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ベリルが娘だろうが知った事ではないとカズヤは怒鳴り立ち去ろうとした時にレグナに脅された。肉体の半分は竜が支配されレグナがその気になれば更に老化させると言いカズヤは折れた。さすがに命を握られては拒否ができなく仕方なくベリルに協力する事になり二人は馬車に乗る。
「まぁ私も心の底から不快だけど割り切るんでよろしくねお父さん」
「――…っ!! くそぅ、おいレグナてめぇいきなりなんで協力するとか言い出すんだ、余計な事してる時間ねぇんだろうが」
「ふん貴様の事情など知るか。これは親子の問題ぞ、子の我が侭ぐらい聞いてやらんで何が親だ。よいか半人前、まずはベリルの望みを叶えてやれ」
夜中に出発し馬車の中で朝を迎えると小さな窓から光が漏れ出し覗き込むと灰色の壁が見えてくる。人の血が渇いた後と亀裂だらけの壁。それは街を囲む城壁だった。
傭兵生活はそこまで長くないカズヤだがここまで荒れ果てた城壁は初めて見た。幾多の武器が突き刺さり亀裂を縫うように巨大な武器が散りばめられている。一体何度攻め込まれたのかすら想像できないほどの激戦の後が刻まれている。
「いよいよきましたね。一応は礼を言います」
「よぉ馬鹿娘、お前結局何が目的なんだ」
「母親をあいつに殺されましたからね、単純な復讐ですよ。貴方も同じようなもんでしょう」
城門を通り抜けると街の中も荒れ果てていた。女子供はいなく甲冑を身に纏った兵士達が出迎えた。家らしい物はなく兵舎だらけだった。地面は踏み荒らされ汚れと血の臭いが充満されそこを歩く兵士達は感情を失ったような表情で行き来していた。
馬車を降りる時にベリルはフードを深く被り長い金髪も隠すと降り立つ。生まれ故郷のベルカに、続いてカズヤは何も隠さず顔を晒すが問題ない。既に老人と変わっていた顔は問題ない。
「しかし魔王軍に対抗し連合軍まで作り上げた正義の国家ベルカの総本山にしては随分と酷いもんだな」
「まぁ魔王が何度も攻めてきたんでしょうね。一応は凌いでいますけど……時間の問題でしょうね。さて、頭の悪い父親でもわかるように説明します」
顔が変わったカズヤがベルカ軍になんとか入りベリルは旅の連れという事にする。顔に酷い傷があるためフードで隠しているという設定にするらしいがカズヤはこの穴だらけの作戦に溜息を漏らす。
「だいたいなんでベルカ軍に入ろうとしている奴が連れなんているんだよ、しかも女だぞ。怪しいだろ」
「あの城に入ってしまえばどーにでもなるんですからいいんですよ」
「頭の悪さは親子だな。楽しみじゃのぅ~あのルーファスの父親には借りがあるのでな。我を捕獲し見世物にしおった、子供のルーファスにたっぷり借りを返してもらとするか」
カズヤの格好は戦場で連合軍から剥ぎ取ったボロボロの甲冑姿でいかにも食うに困る傭兵に見え好都合かと思い目標の城まで近付くと数人の兵士が固まっている。おそらく入り口の警護だろうと近付く。
「あのぉ~少しいいですかぁ」
話し掛けられカズヤを見た瞬間に兵士は顔を歪め視線を反らす。
「帰れ帰れ、お前みたいな傭兵とは話もしたくない」
「ベルカ軍に入れてもらおうと思いきました」
「……あのな爺さん、歳を考えるんだ。それに誇り高きベルカは傭兵の力など借りないんだよ」
ここにきて計画が狂う。ベルカは魔王軍と戦ってる内に兵士が足りなくなり傭兵達にも頼ってたと予想していたが総本山ではまだ傭兵を差別する騎士達が存在するとカズヤは気付き舌打ちを鳴らす。
「おい糞娘どーすんだよ、ここでバレたら街中の兵士がやってきて殺されるぞ。さすがに数で押し切られたら勝ち目がないぞ」
隣にいる目元を隠すベリルに小声で話かけると腰に刺してる剣の柄に手をかけていた。それを見た瞬間にベリルの手首を掴み上げ背中で兵士達から隠す。
「ここまでくれば大丈夫ですよ。こいつらを叩き斬り城内まで言ってあいつを殺せば問題ありません」
「問題しかねぇだろ!! 仮に殺せたとしてもその後どーすんだよ!! 囲まれて俺達は終わりだぞ」




