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森を抜け平原を突き抜けるように駆けていく。空には雲一つなく晴天の光を浴びながらソウジは馬上で上下に揺られながら興奮していた。テツにあったら何を言おうか、どう接しようかと不安もあるが嬉しさもある。
景色は次々に後方に流れていき前方の集団の背中を追いかけるように手綱を操るが馬に乗りまだ日が浅いためか戦闘集団に追いつけないでいると隣に一頭の馬がスピードを合わせてきた。
「ヒヒ随分ご機嫌じゃねぇか爺さん」
「ヘヘこれでもビビッてるんだ。ただの空元気さ、それよりニック魔王軍ってのはどれくらい残ってるんだ」
「一応斥候出したんだが正確な数までわからねぇな、連中城壁の中まで行ってるからな、さすがに斥候をそこまで行かせるわけにはいかねぇしな」
まだ乗りなれない馬の首を軽くさすりながらソウジは興奮する体に冷静という冷水をかけていく。一戦交えるにはニノの率いる部隊は十分な数だが魔王軍本体となるとどうなるかわからない。
「ヒャハハ爺さんなに頭使って悩んでんだよ~お前さんは敵軍のど真ん中で暴れる方が似合ってるじゃねぇか」
「言ってくれるじゃねぇか酔っ払い!! その……なんだ、俺が言う事じゃねぇが」
切れの悪い言葉で数回ブツブツいった後にニックに顔を向かせ言う。
「ニノとシゼルの事頼む。あいつらの強さなら平気だとは思うが心配なんだ。こんなんでもあいつらの爺さんらしいからな」
「おいおいそーゆ真面目な話は本人達と相談しろよ~こんなジャンキーに頼むなんて耄碌してるぜ爺さん」
ニックは一気に加速し先頭集団を目指すと背中越しに軽く手を上げて言う。
「あんたのそーゆ所羨ましいよ。俺はこの通りどーしようもない奴だからな~……任せろ!! 俺があんたら親子を愛しい魔王まで導いてやるぜ」
一本の槍のようになりニノの部隊は平原を突き刺すように進んでいく。やがては平原ではなくなり渇いた大地になり更に進むと煙が見えてくる。空に向かい大量の煙が上がり近付いていくと城壁が見えてきた。
「お母さん!!」
「見えたぞ!! 陣形はそのまま破壊された城門から突っ込むぞ。途中にいる魔王軍はこちらの機動力でいなせ!!」
城壁に近付くにつれ魔王軍の兵が現れたがニノ達に気付くのが遅れる。城壁前で防衛してた騎士達の死体から金品やら装備を奪いとるのに必死で一瞬の隙が生まれそこをニノの一撃が粉砕する。
地面を滑るように魔剣を滑らせ一気に振り上げると死体を漁ってた魔王軍の兵士は胴から上が消し飛ぶ。後ろで見ていたソウジはニノに続き攻撃を行う部下の統率、連携、その速さに驚きを越え恐怖した。
「娘よ。お前どんな訓練をこいつらに訓練してきた、所詮は寄せ集めの集団をどーやってここまで鍛えたんだ」
先頭集団がケチらしてきた死体が振り落とされるように流れてくる。どれもまともな形はしていなく骨が体から突き破って露出する死体もあった。城門前は問題なく駆け抜けた。
「いくぞ!! ここを潜り魔王テツの首を落とした者には生涯じゃ使いきれない大金をくれてやるわ!!」
「お母さんそんな約束していいんですか!!」
「フハハハ!! 魔王とまで呼ばれてるんだぞ、金などいくらでもあるだろう!!」
城門をニノという槍が突き抜けると後方の集団から声が上がる。叫び声、相手を威嚇する声、喜び……様々な感情が入り混じる中ソウジも城門を突破し魔王の喉元まで迫っていく。
「命を賭けろ!! 相手は世界規模での嫌われ者だぞ!! 容赦なく躊躇いなく殺し続ければ魔王まで一直線だ!!」
かつて学園で出会い共に戦い戦場を駆け巡った夫婦は戦場で別れ同じ戦場で再び出会い、敵同士になっていた。




