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暗闇から蜀代の上に蝋燭を載せ亡霊のように現れた老人は大きめの布を羽織るように着て痛みきった白髪頭をかきながらニヤニヤと締りのない顔で木製の椅子に座る。



「よぉウィル!! あれあるか!! あれだよ~打つと気持ちよくなる薬!!」



「ヒヒッニック、お前立派な中毒者だなぁ~奥にある。好きなだけ持っていきな」



「話がわかるぜウィル!! この前ので切らしちまってな」



意気揚々と奥の部屋に飛び込むニックの顔は空腹を我慢しご馳走にしゃぶりつく瞬間のように高揚していた。



「んでシゼル今回は何の用件だ。武器ならこの前渡したはずだぞ」



「これソウジさんって言うんだけど私のお爺ちゃんらしいけど、ウィルどう思う?」



「はぁ!! お前俺がとうとうボケたと思ってふざけた事を」



ソウジを見た瞬間に何かを思い出す。過去このボロ小屋に鉄鉄というおっさんが来た時を。風貌は確かに似ている、纏っている空気まで懐かしい。なんともいえない駄目人間の臭い、20年前に現れ後の魔王にまで登りつめたテツを感じた。



「おいあんた一応聞くが冗談じゃないよな」



「あ、あぁ。いや俺も最近知って驚いてるんだ」



「お父さんとは一番長い付き合いあるウィルに聞きたかったんだけど」



体格も変わりなくウィルは近づいて過去の記憶と見比べていく。確信は持てないが予感だけは持てる。この老人のわりにしっかりとした体を持つ男がテツの血族であると。



「ヒヒヒヒ!! こいつは傑作だ!! シゼルお前まさかこいつ使って親父ブッ倒そうってのかい」



「素手の技術なら私よりも上だし使えるんじゃないかと」



「初代魔王から見てきたがまさか今度はテツの親父か!! 面白くてたまらない!! くたばる寸前のジジイにはいい刺激だ!!」



ソウジは自分を見た瞬間発狂するように笑い出すウィルを見て感じた。身分を証明するような物もないが勘だけでシゼルが自分の孫と理解し向き合う。



「お、おい。俺達本当に親子らしいな」



「ハハ……なんだか照れくさいですね。でもまぁ~よろしくねお爺さん、一緒に魔王を倒そうじゃないか!!」



孫と手を組んで何十年も前に捨てた息子を倒しにいくのかと頭を抱えてしまう。気持ちの整理などつかないが、もう一つの感情が生まれてしまう……息子に会ってみたい。



「おいソウジ体のサイズ測らせろ!! とびっきりの作ってやる、武器は何がいいんだ」



「剣とか槍とか無理だな。なんか腕ごと守るようないいのないか」



「本当に親子なんだな。息子も剣も駄目で結局小手だったぞ!! 親父にも同じ武器授けてやる!!」



ソウジの体を測ると奥の部屋に消え金属を叩く音を出し始めた。残された二人は床に胡坐をかき互いの顔を突き合わせていた。



「なぁテツは……息子はそんな酷い事してんのか」



「うん、滅ぼした国の女を孕ませたり、気分次第で大量虐殺して100人単位で殺したりした事もありました。私とお母さんはついていけず家を出て今に至ります」



まともな人間のする事ではない。狂っているどころか日常化してしまい狂ってる事すら気付かない。気付いたとしても気にもしない息子の姿を想像して父親であるソウジは溜息をつく。



「なぁシゼルお前はそんなテツを本気でとめたいと思うのか」



「当たり前です!! 私は正義感とかそーゆのはないけど、さすがに自分の父親があんな風だと黙ってられません!!」



「やれやれ可愛い孫に頼まれたら断れないのが辛い所なんだよな爺さんってもんは……はぁ」



初陣であれだけの死者が出た戦いを経験をしたソウジはこれから生きている限り殺人は避けられないと思うが目の前の現れた孫を見捨てる事もできない。中途半端な覚悟だけが残る。


親子は異世界で出会った。戦いで身を削りながら強くなった孫と何もわからずに戦いに放り込まれて流されてきた爺さん。


目指すはその二人を繋ぐ魔王テツ。異世界は日本人の血脈で戦いの業火に焦がされいた。

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