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――ドルトル帝国
魔王軍の傘下に入り甘い汁を吸いまくった国があった。他国を脅し全て魔王という名を使い食料、女、金を巻き上げ王族だけではなく国民も堕落し働かずとも金が他国から水のように流れてくる事に笑いが止まらずいた。
戦争になれば魔王軍から援軍を借りて圧倒的な力で勝利し蹂躙して肥え太っていく。王族はとことん魔王に頭を下げた。誇りも捨て全ては自分達の安泰と至福の時間のために魔王の尻を舐めるが如く服従していく。
「止まらないでください!! 一気にいきます!!」
そんな国にシゼル率いる傭兵部隊アベンジが襲いかかる。魔王軍の最強の部隊だったがニノを殺された事により離脱し娘のシゼルにつき復讐を誓う。ドルトル軍に対し真っ向からぶつかる。
量はドルトルが多いがシゼル率いるアベンジは一人の一人の力があり、更に陣形や大規模戦闘での経験で少しづつだがドルトル帝国の生皮を剥ぐように進軍していく。
「ガハハハ!! 我が求めていたのはまさにこの空気!! 血潮!! 悲鳴!! 即ち闘争だ」
そんな戦場でカズヤは一人孤立していた。人が埋め尽くす中で巨大な竜の骨……竜骨と名付けた棍棒を振り回していた。
「いいぞ半人前!! その調子で我の一部で屍を積み上げてやれ!!」
技術もなく、経験もなし。カズヤがしている事は巨大な竜骨を振り回してるだけ、しかしその一振りは人間を軽々と空に向かい飛ばし、鎧は紙のように折り曲げられていく。
「いいか半人前よく聞け」
「半人前言うな!!」
巨大で無骨であまりにもわかりやすい竜骨を振り回しながらレグナと対話する余裕も出てくるほどに圧倒低していた。
「お前はまだ竜としては半人前だ。いいか、お前は人間の技術やら記憶……積み上げてきた物で戦う者ではない。竜という種で戦うのだ、わかるか?」
回り全て敵に囲まれていても恐怖はまったくない。個人の技術や経験では比べるまでもなく上の連中が視界を埋め尽くすほど襲ってくるがカズヤの前では無意味。
「人間と我らとでは生物としての格が違うわ!! さぁ見せてやれ!! 人間共を絶滅寸前まで追いやった竜の力を」
目の前に人の壁が出来るほどに大勢で特攻をかけてくる。兜の隙間から見える瞳は死を覚悟し手に持つ剣に命を吹き込んでいるようだったが……竜骨が一度振り抜かれると人の壁は崩れていく。
血を流しながら砂城が波に飲まれていくように消えていく。叩きつけ、磨り潰しと数え切れない屍を作り出しカズヤはその上で立つ。
囲んでいた敵兵の足が止まる。目の前で仲間が鎧ごと破壊されて死ぬ光景に恐怖で体が固まった瞬間を見逃さずカズヤはいく。
「これが竜の力ってやつか――…ハァアア!! ハッハッァアアア!!」
力に溺れていく。圧倒的な力を一方的にぶつける快楽に酔いしれ竜骨を振り回す。全身を敵の返り血と鎧の破片で色飾り悪魔の化粧をし笑う。
「いいぞ半人前!! お前は元々欲望という才能に秀でてたようだな。こんなにも簡単に我を受け入れるとは思わなかったぞ」
「ハッハー!! 誘導員してる奴は欲望の天才だらけだぜ!! なんてたって毎日世の中ぶっ飛ばないかなとか考えてる連中だからよぉおおお!!」
ただ振り回す、剣術でもなく槍術でもない。巨大な竜骨を片手で振り下ろし、薙ぎ払い、ドルトル帝国兵の牢獄にいたはずのカズヤは純粋な力で突破していく。それは戦いではなく竜が人間を捕食しているようだった。
他人がどうなろうと知った事ではない。血と骨と鋼の雨を降らしながら思う。待っていろテツと……憎しみの篭った鬼の形相でカズヤは笑う。




