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ニノに連れられ辿り着いた場所は森の中にある小さな村だった。住民はテントを張ったり木で組み立てた家に住み家族の姿も少なくなかった。ただ皆武器を携帯し女子供もどこか普通ではない。



「母上これは」



「ふははは!! 驚いたであろう!! 村を各地に密かに作っていたんだ。皆傭兵崩れやらテツに国を滅ぼされた放浪者、騎士崩れもいる。まぁ~どうしようもない奴らの集まりだ」



「ニヒヒ、こいつは驚きですぜ!! 結構な数いますぜ」



ニックが住民を数えながら歩く横でニノが軽く手を振ると住民は声を上げて喜ぶ。



「確かにろくな連中もいないが、中には殺しを生業にして家族を養うお父さんも結構いるんだぞ。ニックとかいったな、お前のような奴と違い真面目なんだぞ」



「こいつは痛いお言葉で。まぁあっしはケチなチンピラでやんす、ヒャハハハ」



何がおかしいの酒を浴びるほど飲むニックはほっとき村の中央に行く。特に何かあるわけではなく周囲をテントが囲み雑草だらけの場所でニノは両手を広げ高らかに声を上げていく。



「世界各地に何箇所も作り上げて役10年だ!! 我が娘よ父上!! あの馬鹿者テツに怒りの鉄槌を叩き込んでやるぞ!!」



「凄い盛り上がってるのはいいんだがニノ、お前なんでそんなテツが憎いんだ。なんかやられたのか」



ソウジの疑問に太い腕に血管を浮かせニノは叫ぶ。



「浮気だ!! あいつめ愛する妻を持ちながら……しかも一度や二度じゃないぞ!! 数えただけで100は越えてる!!」



「それが許せなくて国から抜け出し10年以上もかけて兵隊集めてテツをぶっ殺そうってわけかい……ハハ、ハハハ!! スケールの大きい夫婦喧嘩だなぁおい!!」



「ふははは!! そうであろう!! 私に愛を誓い破ったんだから死を持って償わせる!! どうだ父上、なんとも心踊る話だと思わないか」



ソウジとニノが互いに笑いあっている光景を見て娘シゼルが溜息を一つ漏らすと酒臭いニックが肩を組んできた。



「愉快じゃねぇかボス~魔王討伐の理由が浮気だなんて面白いなぁ~」



「改めて聞くと馬鹿らしいですね。お母さん昔はもう少し温厚だったと思うんですけど……まぁ理由はどうあれお父さんをこのまま放っておけませんし」



日が沈む前にテントを渡されソウジとニックは広げ杭を打ち込むと作り上げていると常に酔っ払いのニックの舌が動く。



「聞いたぜ爺さん~なんでもとんでもない薬仕入れたってな。俺にも回してくんねぇか」



「やめとけ、効果保証するが命削ってまで快楽に溺れたいか」



「ヘヘヘ命を削るか……そいつはとんでもなく気持ちよさそうだなぁ」



出会った頃はニックの事をジャンキーと思っていたが今ではニック以上に薬に溺れ快楽を貪り食う自分に笑いながらテントを組み上げていく。辺りが暗くなると住民達で夕食を囲む。



「あんたが新入りかい!! 顔は爺さんのくせにすげぇ体だなぁ」



調子のいい中年男性に絡まれたり、動物の肉を焼いた料理を運んできた女性に頭を下げながらとソウジは食事に満足していった。子連れの傭兵も多く中には妻まで戦う傭兵夫婦もいた。


ニノは明るい性格とその豪快さで人気者だった。ソウジから見たニノは自分の血筋とは思えない才能と人を惹きつる魅力があった。住民全てニノを囲み笑いあっている光景はどこか居心地がよくソウジも気づけば手を叩き笑っていた。



「ようもう寝たか」



テントに戻るとニックが膝を立て座り酒瓶を傾け口に流し込んでいる。



「しっかし魔王ってのも何考えてんだだろうなぁ~世界中敵に回していい事あんのかねぇ」



「我が息子ながら馬鹿だな。幼い頃のテツしか知らないがあんま成長してないなあいつ。まぁ頭よかったら魔王なんて面倒臭い事やらねぇだろうがなぁ」



「ニヒヒ違いねぇ~俺には無理だわ。よう爺さん~例の特別な薬回してくんねぇかぁ~欲しいんだよぉ」




ニックの言葉に背中を向け寝転びソウジはその日を終えた。体の中で細胞単位で変化していく悪魔の体と会話するよう指先が振るえるのを我慢しながら眠気が来るのを待ち意識を手放していく。





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