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怯えて動けない王族、貴族の視線の先で二人の剣激は混じる。正面から受け止め、時には受け流しとバルサスの剣を鮮やかに捌き笑みを浮かべ踊る。何度もそれを繰り返す、バルサスはまさに王道の剣だった。細かな技術より基礎を練り上げ力重視と隙が少ない。経験に基づいた傭兵の剣。


ニックに剣はまさに外道、相手を翻弄し酔っ払いの足取りでフラフラと舞う。その姿に怒りを覚えバルサスが力の限り剣をぶつけるがいなされてしまう。最初こそ正面で受け止められたが次第に流され避けられるようになっていく。



「腹が立つがたいした剣だな爺さん」



「アヒャア!!」



「だが芝居も限界がきてるぞ。その異常なほどの汗は誤魔化せない」



先程の戦闘で受けた傷が響き痛みが膨れ上がり汗となり額から流れ落ちてくる。見抜かれたニックは構えを解き間合いを離すと大きく深呼吸する。



「まったく楽な戦いなんて数えるほどしかなかったな、どうして俺には才能とかセンスとかそうゆうのがなかったのかね」



「その傷では辛いだろう、すぐ楽にしてやる」



両手剣を肩に担ぎ前傾姿勢で突撃してくる。狙いは上からの振り下ろし、受けるか避けるとニックは汗まみれの顔を強張らせ考える。だが答えがでないまま目の前に鋼鉄の塊が振り下ろされる。



「糞ったれ」



予想以上の早さにニックの体が反応が遅れてしまう。鼻先に両手剣が触れて血が吹き出る光景がやけに遅く見える。こんな埃臭くわけのわからない城で長きに渡る戦いの生涯が終わるのかと思うとなんだが笑えてくると酒臭い口を開くと同時に動く。



「ガァ」



振り返るとバルサスが脇腹を抑え倒れて込んでいる。軽装の鎧は鋭く切り裂かれ中身から血が流れ落ちている。握っている剣を見るとベットリと血が塗られていた。



「なんだ今の動きは!!」



怒り交じりの声で吼えるがニックはわけがわからない、しかしそこである滅茶苦茶な仮設を立てた。



「きっと許してくれなかったんだ。俺は今の一瞬で諦めたが……この体が許してはくれない。敗北を許してはくれないってよぉ~」



「ケッ老人の割に随分と現実離れた事を言いやがる。次こそその首を頂く」



互いに手負いになり条件は同じになりバルサスは両手でしっかり剣を握り締め正面に構える。ニックは変わらず片手で軽く剣を握りフラフラとしてるが違和感を感じて目を閉じて己の体に問うと応えは構えで帰ってきた。


両手でしっかりと握り締める構えた。バルサスと同じ構えになり表情もふざけた笑みから真剣な顔に変わり大きく深呼吸をする。



「てめぇふざけてるのか」



構えを真似られ唾を地面に吐き捨てるとニックは真っ直ぐ見据えてくる。



「これでも昔は結構真面目に剣術やってたんだぜ。最初に習った構えがこれさ」



バルサスが放った攻撃は突きだった。構えから最速で繰り出される殺傷能力にも秀でた攻撃に対してニックは待つ。自分の間合いに切っ先が入ってくるのを……先程反応すら出来なかった攻撃は今も反応できないが感じる。


後少しほんの後少しと微塵も体を動かさず待つ。切っ先が間合いに入った瞬間ニックの剣が跳ね上げた。下から切り上げられ剣を大きく弾かれたバルサスの顔が驚きの変わっていく。



「や、やめ」



ニックは振り上げた剣を無慈悲に振り下ろすとバルサスの体を切り裂いた。首から腹にかけて斜めに裂くと大量の血潮を浴びバルサスの最後を見て腰を下ろす。



「い、いてぇ~……いてぇよ!! おいそこの王様か家来かわからん連中殺されたくなかったらなんか治療できるもん持って来い!!」



今になり傷の痛みが再び膨れ上がり誤魔化すように酒を煽り息をつくと外から何人もの声が聞こえこの戦いに勝利したと確信した。



「たくボスよぉ相変わらずくるの遅いんだよぉ~もうすぐで死ぬ所だったぞ!! うぉ~い早くきてくれぇ」



弱音を大声で叫びながら先程の感覚を思い出す、殺し合いの最中で全てを肉体に委ねる自殺行為。頭で考える事を放棄しただ肉体が動くのを待つという馬鹿げた剣術。もはや剣術とは呼べない、老体なら経験に基いた考えや動きで戦うのが常識と考えていたがニックはこの戦いで常識の外に到達しつつあった。



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