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情報屋の馬に乗せられ1日走り続けソウジを見捨てた後悔も疲労で磨り減ってきた頃に小さな小屋につく。フラフラと情報屋に後についていき小屋に中に入るとカズヤは壁にもたれ床に座り込んだ。
「ようご苦労さん」
片手に瓶を持ちながら酔いながら椅子を後ろに揺らしながらバランスをとっている男ニックが手を上げると情報屋が近付き、見てきた事全て話すと黙って金貨を渡すと情報屋は消えた。残されたニックは再び酒を飲み続けていく。
小屋の中には疲労でうずくまったカズヤとニックだけ、互いに無言で溜息だけが音を鳴らす。そんな無音を最初に破ったのはニック。
「お前爺さんの知り合いなんだったな」
「……」
「ウヒヒ~どうだった爺さんの死に際は? 派手に散ったかい」
ふざけた物言いに疲労の体に気合を入れ立ち上がり腰から剣を抜いて迷わず斬りかかった。もう何度も何人も殺してきたんだ今更酒浸りのおっさん一人問題ないと振り下ろすが斬れたのは椅子だけだった。
一瞬消えたと思い辺りを見渡すといない。振り返った瞬間ホロ酔いの腹が立つ笑みがあり切り替えしの斬激を放つが空振り……狭い小屋の中でカズヤはニックを追い戦うが一度たりとも剣を触れさせてはくれない。
「くそっ!!」
「アハハ!! なんだその剣筋は~酔いがどんどん回っていくじゃねぇか~……あぁ気持ちいなぁ」
体力が底をつき床に剣を突き刺し顔から汗を落とし膝立ちの状態で止まる。ニックはふざけた足取りで小屋を踊る。
「たくあの爺さん、最後の最後まで面白かったなぁ~……ソウジよ。あんたの馬鹿顔だけはしばらく忘れようがないな」
二人だけの小屋の扉が突然蹴破られる。カズヤが反射的に顔を上げるとそこには見た事がない美女がいた。褐色の肌に銀髪が反射し神々しい光を纏った女がニックに向かう。
「あ、ボス~どうしたん――…ッ」
有無を言わさず殴られニックが壁まで飛ばされる。美しい外見を醜く崩すように顔は怒りで燃え上がっていた。倒れていたニックを掴み上げ何度も殴り蹴り動けなくなるまで続く。
「ニック、なんで私に話さなかった」
「あ……ボス、ヘヘ、口止めされてましてね~……痛い」
顔を殴られ続けてもふざけた笑顔で言うニックに更に拳を上げ振り被るがそこで止まる。
「……お爺ちゃんはどんな最期でしたか」
「およそ1000人という敵相手にたった一人で突撃したという考えられない大馬鹿をやったそうですボス。誇りに思ってください貴方の爺さんは勇敢でした」
珍しく真面目な声を出してシゼルに言った瞬間に殴り飛ばされ再び壁に激突する。顔を伏せ肩を震わせ少し立つとカズヤに向く。
「誰ですかこの汚いおっさんは」
「あぁ~なんか爺さんの友人らしいです。どーしますか? 先程剣筋見ましたが酷いもんですぜ、到底使い物になりません」
「誰だお前」
カズヤの問いにシゼルは見下ろしながら真っ直ぐ見据えて答えた。
「私は鉄シゼル。貴方の友人鉄ソウジの孫になります」
銀色の魔女を見上げ目を見開く。その美貌はソウジに微塵も似てなく、どこか野生の獣のような鋭い目つき。その眼光に射抜かれカズヤは立ち上がる。
「嘘だろ、あんたがソウジさんの」
「さてニック戻りますよ。そのおじさんを一応は連れていきます、罰として面倒見てくださいね」
「ここまでボコボコにしてまだ言いますか~厳しいなぁボスゥ~」
友人を見捨てて逃げてきた先に恩人の孫と出会いカズヤは糞みたいな人生に一筋の光が差した。




