第109話 国際連邦センターを目指して
王国の聖騎士団と帝国の黒騎士団を先頭に進軍が始った。
敵はオークやゴブリンと言った魔物が先陣だが、奥にはドラゴンや悪魔、天使が控えている。
騎士団と魔物の交戦が始まる。
しかし、一人の戦士がすぐに突出し、魔物達を次々と倒し始めた。
魔物の攻撃をスレスレで回避し、懐に切り込んで必死の一撃を叩き込む。
長い金髪で青い鎧を纏っている、勇者エレインさんだ。
知勇兼備のスキルを持つエレインさんは、間合いを見極める能力と、恐れずその隙に攻める勇気を持っている。
金城鉄壁のスキルを持つ、全身鎧の屈強な戦士、ガレスさんも、最前線で仲間を守りながら、大斧で次々魔物を蹴散らしている。
神算鬼謀のスキルをもつのは、魔法使いのマリスさん。
補助魔法をかけながら、強力な攻撃魔法も行使している。
美しきレンジャーの女性、ルナテラスさんは弓で勇者一行の援護射撃。
高レベルのマッピングの魔法で、戦況も分析して指示を与えている。
「みんな!
陣形を守って、チームワークで戦うんだ。
一人で前に出過ぎるんじゃないぞ!」
協調性を身に付けた戦士ヒューゴ君は、マイリスの冒険者達のリーダー的な存在になっていた。
ヒューゴ君のお姉さん、シスターのアミシアさんも一緒だ。
カエデのお父さん、スイレンさんとお兄さんのアサガオさんも冒険者に交じって参戦。
鋭さが売りのポントー術で、魔物達を撃破している。
「リンクス、お願い」
「オレ達も行くぞ!」
「ディフェンストレングス!」
カエデとウガガウにも補助魔法をかける。
もちろんこの二人も、息の合った連携で敵を撃破していく。
強力な魔界の魔物との戦いだが、決してひけをとっていない。
これだけの精鋭が集まっていると、僕は攻撃よりも支援に回った方が良さそうだと思った。
僕は方々で補助魔法や回復魔法をかけ回った。
戦線が確実に押し上げられて行く。
いい感じだと思っていたところだったが、エレインさんが後退して僕に近づいて来た。
「リンクス、堕天の魔王を倒せるのはお前だけだ。
もっと前に出るんだ」
「お前が国際連邦センターに辿り着かないとどうにもならねえんだ」
「戦線の維持はわたし達に任せて進んで下さい」
とガレスさんとマリスさんも。
そうだった。
今までは補助や回復がメインだった。
だけど、イスカリオンを倒せるのは僕の大しりとり魔法だけだ。
マリスさんを始め、ここには補助や回復のスペシャリストも大勢いる。
僕のやるべき事は後方支援ではない。
「ほら、乗れよ」
一人の騎士が近づいて来た。
栗毛の馬にまたがった、その黒騎士はベルナールだった。
「馬に乗れるの?」
孤島の漁村を出て冒険者になった僕達は、馬の乗り方なんて知らなかった。
「黒騎士団でみっちり仕込まれたからな」
馬術は帝国で学んだようだ。
「帝国兵か。敵地への切り込みを任せていいのか?」
エレインさんはベルナールを知らない。
少し警戒しているようにも見えた。
「彼はルーンラダーを手に入れる時、協力してくれたベルンハルトです。腕は確かです」
一応、帝国での名前である、ベルンハルトと呼んでおく。
「そうか、よろしく頼む」
帝国との共同作戦だし、エレインさんもそれ以上は何も言ってこなかった。
「露払いは勇者様がやってくれるんですよね」
ベルナールも、有名人のエレインさんの事は、知っているようだ。
「それは任せておけ」
エレインさんはそう答えると、また魔物達に向かって行った。
「じゃあしっかり捕まってろよ」
ベルナールが手綱を握ると馬が駆け出した。
「マジックバリアジリティ!」
僕は魔法の障壁を作り、敏捷さを上げる魔法をベルナールとその馬にかけた。
「ライトニングラビティ!」
そして、襲って来る敵も迎撃した。
「大した威力だな」
ベルナールが前を向いたまま、言った。
「帝国の魔道士団にも、これほどの使い手はそういない。」
「魔力アップのスキルばっかり59個も持ってるからね」
「そうか。そうだったな」
ベルナールは飛びかかって来る敵は剣で払い退けて馬を進める。
「ベルナールの馬術も立派なものだよ」
一年で芽が出なければクビだと言われた、なんて言ってたけど、とんでもない。
馬に乗りながらの戦闘も難なくこなしている。
「お前の大魔法の特訓の間に、おれも訓練し直した。
負けてられないからな」
彼も腕を磨いていたようだ。
「クレーヴェ公爵が指導してくれたんだ。
お前に迷惑かけないようにってな」
「クレーヴェ公爵?」
帝国和平派の中心人物で、小太りの温和な人物だ。
馬術を教えるイメージではない。
「あの人はかつて『鬼クレーヴェ』と呼ばれた黒騎士団長だ」
「お……、鬼クレーヴェ!?」
「知らなかったのか」
初めて聞いた。温厚な人柄からは想像がつかない。
そう言えばなんで、公爵がノルド山脈の戦いに付いて来たのか分からなかったが、臨時で指揮を取っていたのかも知れない。
「今は侵略戦争に参加した事を悔いているようだな」
戦争を知っているが故の和平派、と言う事なのか。
「お前の知り合いなのもバレちまった。
まあそれでお前を乗せる事になったんだがな」
ここで駆け付けて来たのは公爵の指示だったようだ。
精鋭達の活躍でだんだん魔物の攻撃が減ってきた。
そこで僕はベルナールに話かけてみた。
「ねえ、戦いが終ったら、一緒にシャオンス村に行こうよ。
ジョゼフとドニーズの子供が生まれたら、顔を見に行こう」
二人とも約束した事だし、実現したい。
しかし、ベルナールは前を向いたまま、しゃべらない。
「ベルナール、聞いてる?」
「うるせえな。聞いてるよ」
不機嫌そうな声だった。
「いちいち言わなくていい。
……始めからそのつもりだ」
やはり前を向いたままのベルナール。
「そっか」
僕はそれ以上何も言わなかった。
魔物の群れの中を突破する僕達。
しかし、しかしその戦線は二体の人型の敵に止められる。
白銀の甲冑を纏った、眼鏡をかけた天使と、巨体の悪魔。
アークエンジェル、エーメと、アークデーモン、リベンだ。
エーメはしなやかながら、強力な剣技を誇る。
リベンは素手だったが筋骨隆々で、武器を持った騎士団や冒険者をものともしていない。
僕達もここで動きを止めざるを得なかった。
「リンクス=リーグルか。
久しいな」
眼鏡に手を当て、こちらを一瞥するエーメ。
かつては一緒に旅をした事もあったが、僕を罠にはめ、魔法を奪われる原因を作った人物でもある。
「ぬうううん!
何人たりともここは通さんぞ!」
そして、アークデーモン、リベンは帝国の大司祭にその身をやつしていた。
この人物も罠の手引きをした人物だ。
彼らが国際連邦センターを目指す僕達を見過ごす訳がなかった。
こちらに滑空して向かって来る天使と悪魔。
しかしその時、エーメに向かって跳躍する影が現れた。
空中での斬撃をブロードソードで受け止めるエーメ。
「リンクスの邪魔はさせない!」
サムライ少女カエデだった。
「わたしを止めた、だと?」
かつては弾き返した相手だったが、今回は停止せざるを得なかった。
受け止めた斬撃は重く、力強かった。
着地したカエデの手にあるポントーは、腰に下げたものより長く幅も広い。
「この剛剣サダミツで、あなたに勝つ!」
こうしてカエデとエーメの二度目の戦いが始まった。
「ならば我が貴様らを打ち取ってやるわ!」
僕とベルナールに迫るアークデーモン、リベン。
しかし、
「ウガーーーッ!」
その巨体に飛びかかる小柄な姿。
バーサーカー少女、ウガガウだった。
「お前の相手はオレなんだぞ!」
その手には皇帝イサキオスから譲り受けたハルバードがあった。
「いつぞやの童か。
なかなかの強さだったが、我には及ばぬ」
「父ちゃんと特訓したんだぞ。
リンクスの邪魔はさせないぞ」
ウガガウとリベンの再戦も始りつつあった。




