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11章

足を引きずりベリルとの合流場所に向かう途中体の異変は出てきた。視力か聴力かとカズヤは怯えながら人間としての機能を確認していくが目も耳も問題ない。ならば体の一部の破損かと手足を確認するが問題ない……そこで気付く。


腕を確認した時に皮膚が変化している。ハリと艶があった筋肉とは違い、水分を失ったようによじれシワが出てきている。皮膚を持っていかれたと思い一度腰を下ろし溜息を漏らす。



「おい糞野郎。皮膚をもってきやがったな、やってくれたなぁあああ!!」



「勘違いするな半人前。貴様我と契約した代償がそんな軽い物ですむと思うのか」



怒りで発狂しそうな感情を押し殺し冷静になると疑問が生まれる。皮膚だけならこの異常なほどの体力低下はなんだと。戦場でつけられた傷の治りも遅い。そこまで考えると最悪の予感がして走り出す。


目的地は小さな水溜り。この嫌な予感が外れててくれと水溜りを覗き込みと言葉が出てこなかった。



「……っ」



そこには老人が映り込んでいた。肩まで延びた黒髪は全て白髪になり、顔の筋肉が老化しギラギラした釣り目だった目は垂れ、鼻と口にはシワが何本も刻まれている自分の顔を見ると怒りではなく絶望がカズヤの膝を折る。



「おい、なんだこりゃ……てめぇ何しやがった」



「ふむ、見る限り身体的機能ではないな。おそらくは時間だ。貴様から時間を奪いさり老化が進んでいるようだな」



「じゃぁ……俺は一気に70歳くらいの爺さんになったのかよ……ハハ!! ふざけんなよ、最強の竜じゃないのかよ。だから俺は人間なんて捨ててやったんだぞ!!

 ヘヘ」



人間だった頃に何の未練もなかった。好き勝手できる最強の生物の方が遥かに人生を楽しめると調子に乗ってた結果がこれだと笑うしかない。



「お~いどうですかぁ~稼ぎましたかぁ~」



背中に大きな袋を背負いベリルが合流するとカズヤの豹変に驚く。



「え、誰ですか」



「……嘘だろ」



ベリルを一目見て何も感じない事に衝撃を受ける。いつもなら絶世の美女ベリルを目の前にすれば考える事は「やりてぇ」それがない。年老い性欲も衰え消え失せていた。



「ベリル俺だカズヤだ。て、声も変わってるのか」



困惑するベリルに事情を説明すると手を叩き腹を抱えて笑い転げられた。不思議と腹は立たず、これからの事を冷静に考える。



「おい竜の力は残ってるのか」



「力は衰えているが残っているぞ。むしろ貴様の生命を食い物に出来て竜化は進んでおる。しかし貴様から時間を奪い続けている、運が悪かったな半人前。長くは持たぬだろうな」



ベリルと共に近くの街まで歩き出すと曇空を見上げながら終りかけている人生を振り返る。恐怖はあるがそれ以上に空しさだけが込み上がってくる。本当になんのための人生だったのであろうと哀愁漂う背中を見てベリルは笑う。



「ヒャハハハ!! ちょっとちょっとお爺ちゃん足元大丈夫ですか!!」



結局最後に残ったのは醜い感情だった。あのテツを殺す、恩人の息子だろうが関係ない。ただ憎い、あの勝ち誇った顔を思い出すだけで鳥肌立つほどに憎い。



「お爺ちゃん!! ねぇお爺ちゃん!! ねぇったらぁ~返事してくださいよぉ」



「……うるせぇってんだよ!! ぶち殺すぞ!!」



「怒った怒ったぁ~ヒヒ……ハハハハハ!! お腹痛いぃ~」



二人は次の街へ向かう。


 






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