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テント内の熱気で喉の渇きと息苦しさで汗が額を流れる感触で目を覚ますと薄汚い布の上でソウジは身を起こす。上半身裸の肉体を見ると傷しかない。剣により切り傷やテツの打撃の後……大きく溜息をつくと声が聞こえた。


声色でシゼルとわかり耳を傾けると怒りや悲しみ、いろんな感情が混ざり合い部下達に叫び散らしている。目の前で父親に母親が殺されたのだから無理もないかと息を落とすと一人の男がテント内にきた。



「ウヘヘよう爺さん、あんたよく生き残ったなぁ」



「お互いな。悪運だけは強いようだな、歳とってるだけあるな」



「まったくだヘヘヘ」



慣れた動作で腰からぶら下げてる瓶をとり酒を飲みながら椅子に座り軽口を叩いてくれたニックに微笑むとソウジの顔が変わる。



「ニック頼みがある」



ニックは変わらずヘラヘラと笑っているがソウジは構わず続けていく。



「テツの居所を調べてほしい。大至急だ、頼む」



「はぁ~おいおいどーしちまったんだい爺さん。あんた息子にやられてきたばかりだろ」



「シゼルには言うなよ。これはあくまで俺個人の頼みだ」



瓶を勢いよく傾け中身を全て飲み干し勢いよく地面に放り投げ頭をかきながらニックは薄ら笑いを止めた。



「居場所さえわかればいいんだ、後は俺がやる。ちなみに報酬は……今まで俺が稼いだ金全部やる」



「なぁ爺さん。どーしたい、あんたらしくないぞ、でも報酬はいいな」



「それと追加の依頼もある」



もう好きにしろとニックが両手を挙げ降参だと示す。



「俺がもしテツに負けた場合。ニックお前が馬鹿息子を倒してくれ」



「フヘヘ~おいおい爺さん本当どーしちまったんだよ」



「こいつは俺の我が侭だ。シゼルに親殺しなんてさせたくねぇ、もちろん数えきれないほど殺してきたシゼルに意味もねぇかもしれねぇが……頼むわニック」



大きく溜息をつき酔いも一気に覚めたニックは椅子を蹴り飛ばし地面に胡坐をかきソウジと同じ目線にする。



「お前らが思ってるほどテツは強くねぇよ。所詮は素人が時間だけ費やした強さだ。戦う事が本業のお前なら十分勝機はあるぜニック」



「……まず爺さん。あんたもう一回魔王に挑むんだな」



「まぁな、一回だけだ。この一回でなんとしてもテツを倒す。もし駄目だった時のためにお前を利用する。魔王を倒せれば莫大な金と女を自由に出来るからいい取引だろう」



「おい爺さんよぉ~そいつは取引なんて言わないぜ。爺さんあんた……もう長くないのか」



ニックの言葉に静かに笑いテントの隙間から見えるシゼルの姿を見つめながら口を開いた。



「ろくな人生ではなかったが、最後に可愛い娘と孫娘まで出会えたんだ。十分だったよ……残ってるのは馬鹿息子の始末だけさ。まぁ俺が言えた事じゃないがな」



「シゼル内緒であんた個人でも魔王にまで辿りつけるようにすればいいんだな」



「やってくれるか!!」



身を乗り出し勢いよくニックの肩を掴み顔を近づけるとソウジの顔には不安や恐怖ではなく希望が満ちていた。



「老い先が本当に短いから早速今からいろいろやってみるさ。まったく魔王の血筋だけあって狂ってるぜ」



酒が切れたせいか手が震えだし立ち上がるとソウジに背中を向け軽く手を上げテントから去っていった。

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