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10章

嗅ぎ慣れた土と布の臭いで目を覚ます。背中には布切れ1枚だけで固い土の上に寝かされランタンが吊るされ影が微かに揺れ動く光景を見てカズヤは自分がどこにいるのか理解する。


どこかの野営のテント内であろうとまだ疲労が残る体を起こすと上半身裸にされ敷かれた布には血が一面赤に染めていた。自分の体を確認すると切り傷や槍に突き刺された傷跡が無数にあり見ているだけで気が滅入った。



「起きたか半人前。あそこまで醜態を晒しての目覚めはどうだ? 我に教えてはくれないか」



「……うん、まぁ追い詰められたらあんなもんだろ。むしろ正常な反応だったと思うぞ」



「呆れたわ、恥じるわけでもなく冷静に振り返るとは大物だな我が半人前の契約者は」



レグナの嫌味も気に触らないほどにカズヤは安堵していた。あの絶望的な状況から生還できた事は大きい。傷だらけの体で立ち上がると外からの音を聞き向かう。



「嗅ぎ慣れた戦場の臭いだな」



「なにを言うとる阿呆が。貴様数えるほどしか戦ってないではないか」



「うるせぇんだよ!! あ、お前俺を見限ったよな? あれどーゆ事だ」



テントが何箇所にも設置され武器が収められている木箱も多い。傭兵達がまったくいないのは騎士達で統一されていたからだった。そこには薄汚い空気も喧嘩もなく規律が支配している。


どの騎士にも緊張が張り付いてるように規則正しく動き無駄口もなく淡々と作業をしていた。初めて本物の騎士を見てカズヤが関心していると老人が近付いてきた。



「いやぁ~危ない所でしたねぇまさに危機一髪!!」



肩まで延びた金髪のせいで前髪で微かに青瞳が隠れている老人が笑顔で近付いてくる。歳は50を軽く超えているように見えるが随分と態度は軽く親しみやすささえもカズヤは覚える。



「あ、助けってもらってありがとうございます」



「頭は下げないください、私達も利益を求めて助けにきたんですよ」



「利益?」



地面に座り込むと老人はカズヤを指を指す。



「貴方ですよ遠藤カズヤさん。竜を飼っているいるらしいですね、是非ともその力が欲しい」



「あんた何者だ」



「連合軍のトップベルカのルーファスです。これでも王様なんですよ~ハハ驚きましたぁ」



歪んだ笑みで子供のようにはしゃぐ老人ルーファスを見てどこかが狂っているか壊れていると感じたカズヤは正面に座る。



「傭兵なんてやってたって先はありませんよ。先程のようにいつ雇い主に裏切られるかわからないんですよ」



「確かに……でもあんたが裏切らない保証はあるのかよ」



「カズヤ、貴方の竜の力はどんな財宝よりも価値があります。あの憎き魔王テツを倒せる力なんですよ? そんな貴方を裏切って私達ベルカになんの得がありますか」




言っている事は筋は通っているが理屈ではなく本能で信じられない。そんな印象を持つがルーファスは口を止めない。



「とりあえず騎士になって頂き訓練を受けてもらえませんか? 体の性能は飛び抜けているが情報によると戦いは素人と聞きました」



「はい、その通り。力任せのみの戦いです」



「それではいけない。そうですね~……働きに応じて報酬は出します。加えて基本的に訓練をしているだけでも生活に困らないほどの金も出します。どうでしょう、安定しない傭兵とどちらを選びます」



話を聞いた瞬間にルーファスの手を握り笑う。



「よろしく大将!! その条件で構わない」



「この半人前は誇りという物を生まれる以前に落としてきたのか」



「黙ってろ!! テツの糞野郎に辿りつく前に飢え死にするよりかはマシだろ」



ルーファスも笑みを返すがカズヤは背筋を詰めたくする。ルーファスという男を本能的に恐れた。単純な戦闘力ではなく、人間として怖かった。



「ではついてきてくださいね」



遠藤カズヤ。竜の次は名誉ある騎士になる。

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