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2本の巨大な斧が装着された儀腕の攻撃速度、タイミング、手数の全てからバルサスの努力が感じられた。竜になり人間などひ弱な生物と心のどこかで見下してたカズヤは恐怖と焦りの汗を顎から一粒落とす。


他を寄せ付けない圧倒的な力が積み重ねてきたが努力により敗れようとしている。出来る事は近づく事しかない。離れていては切り刻まれてジリ貧の果ての死……二度目の突進を仕掛けていく。



「情報通り竜の力以外はそこらの傭兵より下だな」



突進中に見えた景色が後ろに流れ中心に標的のバルサスを捕らえるが、そこに一筋の切り目が入る。咄嗟に地面を蹴り抜き横に避けると先ほどまでいた場所が斧で粉砕されていた。


避けたと同時に再び踏み込むために足腰に力を入れて加速の準備をした瞬間に目の前に儀腕から延び威力と速さをつけた2本目の斧が現れ極太と防ぐが大きく後退してしまう。



「おいレグナ、あの忌々しい斧をどうにかなんねぇのかよ」



「半人前、貴様はいつも我頼みだな。少しは自分で考えよ」



「ハッ!! 俺ぁ今まで面倒な事は全て人に押し付けてきたんだよ、なんでそんな面倒な事俺がしなきゃいけんぇんだよ!! いいか、面倒ごと、責任なんて自分が背負っていい事なんて」



自慢げに説教をしていると斧が襲い掛かってくる。1本目は避けても2本目にどうしても捕まってしまい攻めれない。



「なら言ってやろう、貴様と相手では技量が違いすぎる。あやつめお前の情報を仕入れ丹念に鍛え上げてきたわい。ここまで差があると覆すのは不可能に近いぞ」



「糞の役に立たない竜だな……どうする!! ここに頼れる他人様なんて……いるじゃねぇか」



後方にいた連合軍に振り返れ笑顔で近付く。そして力任せに一人の兵士の腕を掴み上げバルサスへ振り返ると同時に重装備の兵士を勢いよく投げつけた。重量を感じさせないほどに速く正確に目標まで飛ぶ。


一瞬焦るが即座に反応し儀腕を正確に操り兵士を叩き落す。だが目の前に広がる光景は何人もの兵士が投げ込まれてきていた。しかも選んだように重装備の兵士ばかり。



「や、やめぇろおおぉおおお」



抵抗する兵士には容赦なく攻撃し動かなくなってから投げつけるとカズヤは他人様を自分の好き勝手に使う。後方には兵士がいくらでもいる。弾なら無限にあるぞと投げまくる。



「この腐れ外道がぁあああああ!!」



バルサスは叫ぶ。人間を物のように扱い満面の笑みで投げ込んでくるカズヤへ……人間の弾幕を張られ儀腕で叩き落していくが止まる気配がない。重装備を何度も叩き落していくと負荷は当然かかり儀腕から怪しい音が漏れ出す。



「薄汚い傭兵が何を言う。しかもその中でも外道中の外道の魔王軍が腐れ外道とはなんとも心地のいい褒め言葉だな!!」



儀腕の次にきたのが斧だった。わずかではあるが刃が欠けているのを一瞬見え焦りの舌打ちを鳴らしながら人間弾幕を迎撃していく。圧倒的有利な立場が変わりジリ貧になったバルサスは考える。


この状況をどう変える、この弾幕をどう防ぐ、斧が重装備を叩き落す金属音が少しづつ変わってきていた。高音から低音へ……それは斧の切れ味が落ちてきている事を知らせていた。



「こんな所で終われるか!! 何年、何十年傭兵やってきたと思ってんだ!! おおおおおお!!」



状況を変えるのはカズヤ自身への攻撃が必要だが飛んでくる兵士を一人でも漏らせば鋼鉄の塊が竜の力で加速した状態で叩き付けられ必ず隙が生まれカズヤが見逃すわけもない。


状況は更に悪化していく。今まで片手で兵士を掴み上げていたカズヤは両手で一人づつ掴み投げ弾幕を更に濃くしていく。生身の腕と指で正確に操っていた儀腕からは煙が上がりだし肩からも熱さを感じる。



「所詮は機械なんてそんなもんよ!! そらそらぁああああ!!」



ここが勝負所と判断し人間弾幕を張り続けていく。



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