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4

城門を誰よりも速く抜けたニノが見た光景は破壊尽くされた城下町だった。建物は崩れ炎が上がり町を包み込んでいる。男は道端に何十何百と倒れ女は魔王軍に陵辱に限りを尽くされていた。


衣服を引き千切られ何人もの男達に囲まれ悲鳴を上げる女。親を目の前で刺し殺され現実から意識を切り離し廃人のように歩く子供。魔王軍に統制はなく欲望だけが城壁の中に渦巻いている。



「テェエエエツゥウウウウウ!!」



喉を破壊する勢いで叫び馬を飛ばし途中にいた魔王軍全て魔剣の餌にし斬り進んでいくと炎に囲まれた中央広場でニノの視線が捕らえてしまう。



「おう……っ!! おぉ……あああああ」



何十と裸の女が四つんばいで並べられ一人の男が快楽の声を上げながら後ろから腰をぶつけ交尾をしていた。全身に汗を光らせ蕩けきった表情で快楽を貪り食らう男――そこに魔王テツがいた。



「……フフ、ハハハハ!! おいテツ!!」



狂ったようにニノが笑い呼ぶとテツは気付き交尾を中断し額を拭いながら座る。



「笑わせてくれるなテツ。妻が久々に会いにきたのに目の前で浮気真っ最中を見せてくれるとわな!!」



「ん? よぉニノ久しぶり元気してたか」



裸のまま胡坐をかき手が届く範囲の死体から衣服を力任せに引き千切り全身の汗を拭きながら軽く手を上げた。



「まったくお前という奴は……そんなに自分の力を使い満足したいのか!!」



「おいおい久しぶりにあって説教かよぉ~少し老けたかニノ」



昔の黒髪と無精髭は全て白髪になり歳相応の顔で坊主頭を撫でながらニノの神経を刺激していく。



「別にいいじゃねぇか。どうせ俺がいなくても皆争うんだ、誰がどーやろうがたいして変わらないってハハ」



「私はなそんな事言いに来たのではない。妻である私と子供であるシゼルを裏切り欲望の限り動く父親を叱りにきたんだ」



「ハハ随分怖い顔するな愛する妻よ」



愛と言われた瞬間に魔剣を大きく上げ地面に叩き付けるとあぐらをかいたテツは変わらず笑う。



「いいかい愛しいニノよ。愛と性欲は別だ、男ってのは結構辛いんだぜ? 自分の意思とは別に強制的に性欲を発散しなきゃいけない時がある。そこら辺理解してほしいもんだぜ」



齢50を越え妻子を持つ男は思えない発言だった。ニノはテツの表情や言葉を聞き怒りが呆れに変わっていく。



「昔はあんなに臆病でどーしようもないお前だったのが変われば変わるもんだなテツ」



「変わってないさ、だからこーして自分勝手にやってんだよ。それとも俺が魔王を倒し正義の勇者にでも目覚めると思ってかい」



炎に囲まれる中で子供のように笑いながら指を指してくるテツを前にニノは呆然と立ち尽くした。何も正義とは言わないがせめて妻と子供の前ぐらいはちゃんとしてほしかったが願いは叶いそうにないと魔剣を構え直す。



「おいおいニノやめてくれよ。戦いになったら殺さないといけなくなる、俺はそんな事したくないんだぜ」



「フハハハ!! 今更何を言うか!! 浮気現場を押さえられたんだぞ、それも複数人を強制的にだ!! 言い逃れできると思っているのか」



「う……確かに、へへ懐かしいな。昔はこーして二人で稽古したもんだよなぁ~」



テツが合図すると魔王の部下は囲むように距離を置き下ろしていた腰を上げた。

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