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6章

物心ついた頃から母親と父親は何かあるたびに口論をしていた。その全ては父親テツの女関係でニノは頭を悩ませていた。テツはまるで子供だった、自分の我が侭を貫き邪魔になるなら全てを倒し、殺し、排除していく。


そんなテツに愛想を尽かせニノに連れられ旅に出るとどこにいっても戦いはあり、ニノに戦い方を教えられ数年も立てば立派な戦士へと成長していた。ニノ曰く才能は自分以上だと褒められ悪い気はしなかった。


ニノに挑み続けたが一度も勝てるどころか剣を触れさせる事もできなかった。才能が上回っていても経験が違いすぎる。悔しい反面嬉しさもあった、ニノはシゼルの中ではまさに最強だった。



「お母さん」



戦いの業火に燃やされる街の中央に辿り着くとニノが倒れていた。体から流れ出ている血の量にシゼルの顔色を変える。駆け寄ろうとするともう一人の存在に気付き足が止まってしまう。



「久しぶりだなシゼル大きくなったな」



全身を悪魔の甲冑で武装したテツが父親らしく子供との再会に喜びの笑みを浮かべるとシゼルは震える足でニノの亡骸の前で膝をつく。



「お母さん、ねぇお母さん」



何度揺らしても返事は返ってこなく腹部の傷を確認すると息が止まってしまう。



「いや何度も止めたんだけどニノの野郎がしつこくてな」



悲しみに涙を落とす前にシゼルは背中から大剣を抜きテツに斬りかかる。膝のバネを最大に利用し下からの振り上げるとテツは大剣に向かい拳を叩きつけた。



「そんな安物使ってるのかシゼル、仮にも俺の娘なんだぜ。もっといいもん使え」



大剣は拳と正面衝突し中央から真っ二つに叩き折られてしまう。テツが余裕の笑みで拳を振り抜いたと同時にシゼルの拳がテツの顔面へと吸い込まれていく。


頬に振り抜き顔を横に消し飛ばすようなフックでテツの姿勢を崩すと逆方向からの上段蹴りで更に追撃。テツの顔は二回跳ね上げられ視界が崩れ落ちる。



「あ……が、まいったな。ニノより筋がいいじゃねぇか」



起き上がろうとした瞬間にシゼルの踵が再びテツの顔面を貫く。次に振ってきたのは肘。顔を切り裂くように叩き付けられテツは驚く。



「この!!」



下からの反撃を繰り出そうと拳を出した瞬間に止まる。正確な連携でテツを追い詰めていたシゼルの顔は涙で溺れているようだった。鼻水も垂らしニノの死の悲しみと怒りで殴り続けていく。



「なにやってんだよぉお父さん……うぅ」



悲しみの言葉とは逆に冷酷な攻撃でテツを立たせようとはしない。後方に滑る様に逃げ立ち上がる瞬間には上からの踏みつけ、力任せに無理矢理立とうとすれば高性能ライフルの狙撃のような踏み付け。



「こぉ――のおおおお!!」



踏み付けられ続けタイミングを覚え、ようやく足を弾き立ち上がる頃にはダメージが蓄積されていた。テツはシゼルどころかニノにすらこんな戦い方を教えてない。


教える以前にテツ自身がこんな泥臭く相手の得意分野を奪い徹底的に打ちのめす戦法を使わない。二撃目で放たれた蹴りはテツの技術ではないと驚いているとシゼルはニノの近くにあった魔剣を広い上げる。



「……お父さん。もう貴方を殺すしかなくなりました、残念です」



しかし拾うだけで持ち上げられはしない。常人では振る事すら不可能な魔剣を力任せに拾ったシゼルの隙にテツは一撃を叩き込む。顔へ伸ばしぎみのストレートを直撃させると飛んでいく。


鼻から吹き出した血を巻き込むように転がり続けていく。立ち上がると膝は震えが止まらず、鼻は曲がりたった一撃で勝負は決まりつつあった。



「お父さん、なんでお母さんを……殺したぁああああ!!」



怒りに震え突っ込んでくるシゼルを迎撃しようと構えると。



「そこまでだテツ。お前は嫁さんに続き子供まで殺す気か」



その声でテツの動きが制止する。もう忘れていた記憶が蘇る。幼い頃に聞きなれた声。最後に聞いたのは母と父をどちらを選ぶと聞かれ母を選んだ時の悲しそうに「元気でな」という声……親子は時間も世界を越え再会した。



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