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魔王と呼ばれ20年以上戦い続けたテツ。血筋以外は父親と名乗る資格もない駄目親父ソウジは相対した。テツは怒りに震え、ソウジも同じく怒り構えも何もなくただ近付いていく。


テツが構え悪魔の体から生み出される力とボクシングの技術を載せたストレートを打ち出すと無防備に近付いてきたソウジの首から上を刈り取った。顔は後方に弾け飛ぶが体制が崩れない。


今までテツは悪魔の拳で甲冑で固めた騎士達を一撃にて葬ってきた。生身の顔を殴れば終わりだと思ったがソウジの顔は確かにある。拳を振り抜いた後に確認する、異常なほどに太い首を。



「テツゥウウウウウウ!!」



あの太い首が衝撃を吸収し逃がしたのだと考えた瞬間にソウジの力任せの一撃がテツの顔面を突き刺すように上から叩き付けられ地面に顔がめり込む。即座に立ち上がろうとすると爪先が見えそのまま蹴り抜かれた。



「ガアアァアアア!!」



情けない叫び声を上げたながら倒れ転がり痛みを耐えながら立ち上がり確認する。今戦ってる敵を。



「人間落ち着きなさい!!」



パンドラの声で冷静さを取り戻した瞬間には再び顔が跳ねていた。テツも殴り返し両者足を止めて完全な殴り合いになる。純粋な力比べ。防御を捨て全ての力を攻撃に費やしていく。


テツは魔王になり世界の頂点に立つ者の意地。ソウジは娘を殺された怒り。二人は技術もなく力任せに殴り合っていると差が出てくる。単純な体と力で負けている。



「……馬鹿な」



20年以上この悪魔で強化した体と力で負けた事など一度もない。そう何度も言い聞かせソウジの顔に拳を突き刺すが倍にも思えるほどの力で返される。顔を打たれ、脇腹を膝蹴りで何度も叩かれ、顎を打ち上げられ……テツは真正面からの打ち合いで敗北した。



「ちくしょうがぁああああ!!」



テツは屈辱の叫びを上げソウジの間合いから離脱した。両拳から紫炎を出し悪魔の悲鳴のように聞こえる音を出し拳を強化していく。膝から下も燃え上がり完全な戦闘体型に変化していく。



「糞親父。てめぇどんな魔法使いやがった!!」



「魔法じゃねぇさ、そんな複雑なもんじゃない。単純だ」



ソウジは前に行く。後退のネジは外れ己の体と心を信じ拳を振り上げて駆けていく。強化された拳の速さは増し音速にも近い速さでソウジに飛んでいくが避けられる。狙われた顔を最低限動かしスカし同時に重ねるように横からの拳を振り抜くとテツは飛ぶ。


人の反射神経と運動能力を遥かに超えたテツの拳はソウジの前では通用せずカウンターを貰い宙で数回転しながら地面の上を滑る。立ち上がるテツの顔からは余裕もない。恐怖すら見え隠れしていた。



「落ち着きなさい人間。あいつどこかおかしいわ」



「相棒、そんな事はわかっているんだよ!!」



「たぶん……あいつ生きてないわ。死んでるようにさえ見えるわ」



甲冑に包まれた父親ソウジを見て違和感に気付く。人と戦っている気がしない。表情は怒りに震えているが気配を感じない。



「少し汚い事をしてるからなテツ。お前が勝てないのも道理だ」



「ふざけるな!! こっちは体差し出して人間捨ててんだぞ!!」



「俺は命を差し出してるんだよ」



年老いた体と命を捨て薬物で強化し人間離れした骨格と筋肉は魔王テツが誇る悪夢と言われた最強を凌駕した。未知の力である魔法はウィルという技術者が生涯費やした研究の前に敗れた。



「さぁ我が息子テツよ。存分に家族団欒するぞ!!」



58年間の中でソウジは一番燃え上がり歓喜し怒り震えていた。  

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