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ルーファスの父は竜を研究していたが初代魔王に竜もろとも滅ぼされてしまう。息子であるルーファスは国の再建と同時に竜の研究を引き継ぎある過程へと辿り着く。竜は作れるという幻想に取り付かれた。人体実験まではいかなかったがその悪魔の過程は脳裏に残る。
しかしまだ勇者だったテツに裏切られルーファスの中で悪魔の研究のスイッチが入る。問題はテツではない。側近のフェルだった、人間など相手にならいほどの力を持っている生粋の竜。これを倒すためには作るしかない。
ある一人の女性に目をつけルーファスは王という力で手篭めにして子を孕ませるまで計画を進める。女には父の研究時代から残っていた竜の血を飲ませ続け人体実験も躊躇なく繰り返した果てに一人の子が生まれた。
「それがベリルですよ。カズヤ、君には想像も出来ない時間と金がかかってるんですよ。ベリルいい加減お父さんの言う事聞いてくださいよ」
「ふざけるなよ!! 勝手に人を竜にしといて戦えってか!! 母さんは出産の時にお前に殺されたんだ、よく顔出せたな……殺してやる」
倒した騎士達の死体から剣を拾い上げ構えるとルーファスの背後から数人の騎士達が現れ見たことのない武器を構えていた。
「対竜用に開発した武器です。調度いい、まずは我が娘で試してフェル戦へのデータを取らせてもらいますか」
娘といいながら向ける視線には感情が一切なく片手を上げると騎士達が武器を構えベリルも踏み込むために身を低くした瞬間にカズヤが吼えた。
「ふざけんじゃねぇえぞおおおぉ」
太ももを貫通し地面に深く刺さった極太槍を掴むと力任せに抜いていく。槍は重く中々抜けないがカズヤに異変が起こる。長髪の黒髪は逆立ち、瞳は見開き、力を入れて食い縛る口からは炎が漏れだしていく。
「おぉ!! 半人前!! 竜に進化し始めているぞ。いいぞ……フハハハ!! さぁもっとだ!!」
肩の筋肉が異常な盛り上がりを見せ掴んでいる指が鋼に食い込み亀裂を入れた時に地面と自身の足から槍を抜いて見せた。そのまま槍を力任せに投げつけるとルーファスの騎士の一人に突き刺さり樹木に張り付けにした。
「おい女ベリルとかいったな、俺と一緒にこないか」
「はぁ~頭おかしいんですかぁ~さっきまで私を犯そうとしてた奴が何言ってんだバァーカ」
「わかった!! もう襲わないと約束する!! 同意の上でなきゃ俺は襲わない、これでどうだ」
この状況で頭がおかしくなったのかとベリルは溜息を吐き頭を冷静にする。ルーファスはあのわけのわからない武器を持たせた騎士達をまだまだ送り込んでくる。自分一人の力では切り抜けない。
「カズヤとか言いましたね。お前が求める対価はなんだ」
「お前の体だ」
「……言ってる事が矛盾してますよ屑野郎」
茶番を見せられたルーファスは腕を組みいつもの笑みを消して黙る。
「お前が同意の上でやらせてくれるって言うまで頑張るからさ!! お前はその……最高の女だ!! 俺が見てきた女の中で最高だ!! お前以上の女なんていない!! そんくらいの価値があるんだよ」
「女の体を知らないとここまで醜くなれるんだね。いいよ、とりあえずこの状況を抜け出してからだね」
「ヘヘやったぜ」
ルーファスの顔は美しい白から赤色に変わり血管を浮かび上がらせ口調は冷静だった。
「カズヤ、自分が何を言ってるのかわかってますか。つい先日雇ってやったばかりではないですか」
「悪いな。あんたみたいな得体の知れない奴なんかより極上の美女を取るぜ。竜だろうが関係ねぇ、契約は破棄だ。なに気にするな、派遣社員がばっくれたとでも思ってくれ」
「……ベリルは生け捕りだ。カズヤの方がはできるだけ殺すな」
ルーファスの合図と共に残っていた騎士達が動き出した瞬間にカズヤはベリルを抱きかかえ一気に加速していく。それは全てを逃亡に使い森の中を風のように駆けていく。
完全な竜に一歩近付いたカズヤの筋肉から生み出される速度は人間には到底追い付けず逃亡は成功した。森の中を疾走する中でカズヤは笑う。
「ハハハハ!! 見たかよルーファスあの顔!! あーゆ上の立場から大切な物を奪うってのは最高な気分なあ!!」
カズヤは雇ってもらった恩をわずか数日で最悪の形で踏みにじる。




