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第115話 大魔法乱舞

 時は、グラムとの対峙の直後までさかのぼる。


「フォッグラビティ!」


 魔法の霧を発生させるフォッグの魔法で身を隠した僕。

 しかし、高レベルのマッピングの魔法は、地形図以外に、周囲の動く物体の反応まで表示する。

 このままではグラムはすぐに僕を発見するだろう。

 そこで、


「ジャミングラビティ!」


 ステータスウィンドウの地形図から姿をくらますジャミングの魔法だ。

 ライブラリの魔法の能力閲覧を妨げたりもできるらしい。


 その後、グラムは最上階に向かって行った。

 まずはナノマシン兵器を守らなければならないのだから、当然の行動だ。

 しかし、それが僕の狙いだった。


 実は僕はこの時、1階の一室に隠れていた。

 そして、マッピングの魔法でグラムの位置を確認。

 上層への移動を確認してから、1階入り口の広間まで戻った。


 僕は始めから最上階など目指していなかったし、マイコンを探して回るつもりもなかった。

 しかし、マイコンもナノマシン兵器も、破壊するつもりだ。


 僕は腰のベルトから、聖杯エクスカリスと経典ルーンラダーを取り外した。

 それはもちろん、使用するためだった。


 儀式魔法とも呼ばれる、大魔法を。


「偉大なる魔女達よ!」


 僕がルーンラダーを真上に放り投げると、それは光を放ち木の杖に姿を変えた。

 魔杖ルーンロッドだった。


 僕はルーンロードをキャッチした。


「英霊騎士団よ!」


 次に聖杯エクスカリスを放り投げた。聖杯は一振りの長剣に姿を変えた。

 聖剣エクスカリバーだ。


 このエクスカリバーもキャッチ。


「この大陸を守る力を!」


 この祭具の変形が儀式の合図だった。

 英霊達に呼びかける合図だった。


 今、英霊達は祭具を目印に、集結を始めているはずだ。


 そしてこの時、ちょうどグラムが現れた。


「その両手に持っているものは何だ?」


「遅かったな、グラム。

 儀式の準備の時間が欲しかったんだ」


「何の準備だと?!」


 大きな力が接近する気配を感じる。

 もうこれで十分だった。

 僕はルーンロッドを掲げ、叫んだ。


「ヴァルプルギ……!」


 そして、エクスカリバーを掲げ、叫んだ。


「スローンラウンドナイツ!」


 僕の頭上に12人の騎士と、10人の魔女が現れる。


 彼らは宙に浮いていた。

 霊的な存在だ。

 そして、一人一人が、英雄的な存在である。


 セントレールを建国した、聖王アルツールと、円陣の騎士。

 そして、大魔女ユミール率いる歴代の偉大なる魔女達。


「な、何なのだ、この魔法は?!」


 その光景にグラムも驚愕を隠せない。


「大魔法と大魔法、大しりとり魔法だ」


「大しりとり魔法!?」


「僕は特訓によって、英霊達を指示通りに動かせるようになった。

 そして、マイコンの位置を全て知っている。


 この魔法でマイコンも、ナノマシン兵器も破壊して、堕天の魔王をも倒す」


 そう言っている間に、数人の騎士団と魔女が飛び去って行く。

 指示をすると言っても、決して主従関係が成立した訳ではない。

 あくまで大陸を守るために、協力してもらう承諾を得たに過ぎない。


「くっ!

 そうはさせるか!」


 魔法の杖を構えるグラム。


「ファイヤーボール!」


 通り過ぎる英霊達を魔法の炎で攻撃した。

 それはかなりの大きさの、強力な魔法だったが、魔女の魔法の障壁にかき消されてしまう。


 逆に魔法の稲妻がグラムに飛んで来る。

 グラムは通路の曲がり角に身を隠し間一発で回避した。

 しかし、稲妻の炸裂した壁が広範囲に渡って破壊される。

 その轟音と被害にグラムは戦慄した。

 さらに一人の騎士の魂がグラムに斬りかかる。

 この攻撃も回避したが、肩を切り裂かれた。


 僕はグラムを攻撃する指示はしていない。

 しかし、彼らは大陸の守り神。

 大陸に危険を及ぼす者を決して許しはしないだろう。


「くっ!」


 逃げるグラム。階上を目指しているようだ。


 僕は意識をマッピングの魔法による地図に集中した。

 それに記されたマークはマリスさんに教わった、マイコンの位置だ。


 僕の指示で、総勢22名の英霊達が次々とマイコンを破壊していく。

 彼らは壁をすり抜け瞬く間にターゲットの場所に移動する。

 そして、強力な剣や魔法の一撃で

 ターゲットを粉砕して行く。


 また彼らは黒い竜の身体にも攻撃を加えていた。

 これも僕の指示ではない。

 彼らが大陸の敵と見なしたのだ。


 マイコンの破壊を確認し、最上階へ。

 そこにもマイコンが。

 最後の一個だ。これを破壊すれば全てのナノマシン兵器の設計図を全て処分できる。


「これは……、これはやらせん……!」


 負傷したグラムが、その前に立ちはだかる。


「復讐を……、復讐を遂げるのだ!

 この大陸の消滅する様を……、この目で見届けるのだあ!」


「もう終わりにするんだ。

 抵抗を止めるんだ」


 戦意を失えば、あるいは英霊達が見逃してくれるかも知れない。

 それが唯一の、彼の生き残る方法だと思った。

 しかし、


「貴様を……!

 貴様を殺せば、この魔法も……!」


 彼の考えは違った。

 僕に杖で飛びかかるグラム。

 もう魔法を行使する余裕もないようだ。


「死ねえ! リンクス=リーグル!」


 しかし、グラムの攻撃は僕に届かなかった。

 美しい魔女が僕の前に現れ、魔法の障壁を展開していた。

 さらに屈強な騎士が剣でグラムの杖を弾き飛ばす。

 吹っ飛ばされるグラム。


「ええい、何だ?! 忌々しい!

 ……はっ!」


 悪態をつくグラムの前の魔の手には特大の雷撃魔法が。

 僕もライトニングの魔法はよく使うが、これ程の大きさの雷撃を瞬時に作り出す事はできない。

 歴代指導者の名は伊達じゃない。


 魔女はその雷撃を屈強な騎士の前に投げた。

 騎士はそれを剣でキャッチする。

 すると、騎士の剣が雷撃を纏った。


 円陣の騎士と偉大なる魔女の連携。

 僕とカエデの魔封剣に似ているが、威力は段違いだろう。

 そしてその強力な一撃が、グラムに振り下ろされた。


「ぐわあああああああっ!」


 その一撃を受け、黒焦げになるグラム。

 あっけない最期だった。

 まさに必殺の一撃だったが、これも高威力、高範囲の大魔法にとっては、そのわずかな一端に過ぎない。


 マイコンと黒い竜に攻撃を加えながら、英霊騎士団と、偉大なる魔女達の魂はその建物の屋上を、黒い竜の頭部を目指す。


 彼らを追いながら、ぼくも屋上に上がる。

 そこには無数の円筒形の金属の物体があった。


 これがナノマシン兵器に違いなかった。

 全てをナノマシンに分解して消滅する超兵器だが、それは激突の衝撃を引き金とした、性質の変化によって発生する。

 つまり、今ここで破壊すれば、その被害は防ぐ事ができる。


「これです!

 これを破壊して下さい!」


 僕が叫ぶまでもなく、騎士団と魔女達の攻撃は始まっていた。

 ナノマシン兵器が次々破壊されていく。


「な、何が起こっている?

 グラム=モンテコックリは何をやっているのだ?!」


 その時大きな叫び声が響き渡った。


「馬鹿な!

 スローンラウンドナイツとヴァルプルギスが同時に使われていると言うのか!」


 その声はイスカリオンのものだった。

 くらった経験のあるイスカリオンは、すぐにそれが大魔法である事を察した。


「それを使えるだけの人数がここに来ているというのか?!」


「いや、ここにいるのは僕一人だ。

 しりとり魔法にはそれを可能にする力がある」


 騎士団と魔女達はナノマシン兵器を破壊すると、さらにその先を、黒い竜の頭部を目指していた。


 誘導など必要なかった。

 彼らはそれを、大陸の敵と見なしていた。


 また彼らは、仲違いする事も全くなかった。

 さっきも強力な連携攻撃を見たばかりだ。

 ただこの大陸、ひいては世界を守るため、力を合わせていた。


「光明教と魔女教。

 王国と帝国。


 人々の歴史と知識を繋いで力に変える。

 そして、その力で未来を繋いでいく。


 それが僕のしりとり魔法だ!」


 僕はきっと、この役目のために生まれて来たのだ。

 今ならそう言える。


「大魔法の同時攻撃に国際連邦センターは耐えきれまい。

 わたしが死ねば、お前も空中に投げ出されるぞ。


 死にたくなければ今すぐ大魔法を中断しろ」


「僕がその覚悟をしないで、ここまで来たと思っているのか?」


「馬鹿な! お前も無事では済まんぞ」


 僕はしっかりとエクスカリバーとルーンロッドを握る。

 迷いなど微塵もない。


「お前も覚悟を決めるんだ」


 英霊騎士団と偉大なる魔女達の魂がいよいよ竜の頭部に集結した。

 聞こえてくる轟音は恐らく建物の破壊によるものだが、僕はそのまま大魔法の完了を見届けていた。


「あと少し……! あと少しで念願が叶うところだったと言うのにっ!」


 その願いを叶えさせる訳にはいかない。

 大陸の敵に、騎士団と魔女達が向かって行く。


「主よ! 主よおおおおおおおおっ!」


 断末魔の叫びと共に、天に昇ろうとした黒き竜が光に包まれて行く……。

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