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第99話 二人の防衛線

 魔界のドラゴン。ニーズヘッグの放つ黒い炎に対し、僕は「マジックバリアンロック」を使った。

 黒い炎は魔法の障壁に阻まれ、威力を軽減される。


「ヒーリングラビティ!」


 黒騎士団のダメージを回復させつつ、重力波で攻撃。

 形勢を立て直す時間を稼ぐ。


「わたし達も行くよ」


「行くぞー!」


 鞘に納めたポントーに手をかけ、ニーズヘッグに向かって行くカエデ。

 大斧を背負ったウガガウも続いて行く。


「これは負けてられねえな」


 黒い甲冑に身を包んだベルナールも後に続く。


「ディフェンストレングス!」


 すかさず僕は三人に補助魔法をかける。


 カエデの素早い動きはニーズヘッグ達を翻弄する。

 その隙にウガガウの大斧の一撃が叩き込まれる。


 カエデとウガガウの連携攻撃でニーズヘッグが次々と倒されて行く。

 回復は深緑色の軍服の帝国魔道士団に任せて、僕もライトニングラビティで戦闘に参加する。


 少しずつ戦線が押し上げられる。

 これで、攻勢に転じる事ができるだろう。


 と、思っていると、


「ちぇすとー!」


 僕目掛けて飛来する姿が。


「貴様が来てから空気が変わったと見た!」


 屈強な天使、ヘルが剣を抜いて急降下して来た。


「くっ!」


 呪文の構えを解いて、回避せざるを得ない。

 僕の両腕から一旦集まった魔素の光が消えて行く。


「優秀な魔法使いらしいな」


 ロングソードを持った黒い髪の天使。


「ガッハッハ!

 我が名はヘル。

 戦士達に安らぎを与える天使だ」


 腕を組んで豪快に笑っている。


「貴様にも安らぎを与えてやろう」


 ヘルはまた僕めがけて急降下して来る。


「リンクスッ!」


 カエデが駆けつけて来る。


「むぅっ!」


 カエデは跳躍してヘルに斬りかかる。

 刃物同士がぶつかる鋭い音が響いた。

 しかし、


「くっ!」


 弾き飛ばされたのはカエデだった。

 着地には成功するが、バランスを崩し、ひざまづいてしまう。


「腕はよい。

 だがその細い刃では通じん。


 わしの剣の前にはな」


「くっ、また……!」


 エーメの剣技も手強かったが、このヘルもやはり一筋縄ではいかない。


「おれが行くぞー!」


 ウガガウがさらに攻撃を仕掛けるが、


「貴様では技が未熟だ」


 ヘルは難なく空中に逃れてしまう。


「わたしの剣技は通じないの?」


 うなだれてしまうカエデ。


「そんな事ない! 僕達二人なら絶対勝てる!」


 僕は大声でカエデに呼びかけた。


「リンクス……、そうね」


 カエデの目に再び闘志が宿る。


 まずは左手を開き、前に突き出す。


「ロックブラス……!」


 そして、次に右手を広げ、突き出す!


「トルネード!」


 竜巻に巻き込まれた石つぶてが空中に発射される。


「……?

 どこを狙っている?」


 回避しようとしたヘルだったが、動きを止めた。

 僕のロックブラストルネードの魔法は、ヘルの位置よりはるか上空に向かっていた。


「狙いを誤ったようだな。

 最もちゃんと狙ったところで、この程度のスピードは回避して見せたがな」


 空中で剣を構え直し、僕に狙いを定めるヘル。


「そろそろとどめをくれてやろう」


「誤ってなんかいない。

 狙い通りだ」


「何?」


 僕の視線は依然、石つぶての竜巻に向いていた。

 その方向には……、


「弾岩旋風剣!」


 跳躍したカエデがいた。

 カエデは刀で僕の魔法を受け止める。

 魔法の力を剣に宿す、魔封剣だ。


「何だとおおおっ!?」


 カエデの身のこなしをいつも見ている僕は、あのぐらいの高さまで飛べる事を確信していた。


「覚悟!」


 上段に振りかぶったカエデは、そのままヘルを袈裟斬りに斬りつけた。


 岩の竜巻を纏ったポントーは、剣を吹き飛ばし、ヘルに直撃した。


 墜落していくヘル。


「あと少しで四天王になれたものを……」


 それが彼の最期だった。

 石つぶての竜巻で強化されたポントーの一撃にはひとたまりもなかった。


「よく僕の考えを分かってくれたね」


「わたしはリンクスのパートナーなんだから」


 僕の言った「僕達二人なら絶対に勝てる」の言葉で、カエデは瞬時に魔封剣の準備をしてくれた。

 素早さと鋭さが売りのポントー術の打撃力を僕の魔法で補う作戦だった。


「でも手強い敵だった。

 わたし一人じゃ危なかった」


 天使、ヘル。

 エーメ、リベンにも劣らない強敵だった。

 そして、


「やられたのか、ヘル!」


 黒騎士団と交戦していた魔獣ガルムだったが、ヘルに駆け寄る。


「何て事だ!

 よくもっ! よくもヘルをっ!」


 ヘルの亡骸を前に暴れている。


「あいつは天使なのに魔族を見下さない、気さくないい奴だったんだ!」


 本当に悲しんでいるようだ。

 彼らにも信頼関係があったんだろう。


「貴様らあああっ!」


 激高するガルム。


「許さねえ!」


 黒騎士団を蹴散らして向かって来る。


「ふん、馬鹿言うんじゃない」


 ニーズヘッグと交戦していたベルナールだったが、ガルムの様子を見て憮然としていた。


「村の人間だって、騎士団だって、何人もお前らの犠牲になってる。

 勝手な事を言うな」


「黙れぇっ!」


 向かって来るガルムの前に立つベルナール。


「あ、危ないよ、ベルナール!」


「ここを通す訳にはいかない。

 おれが奴を受け止める!

 カエデ、ウガガウ、その隙を攻撃しろ」


 まっすぐ走って来るガルムの正面に立つベルナール。


「それまでは下がってるんだ」


 魔界の魔獣、ガルムを本当に受け止める事ができるのか。


「おい、犬コロ。

 そろそろ終わりにしようぜ」


「おれを犬呼ばわりするなあ!」


 ガルムを挑発して引き付けている。

 しかし、それは無謀な挑戦に思われた。

 黙って見ている訳にはいかない。

 何か魔法でサポートしなければ。


「リンクス、お前も下がってろ。

 おれが急に逃げたらどうするつもりなんだ?」


「後ろには子供達がいる。

 君は絶対に逃げない」


 彼は魔物が拠点に到達するのを、阻止するつもりなのだ。


「だから君はこうやって無茶をしているんだろう?」


「…………」


「それを確信しているし、信頼しているよ」


 だから絶対にベルナールを魔法で補助しなければならない。


「おれはお前なんか信頼してない」


 振り向きもせず、盾を構えるベルナール。


「でも、お前の往生際の悪さは昔からよく知ってる」


 僕はそれでいいと思った。


 やはり振り向かないベルナールだが、どこか懐かしい。

 それは昔からよく知る後ろ姿だ。


 僕は両腕を構え、しりとり魔法の準備をした。

 ここは必ず止めて見せる。


 僕達二人で。

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