ」


 強面の屈強な男性に肩を叩かれる。


 勇者一行の戦士、ガレスさんだ。

 斧を扱わせたら右に出る者のない戦士だ。

 その上でユニークスキル、金城鉄壁を持ち、鉄壁の防御力を誇る。


 勇者一行の四人が揃っている。


「こうなると堕天の魔王もエレインさんがやっつけちゃうんじゃ?」


 と、僕は言ってみたが、


「いや、どうやらティフォンとの戦いで、勇者の武具の力は弱まっているようだ」


 エレインさんは渋い表情だ。


 それにイスカリオン本人も刃物は効かないと言っていた。

 天使でもある魔王、イスカリオンだけは他の魔王のようにはいかないのかもしれない。


 そして、大広間に特別に用意された会議室に僕達は到着した。


 王国の大臣達がずらりと着席している。

 光明教の司祭達も、試練の神殿の神官もおそらくその中にいるだろう。


 帝国の大臣達と黒騎士団。

 僕に会釈してきたのは面識のあるクレーヴェ公爵だった。

 無事なようで安心した。


 勇者一行と僕達も、大広間入り口手前の後ろの方の席へ。

 そして、僕の父、レイナード=リーグル博士は王様の隣へ。


 いよいよ打倒堕天の魔王の会議が始まる。


「まずは残念な報告からです。

 ナノマシン兵器を阻止する手段だが、発射された後にはもうありません」


 僕はすでに聞いていた事だが、会場には緊張が走った。


「この兵器の性質は、触れたものを魔素に変える事にある。

 人も物も魔素に分解される。

 着弾の時点でナノマシンの性質が変化するのだ」


 そういうプログラムがされている、と父は言ったが意味はよく分からなかった。


「発射される前に破壊すればどうだ?」


 王様が尋ねる。


「それならば魔素への分解は起こらない。

 そうでなければ容器まで分解されてしまいますからな」


 少し希望が見えた、と思ったが父は首を振った。


「イスカリオンは世界を人質にして天界の扉の解放を迫る気でいる。

 と、言う事は恐らく奴は、世界中のどこにでもナノマシン兵器を発射する手段を持っている。


 考える時間はたっぷりあったろうしな」


 神の側近,天使長だった、最古の魔王。

 どれほどの時間を生きてきたのか、想像もつかない。


「この大陸の危機を脱する方法は、準備を終える前に奴を倒す事以外にない。

 わたしはそう考えます」


 僕はすでにその話をされている。

 ここからが重要だ。


「幸い、800年前と、1200年前にも地上を手に入れるために現れたイスカリオンを、撤退させる事に成功している。

 そこで今回は過去の歴史に詳しい方々をお呼び頂いたのです。


 光明教と魔女教の門外不出の大魔法。

 堕天の魔王に対抗するにはこれらを持って臨む他ないと考えます」


 そう。

「英霊騎士団」と「魔女の祝祭」、これらだけがイスカリオンを撤退させた実績のある攻撃手段なのだ。


「ここからは専門家のお二方に説明を任せましょう」


 父はそう言って着席した。

 代わりに立ち上がったのは、試練の神殿の神官長だ。


 ついに高威力、広範囲の大魔法の全貌を知る時が来た。

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