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カズヤが手に握るのは金属の塊、ただ金属を溶かして固めただけだが大きさが人間と同じ。太く長く黒光りする鈍器だった、使いやすさ武器としての性能など全てを無視しウィルが破壊のみを追及し仕上げた単純な鈍器。
一応は手を握る箇所はあるがそこから上は2メートル近くある金属の棒。人ならば持ち上げる事すら不可能な金属の棒を「極太」と名付け片手で背負い一気に丘を降りていく。
目の前に広がるのは砂煙に隠れた連合軍と魔王軍の影だった。味方はベリルだけだったがカズヤは恐怖はない。ただ視界に入る全ての人間が敵とならば単純でいいと砂煙の中に入り込む最初の攻撃で数人の影と煙が一気に消えていく。
「ふぅ~っ……待ってろよテツの糞野郎と汚ねぇルーファス!!」
次の攻撃が数人に纏めて当たると極太に大量の血と肉と骨が乗る。そしてまた次と暴れまくっていく。
「なんという無様な戦い方だ、我が契約者ながら知恵の足りない奴だな」
カズヤは技術を捨てた。技比べではテツに追いつけないと知り自分の最大の武器を活かす事にし暴れまくる。竜の腕力と無限とも思える体力、その二つを信じて自分なりの戦い方を会得しようと戦場に突っ込んでいく。
「おっさんそっちは頼んだぞ」
「お前もちゃんとやれよ」
二人の目的は金。ベルカ側の仕事も出来なくなってしまったので魔王軍と連合軍からしばらくの生活費を強奪しようという作戦。カズヤは魔王軍へベリルは連合軍の拠点となっているはずの場所へ突き進む。
「ハッハー!! どうしたどうしたぁ~名高い魔王軍!!」
極太の長さは他の武器と比べても驚異になり間合いに入った瞬間に上半身が下半身から千切られるほどの力任せの攻撃がありカズヤは一直線に進んでいく。後ろの連合軍の兵は突然現れたカズヤが道を開いてくれたが混乱してしまう。
それは戦いではなかった。一方的な虐殺……カズヤという個に100を超える傭兵達は蹂躙され続けていく。ただ極太を横殴りに振り抜くだけで人間は消し飛ぶ。
「んんんん!!」
「どうした半人前!!」
「最高だ!! この他者を一方的にそして圧倒的に攻撃できる感じ……たまらん!!」
砂煙を巻き上げながら血と肉で身を纏ったカズヤはまさに無敵だった。敵の数など問題ではない。何人襲いかかってこようが人間と竜の差は埋まらない、鼻息を荒く前進を続けていくと目の前から傭兵が消え変わりに弓兵が現れた。
「放てぇええええ!!」
その声と共に無数の矢がカズヤめがけ疾走していくが目標に届く前に叩き落とされてしまう。反射神経も強化され飛んでくる矢が止まっているように見えたカズヤには造作もない。第二射が放たれる前に懐に飛び込み粉砕。
「お前が魔王様が言っていた馬鹿か」
短髪の金髪男が現れるとカズヤがあっと声を漏らし指を指す。
「あんた確か」
「お前は確か試験に合格した中にいた……何してんだせっかく魔王軍に入れるチャンスだったのに」
傭兵達が暮らしている街で出会った試験官バルサスが臆してる傭兵の中から現れた。




