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扉を勢いよく蹴破り玄関ホールに入ると国が滅びかけている振動で天井を支えている柱の欠片と埃が舞っていた。まだ荒らされてないが中央には王らしく中年男性と数人の騎士達が待ち構えている。
「おいお前ら、そのおっさんについてても意味ないぞ。今からここに薄汚い傭兵が押し寄せてくるからな、逃げるなら今の内だ」
ニックの言葉に騎士達は顔をつき合わせ数秒すると武器も盾も投げ捨て逃げていった。
「さて王様よぉ~あんたに聞きたい事があるんだわ。魔王の居場所、どれくらいの兵士もってるか……知ってる事全部吐いちまいな」
「ふふふ、ふざけるな!! こんな事して魔王が」
言葉を最後まで言う前に蹴りを顔面に入れられうずくまった王の髪を掴み上げニックは酒臭い息をはきながら言う。
「安心しな、俺達はその魔王を殺しにいくんだよぉ~ハハ!! だから情報ゲロっても問題ないってわけよぉ~それともここで死ぬかい」
腰から短剣を抜き喉元に突きつけると王の心は折れた。
「わかった!! なんでも言う!! 金品も好きなだけもってけ、だから命だけは」
「お~し話のわかる王様じゃねぇか!! おいカズヤ、城ん中調べて金目の物その怪力でもってこい」
油汗と涙で溢れた王の顔が安堵の表情に変わった瞬間にニックの視界が真っ赤になる。それは王の喉元から吹き出す血。刺した覚えがないと手元を確認すると喉元に無数の刃が絡みついていた。
「まったく困りますね。使えないばかりか裏切るとは救いようのない男です」
腰まである銀髪とは真逆に全身黒の鎧に包まれた少女がどこからか現れた。手元には剣、柄からはワイヤーが伸び小さな刃が無数に繋がれていた。ニックは返り血で奪われた目元を拭い反射的に下がり距離をとる。
「おや、見た顔ですね」
少女はカズヤへ視線を泳がすと見抜かれたカズヤが思い出したかのように震え上がる。
「……てめぇあん時の化物か」
「フェルといいます。それよりおかしいですね、貴方から同じ臭いがします」
漆黒の甲冑に身を包み銀髪を巻き上げるように無数の刃を飛ばしてる光景は素直に美しいと思うがその美しさが逆に恐怖を煽る。ソウジが逃がしてくれたあの場所にいた巨大な竜だとわかる。同族になったせいか直感で気付く。
「久しぶりだなフェル。随分と大きくなったものだな」
レグナの声でフェルは表情は余裕の笑みから驚きに変わる。
「――ッ!! どーゆ事ですか、死んだと聞いてましたよ」
「この半人前を利用して一部だけなんとか残った形となったのだ。話はウィルから聞いておる、フェルお前魔王側についたそうだな」
「もし誰かが悪戯心で真似ごとしてるのなら今すぐ辞めないと死んだ方がいいと言うほど痛めつけた後更に手足をもぎ取りますよ」
研ぎ澄まされた芸術品のような美しい顔に似合わず残酷な言葉を出すとレグナを声を荒げ笑う。
「フハハハハハ!! 我の真似事を出きる輩がいるか、しかし本当に久しいなフェル」
「お父さん」
かつて初代魔王に討伐された竜レグナはカズヤという器を利用し娘であるフェルと再会を果たす。




