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雇い主からの最初の仕事はある人物を倒してくれ。生死は問わず完膚なきまでに徹底的に敗北を味わさせてほしい。そんなシンプルな依頼を受けカズヤは森の中にいた。日光が降り注ぎ日本では見た事のない幻想的な景色を楽しんでると音が聞こえてくる。


金属音……それも激しく叩かれる重低音が森の先から響いてきた。支給された両手剣を背中から抜き進んでいき戦闘態勢に入る。一般の物より大きめに作られた両手剣を握り締め空から照らされる日光を縫うように進んでいく。



「助けてくれぇえええ」



一人の騎士が地面を這いながら腕を伸ばしてきた。鎧は何箇所も歪んでいた、どれほどの衝撃がわからないが本来防御の目的である鎧は役目を果たせてない。



「うるせぇ静かにしてろ」



カズヤは助けを求める騎士に蹴りを入れ黙らせると身を隠しながら進んでいく。



「あ~あ雑魚ばかりだわぁ~私強すぎだわぁ~まだ本気でしてないけどなぁ」



倒れている樹木に腰をかけて短剣で木刀を削る女がいた。背後から奇襲をかけて頭に一撃食らわせ終わらせようとしていたカズヤの思考が停止する。



「強すぎて困るわぁ。本気出した事ないしぃ」



腰まで伸びている金髪が日光の反射で輝く。日本人には到底真似できない北米系のスタイルのよさと切れ長の瞳に白い肌……生まれが違う。どこかの金持ちで親もとんでもなく美形だろうと舌打ちを慣らす。


これほどまでに外見だけで差が出るのかと思うほどに女は輝いていた。口調はふざけているが声色も美しく、頭の先から中身まで全てが違う。生まれながらにしてカズヤに無い物を全て持っていた。



「そこの隠れているおっさんバレてるから出てきなよ」



カズヤが茂みから巨体を出すと女は一瞬止まると笑いだす。



「キャハハハ!! 今度はどんな奴がくると思えば汚いおっさんじゃん!! なになにどうしたの!! 食べ物でも探してる浮浪者ですか」



外見は最上級だが中身は最低とわかり腰に手を当てカズヤはわざとらしく息を吐く。



「お前をぶっ殺せって言われてきたんだが気が変わったわ」



「は~笑ったわ~……んでなんの気が変わったのおじさん」



「俺が勝ったらやらせろ!! 股開け」



女という生物を舐めきった態度に女は腰を上げる。



「わかりやすいね。今まで名誉ある騎士様達がいろんな理由できたけどおじさんみたいに単純で低俗な人はいなかったよ」



「お前みたいな上玉を力で倒してやれるなんて興奮するんでね。俺はそーゆの大好きなんだ」



「この外見のせいでそーゆ男は今まで何人かいたけど全て玉を潰してやったよ」



カズヤの装備は重装備、重量で機動力が奪われる装備だが竜の力ほぼ無に出来てしまう。女の装備は革で作られた鎧。手には木刀と腰には剣がある。二人は構えると少しづつ距離を詰める。



「ふぅ~」



大きく息を吐き両手剣を大きく掲げ飛び出した地面に叩きつけるように振り抜くと目の前にいた女の姿は消える。残像すら見せず瞬間移動かと思うほどに消え周囲を見渡すといない。



「いやぁ~わかりやすいわぁ~おじさんの攻撃酷いわぁ」



背後から聞こえ振り向き構え直すと女は笑う。



「ノロマ」



その一言でカズヤのプライドを刺激した。

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