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そこは傭兵達の楽園だった。城壁に囲まれ外界との壁を作り中は戦う事でしか生きられないならず者が集まり世界を構築していた。食い物屋も宿屋も全て傭兵達が経営し戦いで得た金で生活を成り立たせていた。
街は傭兵達が暮らしてるとは思えないほどに清掃が行届き店が両側の並ぶ大通りは多くの傭兵達がいた。ソウジが見てきた傭兵達とは違い。殺気がない、今までは武器を自慢しあったり殺し合いをいつでも始めるような空気だったが違う。
皆ごく普通に生活しているような住民に見えた。傭兵と言われても信じられないような青年もいれば気のいい老人もいる。そんな壁の中にソウジも連れてこられ一緒にきた連中も驚く。
「最初にきた奴等は皆驚くもんだ。俺もそーだった」
「なぁバルサスさん、本当にこいつら傭兵なのか」
ソウジの疑問をバルサスはさえぎる様に足を速め蛇のようにならぶ列までいく。
「ここに並んどけ、今日からここがお前らの家……寝床もでないな。まぁお前らが所属する国だ」
「国? 傭兵達が国とかおかしくないか」
列に並ぶ傭兵達はソウジ達と同じ初めて連れてこられた顔ぶれで殺気だっていた。
「面倒臭がりの魔王様がな、血の気の多い連中を一箇所に閉じ込めたのが始まりだったらしい。そんな連中が一箇所に集まれば戦い殺し合うってのが相場が決まってるが、不思議と時間と共にこーゆ国が出来上がってきたらしい」
列が進んでいくとボロボロの椅子と机に座る初老の老人が杖を膝に乗せてソウジに顔を見て笑う。
「バルサスよ~こんな俺と変わらない爺さんが本当に試験通ったのかよ」
「……この顔を見ろ。俺が直々に倒されたんだよ」
「ヘ? ブハハハ!! そりゃ面白い!!」
初老の男は一枚の紙を差し出し笑う。
「まぁ契約書みたいなもんだ。読まなくていいけど規則なんで貰ってくれ。俺はゾディアン、かつては初代魔王の娘と旅をしたんだ、すげぇだろ」
腕を自慢げに顔を上げるゾディアンから紙を受け取るとバルサスに連れられ宿屋に入ると二人部屋に案内されようやく一息つける。
「もう一人は違う場所からくるから待ってろ。まぁ今日はゆっくり休め……あ!! 後あれで勝ったと思うなよ!!」
負けた悔しさを言葉に出しながらバルサスが去っていくとソウジは息を吐き窓際のベッドに荷物を纏めて放り込んだ袋を投げ窓から街並みを眺めた。
「ふぅ~まずは馬鹿息子の懐まできたかな」
馬車を修理している男。店から顔を出し食べ物を売るために大声を上げている男。武器屋の外で修理と新作武器の手入れをする男。顔を見ると皆が笑顔だった。
不思議な場所だながソウジの印象だった。しかし風に流れてくる臭いで気付く。どの住民からも臭いが染み出し嗅ぎ慣れた臭い……血の臭い。
「さて」
荷物の中から注射器を出し木製の小さく丸められた蓋を噛み締め腕の血管に突き刺し中身を注いでいく。命を削り体を壊していく悪魔の薬物を流し込む唸る。獣の咆哮のように喉まで出し噛み締め我慢して数分後にはベッドの上で動けなくなる。
「あ~あ~……あうぁあ」
景色がグニャグニャに曲がる中脳を溶かされているような感覚の中でソウジはトリップしていく。謎の快楽で気分が上がり今なら何でもできそうなくらい強気になったり泣き出したりと……ソウジは宿屋の一角で涙と鼻水でベッドを濡らしていた。




