3章
格間接に強力なスプリングが仕込まれ拳の速度と威力は跳ね上がり年齢で弱った足腰の負担を減らし機動力も上げる甲冑【老人介護式甲冑】と名付けられた甲冑を身に纏いソウジは動きを確認していく。
武器は肘から手首まで守る分厚い小手。盾となり同時に武器にもなる。拳は手甲、小手と同じく鋼鉄の塊。ウィルがソウジ専用に仕上げた武器は見た目ほど重くなく慣れるのまで時間はかからなかった。
「ふぅ、これが介護式か」
汗を流しながら動きを確認して一息つく。父親から授かった技術と異世界での甲冑が合わさり老人は孫と共に戦いながら息子に会いにいく。曇空を眺めながら下からの悲鳴で見下ろすと二度目の戦場がそこにあった。
「おぉ~すげぇなぁ~見ろよ爺さん。あいつらの必死な顔」
城壁の上からニックは笑いながら空になった瓶を投げて笑う。初陣は攻めだったが今度は守る戦い。篭城して大群を迎え撃つ、城壁は頑丈だが敵が多く城門前を依頼してきた国の正規の兵士が守り、城壁の上から矢を撃つ光景の中ニックとソウジはいる。
「なぁその甲冑どんな仕掛けなんだ爺さん、ちょい見せてくれよ」
ニックに言われ構え地面を蹴り拳を突き出すと肩から加速し肘から更に加速と二段階加速経て残像すら残さず拳は消えた。スプリングの破裂でもしたかのような音が響き空気を破裂させた一撃はニックを驚かす。
「確かに強力だが連射が出来ない。一撃出したら内部のスプリングが伸びきり縮まるまでタイムロスがあるのが唯一の欠点だな……まぁ両手で二回打てるからなんとかするか」
「いやぁそれでもヨボヨボの爺さんが戦うのには十分だろう!!」
「確かにな。それにしても上から見るとこんな事してるのか」
城壁から放たれる矢で顔面を貫かれ、長槍で胴体を甲冑ごと突き殺されと見ていて吐き気がする戦いが羽の切れたトンボに群がる蟻のような数で行われていた。城門前は味方の兵が持ち応え城壁から援護はあるが敵兵は鬼の形相で突撃を繰り返す。
「なぁニック俺達の今回の仕事てなんだ」
「あぁ~確か、城内部に侵入された時に戦うって話だろ、しらねぇけど。まぁこのまま終わってくれれば何もせず金貰えていいよなぁ」
まるで津波の同士のぶつかり合いだった。人の津波がぶつかるたびに戦陣を切っていた兵が吹き飛び血しぶきで両軍を染めていく。依頼してきた国は魔王軍に攻められ傭兵達を金の力で掻き集め防衛に全てを注いだが魔王軍の数は圧倒的だった。
篭城している城落とすには3倍の兵がいると先程シゼルに言われたが見る限り3倍どころではない。戦いとは数と言わんばかりに城壁から矢をの雨が降ろうと何人殺そうと進んでくる。
「ニック。これってどう考えても無理がないか」
「あぁ~こりゃ無理だよなぁ~今頃金目当てで集まった傭兵が城内で震え上がってるだろうなぁ~俺らもそうだから笑えないハハハハ」
見下ろしているとよくわかる。少しづつだが魔王軍は進み、このままだと城壁下にとりつかれ矢の範囲外に出てしまう。そうなれば城門を破られれば今見てる恐ろしい数が雪崩れこんでくる。
「今頃ボスは逃げ道探してるだろうなぁ~まさかこんな戦いになるなんて想像してないボスは焦ってるぜぇ~」
ニックの言葉通りのようにシゼルが駆け込んでくると息を切らしながら城壁まで駆け上がり二人に現れる。
「逃げますよ!! 逃げ道は地下です。残りの部下達は既に地下にいきました残っているのは私達3人だけです」
「シゼル一応は依頼されてるんだから逃げていいもんなのか傭兵は」
「あのですね!! こんな勝ち目の戦いに命かける傭兵なんていません!! 報酬は半額もらってますし……まぁ十分です!! 他の傭兵が地下を発見し溢れかえる前に行きますよ」
「ニヒヒ!! 爺さん傭兵ってのは薄汚く自分勝手な奴等だぜ、他人の国がどーなろうと知った事じゃないのさ、そーゆのは国に仕えてる偉い騎士様の役目なんだよ」
三人は城内に戻り逃げ道である地下に向かい走り出す。




