表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/124

第39話 Cランク冒険者の戦い(前編)

 馭者さんに馬車を停止してもらった。

 カエデは細長い剣、ポントーを、ウガガウは彼女の背丈くらいはありそうな大斧持って外に出る。


「エーメさん、馬車を出ないで下さい」


 そして僕も外に出て二人の後ろに立つ。


 僕は両手の拳を握りしめた。


 まずは左手を開き、前に突き出す。


「ディフェン……!」


 そして、次に右手を広げ、突き出す!


「ストレングス!」


 カエデとウガガウを魔法の光が包む。


 攻防一体のディフェンストレングスの魔法だ。


 すると、


「デカブツがおいでなすったか」


 大人しくて、真面目な性格のはずのカエデが、不敵な笑みを浮かべている。


「粋だねえ」


 あごに手を当てふんぞりかえっているのは、カエデの別人格、モミジ。

 ディフェンストレングスの魔法でテンションが上がると人格が入れ替わるらしい。


「しかし、このトロール。

 普通じゃないねえ」


 モミジの言葉で僕はトロールをよく見た。


 骨が見えている個体がいたり、目玉がなかったり……。

 大きなダメージを負っている、と言うより、生きているとは思えないような状態だった。


「ゾンビか」


 トロールの死体が魔法で操られているようだった。

 と、いう事は操っている術者がいるはずだ。


「ゾンビは恐怖を知らない。

 捨て身で攻撃してくるから気を付けるんだ」


「了解しやした」


 うなづくモミジ。


「ウガアーーーッ!」


 一方ウガガウは大斧で一体のゾンビトロールに仕掛けた。


 ゾンビトロールはこん棒で応戦する。


「ウガゥッ!」


 力比べはゾンビトロールに軍配が上がる。


 ぶっ飛ばされるウガガウだが、


「ガウー……! ガウー……!」


 うずくまって唸っている。

 その身体からは赤い煙が立ち登る。


「ウッガー! ガウーーーッ!」


 ほえるウガガウの瞳は真っ赤に染まっている。


 感情の高ぶりにより、ウガガウは狂戦士、バーサーカーに変貌するのだ。


 再びゾンビトロールに挑むウガガウ。


 振り下ろされるこん棒。

 そして、大斧を振り上げるウガガウ


 再度、こん棒と大斧のぶつかり合いになる。


「ガアアアアーーーッ!」


 雄叫びと共にゾンビトロールのこん棒が吹っ飛ばされ、巨体がよろける。


 今度の力比べはウガガウの勝利。

 とても小柄な少女とは思えない。

 これがバーサーカーの力だ。


 しかしその後、ウガガウは後ろから近付く僕をにらんだ。


「ウガアーッ!」


 そして大斧を振り上げ、僕に襲いかかって来る。


 自分で自分をコントロールできない。

 敵味方区別なく暴れ回る。


 これがバーサーカーのもう一つの特性だ。


 と言っても、そんな事はもちろん知っている。

 知っているからこそ、彼女に近付いて行ったのだ。


 僕は両手の拳を握りしめ、しりとり魔法を放つ。


「チルアウトランキライザー!」


 二つの魔法の光を受けたウガガウは、突進をやめた。


「お、リンクスを攻撃するところだったかー」


 我に返るウガガウ。

 しかし、瞳の赤い輝きはそのまま。

 バーサーカーの力はそのまま、意識は取り戻せるのが、チルアウトランキライザーなのだ。


「さあ、敵はあっちだ」


「分かったぞ!」


 ウガガウの肩をつかんで、Uターンさせる。


「準備はできたようだねえ、嬢ちゃん」


「ウガガガーーーッ!」


「粋だねえ」


 ウガガウが向かって行くゾンビトロールにモミジも向かう。


 一体のゾンビトロールのこん棒の打撃をかわしたウガガウは、相手の足に大斧を叩き込んだ。


 足があらぬ方向に折れ曲がり、倒れそうになるゾンビトロール。


 何とか手をついて、転倒を避けるが、目の前には刀を鞘から抜こうとするモミジが。


「もらったぜ」


 モミジが刀を抜き、それを収める。

 するとゾンビトロールの首が地面に落下していた。


「今宵の必殺剣はよく斬れる。


 粋だねえ」


 目にも止まらぬ素早い剣技。

 サムライのポントー術だ。

 真っ昼間だけど。


 カエデ(モミジ)とウガガウは何度もの冒険を経て、連携が取れるようになっていた。


 パワーのあるウガガウが仕掛けて、モミジが必殺の一撃を叩き込む。


 二人の必勝パターンだ。


 一方のゾンビトロール達は連携するような知性を備えていない。


 四体いたゾンビトロールは次々と倒されて行く。


 すると、森から新たな影が。


 黒い闇が蠢いてこちらに近付いて来る。

 骸骨の顔が闇の中に浮かんでいる。


 この魔物は話に聞いた事がある。

 呪術師の幽霊。


「リッチだ」


 リッチは高等な魔法を行使すると言う。

 トロールをゾンビにして操っていたのはこいつに違いない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ