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全身が黒い鱗で覆われ翼や尻尾まで生えてる元同僚遠藤カズヤの姿にテツは驚く。まるで燃え盛る炎が意志を持ち襲いかかってくるような殺気を感じ失った腕をかばう様に立ち上がる。



「目前に捕らえたぞ遠藤カズヤ!! 奴を食い千切れば復讐も果たされ貴様は英雄扱いぞ!!」



レグナの言葉全身に駆け回り闘志と殺意が骨の髄まで染み渡る。握り締めた拳を更に握り大きく見開いた目でテツを射抜く。もう恨みの言葉すら出てこない。



「ガァアアアア!!」



カズヤの声は人間を失い動物でもない。竜が吼え目標に向かい突っ走る、時間にして1秒もかからない隙間にもう一匹の竜が割り込んできた。



「しばらく見ない間に随分と宿主を竜に近づけましたねお父様」



「いたか娘よ!! 愛しい娘までいるとは天の采配も随分と気が利くよのう!!」



手四つで組み合い砲弾のような突進を止めたフェルが後方にいる深手のテツに叫ぶ。



「テツさんなんとか逃げてください!!」



純粋な力勝負になるとカズヤに軍配が上がる。フェルの指の隙間に驚愕の握力の力で握り締め捻り上げていく。手首を返され肘が持ち上がった時に悲鳴を漏らす同時に口から炎を吐き出し炎の中にカズヤを引きずり込む。


肉が焼ける臭いと煙が立ち込め掴まれた手から一瞬力が抜け勢いよく払うように離すと一気に後方に飛ぶため膝を落とした瞬間に煙の中から拳が突き抜けてきた。


顔面を強打されたフェルは天井まで飛ばされ激突し無残に床に落ちる。煙の中から皮膚を黒く焦がしたカズヤが現れ瞬時にテツに向かい突進していく。



「テツゥウウウ!!」



「この化物がくるんじゃねぇ!!」



拳がテツの鼻先まで迫るが寸前で止まる。振り返るとフェルがカズヤの尻尾を捕まえ一気に投げるように背負い床に叩き付ける。衝撃で床が抜け落ちていく。辿りついた部屋は上階と変わらない無機質な石壁に囲まれている。


武器を保管する部屋なのか壁際に武器が並べ置かれているがカズヤはどれも手に取らない。フェルは一本の剣を取り構えていく。



「ぬぅうう後僅かな所でやってくれるな我が娘よ。仕方ない、まずは目の前の敵からやるぞ」



「面倒くせぇな、邪魔すんじゃねぇよ糞女ぁ!!」



埃が溜まり少し動くだけで室内を粉が舞う。二人分には十分な広さがあるが最大の問題が暗さだった。天井の穴から漏れてきている光があるが、それでも互いの姿が見え隠れしてしまう。


暗闇に目が慣れるまで待つかと思った瞬間にカズヤは斬られてしまう。鱗がまだ生えきってない人間の部分の背中を大きく斬られ仰け反る。



「所詮は竜の力に頼った腕力頼みの戦い方ですね」



「いっ……てぇな!! じゃその腕力を見せてやるぞ」



暗闇の中から無数の光が飛んできたと思うと腹に槍が突き刺さる。次に肩に手斧、足に剣。見事に生身の部分だけを狙った正確な攻撃に膝を落とす。



「まずいぞ!! 我が娘は随分と知恵を使う戦い方をしよる、こちらも少しは頭使いこの状況を」



「ぎゃああああああ!!」



まず体の数々の箇所を貫き動きを鈍らせた後に大きく上段から振り下ろしカズヤの胸を真っ二つに割る。血が噴水のようの噴き出し壁まで飛ぶ。



「お父さん、再会は嬉しいですがそちらの馬鹿につくつもりならここでお別れです」



止めを刺しに暗闇に一筋の光を宿し剣を突き立て突進してくる。狙うは額、頭を突き刺しそのまま首まで千切る勢いで矢のように飛んでくる。


壁を背に腰立ちまでいくが目の前にせまる剣の切っ先を見て脳裏に今までの記憶が蘇る……事務所で威張り散らし後輩から嫌われた、結局異世界にきても地位も金からは程遠い糞みたいな戦うだけの日々。



「……その糞みたいな戦う日々で養った経験よ、頼む少しでいいから動いてくれ」



先ほどまで発狂したように暴れまわっていた思考が静かになり体に語る。もはや意志では動かない。これまで馬鹿のように戦場に出て馬鹿みたいな戦い方をし痛めつけてきた体に最後を託した。


もう考えるのも辞め迫るフェルと剣を見据えて覚悟を決める。これで駄目なら本当に意味のない人生だったなと思う。最後に思い浮かんだ事は女の体を一度でいいから味わいたかった、そんな救われない遠藤カズヤの体は選択した。



「え」



驚きの声を上げたのはフェルだった。気付けば腰にカズヤがタックルを極めガッシリと捕まれ身動きが出来ない。



「うっしゃあああああああ!!」



なぜこんなにも見事にタックルが極まったのかは自分でも理解できない。技を仕掛けた記憶もない。爪先を蹴り上げ全体重をフェルにぶつけ室内を一気に駆けていく。


端までいけば当然壁があるが、そんな物知るかと言わんばかりに突き破る。フェルは万力にでも潰されてるような力を感じ解けない。数枚の壁を突き破ると二人は重力を感じる。



「う、うお」



カズヤが情けない声を上げた瞬間二人は空中に放り出されていた。



「いい加減離れろ!!」



フェルが手に持つ剣でカズヤの剣を貫こうとしたが落下が始まる。景色が下に流れるように加速していく、翼を広げ飛行しようとするがカズヤは離さない。邪魔するように頭を上げて顎を跳ね上げ気付けば2匹の竜は地面に激突した。







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