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第74話 クレーヴェ公爵の弁明

 帝国の和平派の方々の会議の議題は、誰がウガガウこと、テレジア皇女と結婚し、次期皇帝となるのかだった。


 それは公爵家同士の権力争いであった。

 ウガガウを45歳や58歳の貴族と結婚させようなんて話は、黙って見てる訳にはいかない。

 そして、これはクレーヴェ公爵が一枚嚙んでいる可能性もある。


 僕は慎重に公爵の出方を見ながら話を進めようと思った。


「あなたは、自分達の権力のために、ウガちゃんをここに連れて来たんですか!?

 正直に答えてくれないと斬りますよ!」


 のだけど、僕が話かける前に、カエデがクレーヴェ公爵に詰め寄っていた。


「ど……、 どうされました? カエデ殿?」


「お家争いの話にしても気持ち悪過ぎます!

 見損ないました」


 まくしたてるカエデ。


「な、何の話ですか?!」


 怒りのスイッチの入ったカエデにはクレーヴェ公爵もタジタジみたいだ。


「会議の内容に関して、聞き捨てならない事があったんです。

 これから話すので、説明してもらえますか?」


 カエデと公爵の間に入った僕は、会議で何があったのか説明した。


「テレジア様の結婚?!」


 公爵も驚いていた。


「そんな話は知りませんでした」


「でもあなたが和平派の中心人物と聞いています」


 ウガガウに滞在の延長を持ちかけたりもしたみたいだし。


「あなたが知らないなんてあり得るんですか?!」


 カエデも今回は圧が凄い。

 僕の肩越しに責め立てている。


「ううむ……、正直に言います」


 公爵は胸元からハンカチを取り出し、汗を拭いた。


「陛下を元気になって頂くためと言いましたが、本当はテレジア殿下に陛下の跡を継いで頂きたいと思っていました」


「男子でないとか言ってましたよ」


「帝国はイサキオス様が初代の皇帝。

 男子を王にする決まりなどありません。


 アルトナー公爵とフックス公爵は既得権を得るために、男子などと言ったのでしょう」


 別に跡継ぎを男子にする決まりはなかったようだ。


「両公爵とは和平派の同志ですが、それと今の話は関係がありません」


「じゃあ、あの人達が自分の血縁者をウガちゃんと結婚させようとしていた事は?」


「知りませんでした。

 しかし、今思えば、陛下が執務を本格的に再開したタイミングで会議を始めたのは、陛下に聞かれずに会議がしたかったのかも知れません」


 あのグラム=モンテコックリとかいう人の話の通りか。


「わたしはただ、陛下の御子であるテレジア殿下が皇帝にふさわしいと思った。

 殿下には持って生まれた、王者の威厳とカリスマがある」


「でも、野生で育ったバーサーカーですよ?」


「常識とマナーを学んで頂けば、問題ないと考えております」


 クレーヴェ公爵は、ウガガウの事を買ってくれてるようだ。


「それにわたしは、アルトナー公爵とフックス公爵の身内が、皇帝に適格とは思っておりません」


 息子とか甥とかって言ってたか。


「ですが、確かにわたしも急ぎ過ぎました」


「わたしは絶対にウガちゃんを連れて帰ります」


 「そ、そこは何とか焦らずにお願いできませんか?」


「待つんだ、カエデ」


「リンクス、あなたやっぱり妥協するつもり?!」


またポントーを握るカエデ。


「そうじゃないよ」


 あと、そんなに強く肩をつかまないで。


「大切なのはウガガウの気持ちだろう?」


 もちろん、権力争いのために望まない結婚なんてさせない。

 けど、ここを去るのかどうかは、ウガガウ自身が決める事だ」


「それはそうだけど」


 カエデはポントーから手を離した。


「あの子がここにいたいなら、それを尊重します。

 森に帰りたいと思っているなら帰します。

 それでいいですか?」


 クレーヴェ公爵の思惑とは違う。賛成してもらえるかは分からない。

 公爵はやはり、実直な信用できる人だとは思ったが、僕は少し身構えた。


「……そうですな。その通りだ」


 しかし、クレーヴェ公爵は頷いた。


「陛下にはわたしから話します。

 公爵達のテレジア様への失礼な言動もお詫びします」


 そして、頭を下げてくれた。


 さあ、後は本人の気持ち次第だ。

 僕達はウガガウの部屋に向かった。

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