表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/98

6

ルーファスが振るう剣を頬に滑らせながらテツは間合いを計る。いくら悪魔のような体でも剣と戦えばリーチでは勝てないが、自信が恐怖を押し潰す。目を凝らしルーファスの体の隅々まで観察し次の行動を読み回避していく。



「この悪魔め!! 反応速度まで強化されていたのか!!」



「確かに強化はされたが年齢と共に衰えてきたさ、こいつはパンドラの能力じゃない」



ルーファスも幼い頃から徹底した英才教育を受け剣術に秀でてた。才能にも恵まれ王としての器も授かった生まれながらの王。その王が魔王のために磨き上げた剣の腕を存分に披露するが当たらない。


剣の間合いの中に捕らえているはずだが体を揺さぶり見事に避けていく。斬る軌道では駄目だと体のど真ん中目掛け剣を突き出すと片手で横から弾かれしまう。ルーファスは思う、こんな才能の欠片もなかった男がなぜと。



「役30年だ……そんだけの時間を戦場に出て戦い回ってれば嫌でも強くなる。ルーファスお前も才能もあり努力も重ねただろうが凡人の努力が上回ったようだな」



剣を捌ききれるのは経験の力だった。数え切れないほどの命のやり取りを繰り返した経験と本能が考える前に体を動かす。ただ見るままに感じるままにルーファスの前で踊るように剣を捌く。



「テツお前の首を地獄まで持っていくぞ!!」



剣に執念が宿ったように勢いが増していく。高年齢の達した老体とは思えないほど剣の回転は速くテツへの反撃の好機を奪っていく。



「面白い!! 何度も自国を滅ぼされた哀れな王の執念見せてもらおう!!」



ルーファスは賭けに出る。今の距離では当たらないが反撃も届かない、しかし勝負が長引けば人間である自分が体力を失い必ず負けると判断し一歩を踏み出す。

体を半身にし肩を突き出してのショルダータックル……ただ肩をブチかますだけだがテツの意表をついた。



「俺が剣を振らずにただ体当たりするとは思ってなかったようだなテツ」



「この野郎、やってくれるじゃねぇか」



ルーファスは肩をテツの胸に押し付け全体重を預け腰を落とす。密着されればテツも自慢の拳も使えない。だが同時に剣も封じてしまう作戦だったが息を整えルーファスはテツが動くのを待つ。



「さぁどうするテツ、好きに動いていいぞ。この距離はお前の方が有利だからな」



テツは押し黙る。恐らくは選択しているはずだとルーファスは予測し剣の柄を握り締めテツの胸の中で息を吐く。打撃を使いたければ距離を離す、その瞬間にできる隙に剣を叩き込み首を跳ねる。


打撃ではなく掴みにくるとしたらテツが技を仕掛けた瞬間剣を突き刺す準備は整っている。テツが編み出した組技は何年もかけて研究した対策は体に染み込ませてある。後手必勝の策で待つ。



「どうしたテツ。何か言ったらどうだ、それとも怖いのか」



「この糞野郎が~調子に乗るんじゃねぇぞ」



「フン、お前のそーゆ台詞を聞くと本性は変わってないな。所詮は凡人以下の小物。臆病者な所は今も昔も少しも変わりはしないな」



挑発しテツが動くのを誘う。動けと体を押し付け次の瞬間に最速の剣を振るう準備を整え全身の力を抜く。テツが先に動くという予測の作戦だが必ず動くという確信があった。


待てるはずがない、いくら長年経験を積もうが本性は変わってないはずだ……二人は憎まれ口の叩き合いをやめて無言になると石壁の隙間から通り抜けていく風の音だけが響く。


風の音にわずかに他の音が混ざり合う。それは地面を蹴る短く鋭い音、その音が響いた瞬間に二人は動いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ