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「ひぃひぃ~まったく竜の馬鹿力はまいったもんだぁ!! おいお前らこのボケを足止めしとけ!!」



テツは背中を向け呼び出した部下達の隙間を縫う様に走り抜け消えていく。その清清しいまでの小物ぶりにカズヤは驚きを通り越し怒りで叫ぶ。



「ふ――…ふざけるな!! テツてめぇそれでも魔王か!!」



「ヘヘ、言ってろボケがぁ~お前と勝負した所で得る物なんざ何一つないのに戦うわけねぇだろ~じゃあな遠藤~生きて再び出会えたら今度は本気で相手してやる。多分な」



目の前は塞ぐは屈強な傭兵やテツの私兵。手に握る武器は怪しい輝きを放ち鎧にも怪しい光がありレグナが声を上げた。



「用心しろ半人前、こやつらから魔法を感じるぞ」



「テツの野郎の警護だから強いのは当たり前か……あんの糞野郎がぁ!! どこまで腐ってやがる、どけよ」



まっすぐ歩き正面に立っていた傭兵の鎧を拳で軽く小突く。傭兵や私兵達はカズヤを一人なのか攻撃もせず兜の下で笑う。



「お前らの雇い主見たろ。お前らあんな奴の下でいいのか? まぁいいや話してる時間ももったいねぇわ……どけってんだよ!!」



拳を真っ直ぐ力の限り走らせ鎧のぶつけると鎧は八方の砕け散り破片が花火のように爆破する。拳が中身の肉体に届く前に衝撃で傭兵は吹き飛び後方を巻き込み飛んでいく。


それを合図に数人が武器を振り上げ襲い掛かってくる。巨大な斧からは炎が噴き出し槍からは鋭い氷の刃が無数に現れ飛んでくる。



「半人前避けろ!! いくら竜でもお前の体はまだ人間の形の状態だ!!」



「こんな狭い所で避けられるか!!」



手前の斧の男に飛び掛り力任せに馬乗りなると拳を振り下ろし兜ごと叩き潰し即死。次と振り向いた瞬間に氷の刃が腹に刺さる。大きさは小さいが連射される。斧の男の死体を掴み上げ盾代わりに使い突撃していく。



「まずは逃走が最優先だ半人前!! ここは地下だ上へ向かえ!!」



盾にしてた死体が真っ二つにされ臓器と血を全身に浴びカズヤの力任せの戦法が足を止める。次は双剣、紫の怪しい光を放ち切れ味が異常なほど上がってるように見えた。



「どけよ、テツの野郎が逃げちまうだろうがぁ!!」



その双剣は鋼鉄すら切り裂く斬撃の魔法だったが使い手は人間。カズヤは双剣が届く前に竜の脚力を見せそのまま肩から突っ込む。双剣の男を壁まで叩きつけると大量の吐血をし即死。


出口はどこだと顔を上げた瞬間に今度は顔面へ固い石のような物がめり込む。脳が揺らされ頭が割れたかと思う衝撃に目の前が霞み体制を立て直した瞬間数人の私兵が武器を手に飛び掛ってきた。



「糞ったれがぁああああ!!」



肩が槍で貫かれ電流を流されても、背中を斬り付けられてもカズヤは止まらなかった。竜という力で真正面から叩き伏せていく。炎も氷も雷も問題にならない、カズヤが用いた魔法は拳という物理だった。


何人倒したかわからないまま血が噴き出す体を引きずり階段を登る。攻撃はずば抜けているが防御の元となっている体が血を流すたびに重さを増す。



「血を流しすぎだ半人前、竜でも血が無くなれば死は必然ぞ」



「う、うるせぇ」



階段を上りきると夜空が出迎える。どこまでも続く乾ききった大地の先から灯が見え増援が迫ってきていた。周辺も見渡してもテツはいなく抜け出してきた牢獄からはまだ残る傭兵達が迫ってきている。



「そこの馬に飛び乗り風の如く逃走するのだ!! 多数の魔法相手は分が悪いわ!! まったくお前を選んだ不幸で先祖に顔向けできんわ」



言い返す力も逃走に使いカズヤは夜空の大地を駆けた。 

 

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