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寝起きのように睡魔の心地よさから強制的に目覚め二度根の誘惑に再び眠ろうとすると痛みで叫ぶ。まだ顔の形が腫れ上がってる部位や骨が軋む感触が伝わってくるとあの拳を雨のように降らせていたフェルの顔を思い浮かべため息をつく。


水滴が落ちて床に弾ける音を聞き周囲を見渡すと薄暗い。錆びた鉄の臭いが充満し血や腐敗の臭いで気分は最悪になるが、暗闇に少しづつ目が鳴れてくると自分の両手が何重にも重ねられた鎖で壁に張り付けられていた。



「え~~~え~~遠藤ぉ~~~」



正面に木製の椅子を後ろ向きにし背もたれに顔を乗せ両手を広げ出迎えるように一人の男を見ると鼓動が早まり汗が吹き出す。



「ようテツ、会いたかったぜ」



「俺は会いたくなったけどなぁ~誘導員の資格取っただけで偉そうにする遠藤先輩になんざ興味ないんでな……でもまぁ~お前が竜になってたとはなぁ」



テツは片手に油が乗った極上の肉を素手で掴みかぶりつき、もう片方に持っていた瓶を勢いよく飲み干し笑う。



「ここなぁ~俺が初代魔王に敗れて幽閉されてた牢獄なんだわ~酷い目にあったが思い出が詰まった場所なんで残してたらまさか遠藤先輩を幽閉するとはなぁ~ハハハハ」



酒を飲んだテツは機嫌がよくなり笑いながらカズヤを指を指す。



「まずお前の人間の部分を取り除き竜の部分でフェルの大切なお父さんを復元できるかどうか試す。わかるか? お前の体はほとんど竜だから~最後の人間の部分……脳みそを取り除くんだよ」



「すげぇ楽しそうだなテツ。死んだような目してた誘導員時代とは大違いじゃねぇか」



「ハハハ!! 誰も俺に逆らえない~逆らったとしても俺が一声かければホコリのように飛んでいくんだぜ~まさに王様気分だぜ。こんな事一度でも知ったらやめられねぇわ」



テツの勝ち誇った顔と台詞を聞きカズヤが大笑いすると二ヤついた顔が怒りに変わり椅子を蹴飛ばす拳を振り抜いた。



「何がおかしいんだ」



「ボフォ!! まさかこんなみみっちい奴が魔王なんて呼ばれてると思うと面白くてな……おいテツ、てめぇそんなくだらない理由で自分の親父と嫁さん殺したのかよ」



「遠藤ぉ~お前はなぁんもわかっちゃいねぇよ~自分の好き放題に世界を操れるんだぜ? それに比べたら親父だの嫁だの小さい小さい~アハ、ハハハハ!!」



人の死を何度も繰り返したであろう牢獄でテツはホロ酔い気分で踊る。千鳥足で下手糞なダンスを舞いながら笑う。その笑顔に微塵の迷いもなく幸せが張り付いていた。



「……ありがとうよテツ。心のどこかで元同僚を殺すなんてって迷いがあったが、今のお前見て迷いがなくなったわ。そこまで屑に落ちてくれてありがとう」



「ウヘヘ~お前何言ってんだ~馬鹿じゃねぇの~そんな格好で俺を殺す?」



「フェルは今どこにいる」



絶対の優位の立場で気分がよくテツは口を滑らす。



「あいつは疲れたらしく城で寝てるぞ。まぁこんな汚い所女の子は嫌いだろうな」



両腕に力を込め肉を鎖に食い込ませ血を垂らす。奥歯を噛み締め血管を浮かべる姿にテツは笑う。拘束に使われてる鎖は普通ではない強度も何倍にも高めた物だと教えてやろうとした瞬間。



「テツ~~~~ッ!! 竜の腕力を甘くみたなぁ~ああああああ!!」



張り付けてあった壁ごと破壊しカズヤは牢獄に降り立つ。その姿を見てテツの酔いが瞬時に冷め拳を上げる。即座に間合いを詰めカズヤの顔面へストレートを叩き込み連打を繰り返す。



「ケッ!! てめぇみたいな素人が馬鹿力だけで何ができる!!」



拳は止まらない。顔面から腹、脇腹、殴る。ひたすらに殴り続ける。



「かりぃなぁ」



カズヤの力任せに振り抜いた拳がテツの腹に触れた瞬間に吹き飛ぶ。牢獄を突き破り分厚い石の壁に激突すると倒れ込む。



「ガッ!! パンドラ持ってくるべきだったなぁ~……やべぇ」



下はボロのズボンに上は裸のカズヤが倒れてるテツに近付いてくると叫ぶ。



「うぉおおおおおい!! ありったけの兵士連れてこいやぁあああああ」



テツの叫びで地下にあった牢獄に次々に傭兵や兵士が雪崩込んできた。


 

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